佐世保便り

2008年7月に佐世保に移住。
海あり山あり基地あり。そしてダム問題あり。
感動や素朴な疑問など誰かに伝えたくて…

心ふるえる

2010-09-22 | 佐世保・長崎

「うたごえふれんど」の仲間に誘われて、初めて「つくも苑」を訪れた。

「つくも苑」という名前は何度か聞いたことがあり、私はなぜか老人ホームだと思い込んでいた。

仲間のTさんは半年ほど前から、そこで紙芝居をやったり本を読んだりしてるという。
今度は歌を歌いたいので一緒に手伝ってくれない?と言われ、喜んでOKした。

迎えに来てくれたTさんの車の中で初めてそこが障害児者の施設だと知った。

 

「私が行ってるのは児童棟と呼ばれるとこやけどね、子どもとは言えん歳の者もおるんよ」

「職員さんの手が足りんけんねー、たいへんよ」

「行くたびにね、『家はどこかー?』と訊きに来る子がおるからね、きっと今日も訊かれるよ」

などなど予備知識を与えてもらいながら、そこへ向かった。

 

私たち「ふれんど」の3人の他に、元ベテラン保育士さん2人も加わって、計5人でお邪魔した。

その部屋に入ると、こども?たちはすでに待っててくれて、大半が車イスだった。

(帰宅して調べると、平成21年4月1日現在の児童棟入所者は28名で、うち20名が20歳以上で、
うち11名は30歳以上となっていたが、見た感じは皆とても若い!)

件の青年もやってきて、やはり「家はどこかー?」と訊かれたので、「潮見町よ。知ってる?」と答えると、
黙って私の顔をじーっと見つめていた。

 

初めにみんなで自己紹介をして、

次に、元保育士さんのお一人が指歌を披露。とても面白かった。

続いてもう一人の元保育士さんが、紙芝居を2本やって…それはちょっと残念だった。
雑音の多い環境では読む声がよく聞こえないし、紙芝居の大きさもやや小さくて見えにくかったから。

 

私はこどもたちの中に混じって聞いていたら、隣の男の子がしきりに腕を引っ張る。

携帯のようなものを出して、それと自分を交互に指を差す。

自分の携帯だと言いたいのか、それとも、その携帯のカメラで自分を撮ってくれと言ってるのか…?

受け取って開こうとするが開かない。

保育士さんがやってきて、「それ、おもちゃなんですよ。この子カメラが好きだから」と教えてくれた。

「そうなんだ~、じゃ、あの紙芝居の絵を上手に撮ってね」と言うと、
彼は嬉しそうにニヤッと笑って、シャッターを押す仕草を何度もやった。

 

Tさんは、職員不足だって言ってたけど、この部屋だけでも4,5人以上いるし…、
こどもたちは別の部屋にもいるのかな?
全部で何人くらいいるのだろうと思って、先ほどの保育士さんに訊いてみた。

「えーと、たしか26人だったかな?いや、違ったかな?ごめんなさい。よく知らないんです」

「実は私、児童棟に来るの今日が初めてで…今日は実習なんです」

「?」な顔を私がしていたのだろう、続けて説明して下さった。

「私は大人の棟でずっと働いているんですが、今度向こうの棟が1つ取り壊されて
そこにいた人たちが児童棟で暮らすことになったので、
これからは大人と子どもの両方をみることになって…
児童への対応はまた全然違うので実習することになったんです」

え?どうして取り壊すの?入所者が急に減ったんですか?

「いいえ、そういうわけでは…今は民間ですから…」

とても言いにくそうな様子だったので、それ以上は尋ねなかった。

(こちらも帰宅後に調べたデータだが、昨年4月現在で大人の入所者は156人。
 内50代以上が4分の3を占め、60代以上は約半数となっている。
 それは確かに高齢者と青少年ではケアの仕方も大きく違ってくるだろう)

 

さて、いよいよ私たちの出番。
ついさっき駐車場で歌詞カードをもらって歌う曲目を決めただけのぶっつけ本番。
ま、なんとかなるだろう…と3人そろって前へ出る。

「もみじ」の二重唱から始まって、「しゃぼん玉」「赤い靴」など歌っていった。

みんな、キャーとかウォーとか急に声を発して、笑顔がいっぱい。

 

嬉しい・・みんな、こんなに歌が好きなんだ! 

「赤とんぼ」を歌いながら、私はまた皆の中に入っていった。


隣の青年(先ほどのカメラマンとは違う人)の歌声が聞こえる。

あ、歌詞を知ってるんだ!すごい!と聞き耳を立てていた。
(歌ってると言っても、言語障害があるのでかなり聞き取りにくい)

そのうち声が聞こえなくなったので、歌詞を忘れたのかな?と思い、
持っていた歌詞カードを彼に見せようとしたら…
その青年は泣いていたのだ。

赤い目をこちらに向けて、涙をポロポロこぼし始めた。

でも、決して哀しい表情ではない。

もしやと思って「この歌が好きなの?」と訊いたら、大きく頷いた。

私は感動を通り越して、心が震えた。

久しぶりに心が震えた。

 

帰りの車の中で、Tさんにその話をした。

「そうさー。あの子たちはほんとに純粋やからねー」

また、口ごもった職員の言いたかったことを教えてくれた。

「前は県立の施設だったんだけどね、民間になってからはコストダウンが最重要課題!
1棟なくなれば電気代でも暖房費でも、経費は全然違ってくるやろ?
削られるところはどんどん削ってやっていかんと経営がなりたたんとやろね~」

そんな・・・

「日本の福祉はどんどん後退しよるねー。これからどげん世の中になるんやろうね…」

 

Tさんは、週に2日は老人ホームのボランティアをして、
「つくも苑」には月に2回通い、
その上、てんかんの息子さんを抱える友人が糖尿病で心配だからと、時々手伝いに行くらしい。

ただただ頭が下がるばかり。

私はTさんのようなマネはできないが、また「つくも苑」のお手伝いには行きたいと思う。

私の心の洗濯に…

  

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