佐世保便り

2008年7月に佐世保に移住。
海あり山あり基地あり。そしてダム問題あり。
感動や素朴な疑問など誰かに伝えたくて…

前原国交相への手紙

2009-12-04 | 石木ダム
今日の新聞に「脱ダム治水 検討開始」の見出し。

昨日の有識者会議の初会合で、前原大臣は、
「ダム中心の河川整備をいったんリセットし、根本的に考え直して頂きたい」とあいさつしたそうです。

心から拍手を送りたい。
でも、私の周りの「有識者」たちは、みな懐疑的です。

なぜかと言うと、前原大臣が集めた有識者たちは、むしろダム推進派や容認派が多いのだそうです。

この人選にとても不安を抱いた一人の脱ダム運動家が、前原大臣に手紙を書きました。
心を込めて、一生懸命、書きました。

彼は、東京で生活していたのに、故郷の球磨川を守りたくて、仕事を辞め、九州に戻ってきました。
川辺川ダム反対運動を軌道に乗せるまで頑張って、今は石木ダム建設白紙撤回のために奔走しています。

福岡と長崎県の川棚町を行ったり来たりの生活。
真夏の暑いときに、トタン屋根の団結小屋に泊まり込み、町の1軒、1軒を訪ね署名をたくさん集めていました。

どうしてそこまでやるのか訊いたことがありますが、明確な答えは返ってきませんでした。

そんな不思議なダムストッパー?の、前原国交相へのお手紙をご紹介します。
もちろん、ご本人の了解済みです。

皆さんも是非、前原大臣に手紙を書いてください!と伝言を頼まれました。

少々長くて難しいところもありますが、最後まで読んでいただければ嬉しいです。






平成21年11月23日
国土交通大臣 前原誠司 様
                球磨川からすべてのダムを無くして鮎の大群を呼び戻す会 共同代表
                九州住民ネットワーク 事務局長 原 豊典

 多方面に渡るお仕事お疲れ様でございます。
私は原 豊典と申しまして、川辺川ダム中止の運動を当初(平成5年頃)からやっております。

 10年近く前になりますか、前原さんがお一人で前触れも無く、川辺川にお越しになった際、私のボロ車に乗せて、五木村までご案内したことがあります。
「どうして今回来られたんですか?」と尋ねましたら、「時間が空いたから」とお答えになりました。
 五木村では、当時の西村村長が「国会議員が来られた場合は皆挨拶をいただくことにしています」と言って、村職員全員に紹介して、前原さんは10分程度でしたか、お話をされました。五木村は当時から「ダム(事業)による村づくり」の路線で、これに対して前原さんがどんな話をされるのか興味を持って聴いた記憶があります。

 時は変わり、民主党政権が無駄なダム中止を実現することになり、前原さんが まさにその責任者となりました。
143のダムを見直し対象とする。川辺川は勿論、八ッ場ダムも中止するとの前原大臣の宣言に大きな期待を抱いたところです。
 ただ、6割強を占める県営ダム(補助ダム)については、知事の判断を尊重する、と前原大臣が言うたびに、本体建設入札など駆け込みが多くなりました。
私がこの一年応援している長崎県の石木ダムの場合も、「知事の判断を尊重する」という部分だけ取って、今までためらっていた土地収用法の適用に踏み切り、11月9日事業認定申請を強行しました。13戸50人以上が平穏に暮らしている一つの集落を丸ごと強制収用にかける前段手続きです。これを認定するのか新政権の姿勢が問われています。

 それとも重なりますが、今般の有識者会議の設置の問題が重要です。
いくつもの問題があります。

 先ず、委員の選任の問題です。
選任の考え方・基準として「ダム絶対反対派とダム絶対推進派は除外した」と有りますが、
記者会見質疑応答で「出来るだけダムに頼らない河川計画・治水対策に変えていくのがこの内閣の方針だ」というのであれば、ダム反対の考えを持つ河川工学者・専門家を中心に選任すべきはあまりに当然ではないですか?
 前原大臣が記者会見で言われている、山から海への繋がりを絶ち、山でも川でも海でも環境と生活を破壊し、国民の財政をも破綻に追い込んできたダム造りを止めよう、というのはまったく賛成です。というより、私達が言ってきたことを前原さんの口から言って頂いているのです。
しかし、このことを実現するには、この有識者会議のメンバーではできません。

 一人一人の経歴等をみても、山田 正 中央大学教授は今年10月20日の読売新聞で八ッ場ダム必要論を展開しており、明確にダム推進論者です。
これで、どうしてダム推進論者も除外した、と言えるのでしょうか?
黒を白と言いくるめるものです。
他にもダム推進論者と思われる人が多く、官僚による人選だと思われます。
ダム推進論者が多くを占める有識者会議を設置して、ダムに拠らない治水計画に変えて行けるわけが無いではありませんか!

 以上から、文字通り「出来るだけダムに頼らない河川計画・治水対策に変えていく」ためには、人選を初めからやり直して今本博健、大熊孝、嶋津暉之、宮本博司の四氏を加えるべきです。


 143のダムを見直し対象にすると宣言しながら、実質は予算要求がまとまった時点で、推進、凍結の仕分けを行なう、としているところが大きな問題です。
現在発表されている委員により、その論議が公開されることも無く、その仕分け作業が行なわれるのであれば、ほとんどのダムの継続が認められるのではないか、と危惧されます。
記者会見質疑応答では前原大臣は「凍結する、と決めたダムについてはピーク流量のあり方も含めて再検証する」と発言されていて、再検証の対象になるのは、143のうちのごく一部のダムだ、というニュアンスなのです。
つまり、143のうちの多くのダムは再検証の対象とならずに、継続として仕分けられるということになりそうです。
これでは、143ダムを見直し対象とするという宣言は「看板に偽り有り」というものではないでしょうか。
 143ダムを見直し対象とする、と宣言した以上は、その全てを一旦凍結して、2年程の見直し期間において、ピーク流量の見直しを含め、ダムに頼らない河川計画・治水対策を検討していくべきです。

 その間においては、143のうちの県営ダムに対しては国の補助金を付けないこと、及び収用裁決や事業認定処分・審理は凍結するのが当然です。
143のダム事業の全てを一旦凍結して、計画の見直し・再検証を実施することを求めます。


 次に、傍聴を許さない、という点が問題です。
これまで建設省時代から、ダムに関わる方針は国民・住民に関与させることなく官僚によって決定されてきました。
平成7年、始めて審議会というものが登場し、川辺川ダム事業審議委員会が9回開かれました。
これはこれまでダムを推進してきた知事や流域の首長・議員が集まってダム建設にお墨付きを与えるものでしたが、これには私達住民は傍聴すら排除されましたが、マスコミは中で取材するのは、許容されました。同じダム審でも、吉野川では傍聴が許されていた、と記憶しています。
 今回の有識者会議は、国民・住民の傍聴を許さず、マスコミも頭取りだけ、というものですから、その公開性は、15年前のダム審並みか、それ以下ということになります。

 住民参加と公開性の徹底が際立つ9回に渡る住民討論集会は言うまでもありませんが、有識者会議や各種の再検討委員会においてすら住民の傍聴が認められてきた歴史的経緯があります。
国民・住民の支持を受けて政権交代を成し遂げた民主党政権が15年以上前に逆戻りしてその国民の傍聴すら許さないとは、一体、どういう感覚なのでしょうか!
これでどうして前原大臣が記者会見の質疑応答で発言されている「国民周知の中で検証していく」とか「改正河川法の住民参加を大事にする」と言えるのでしょうか?

 ダム審ではその事務局が建設省の地方整備局でした。公表・公開は議事要旨による、とされました。今回の有識者会議も議事要旨を出す、ということで同じやり方です。
官僚の関与を感じざるを得ません。
民主党は官僚制打破、政治主導の政党ではなかったのでしょうか?
有識者会議の傍聴を制限無く認めること。委員のすべての発言の公表を求めます。


 「前原大臣に影のように付き添う佐藤河川局長」という話が話題になっています。
ある識者は有識者会議について「完全に官僚に取り込まれた。言葉がありません」と言っています。
前原大臣はこのことをどれだけ自覚されておられるのでしょうか?

 前原大臣におかれては、今回の有識者会議の発表の内容について、以上の点につき、それこそ見直しをしていただくたくお願いします。
また、今後において官僚の意見だけでなく、国民・住民の意見をどうやって汲み上げ、組み込んでいくかについて、その形態や仕組みのルール化をご検討いただけませんでしょうか。
以上、よろしくお願いいたします。
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