貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

清貧の安定感は?

2021-08-27 15:06:58 | 日記

清貧の安定感は?

令和3年8月27日(金)

はる立や 

  新年のふるき 

      米五升

この初句は、

我富り 新年古き 米五升

   これでは、威張りすぎと気付いて

もう少し穏やかに!

 似合しや 

   新年古き 

         米五升

    清貧を自慢するような響きがあって、

芭蕉は気に入らなかった。

    結局最初にあげた「はる立や」の

句に落ち着いたらしい。

 それにしても米五升で正月を過ご

せるのか。

 誰かが訪ねて来て、酒肴があって

こそ正月なんだろうから、

句作もなかなかお膳立てが難しい。

 天和か貞享か、いずれにしても、

普通の正月ではない。

深川の草庵に来た初期の作品と読める。

 自分の貧乏を世捨て人という諦念に

ぴたりと一致させているという気持ち

はあるのだが、まだその気持ちが

安定していない。

 結局、最初に示した「はる立や」と

いう自分のおかれた状況を淡々と

詠んだ句が力まずに自然で、

最上の表現であった。

はる立や 

  新年のふるき 

      米五升

 それにしても、「立春と新年」の

新たな希望、歓びと、

「ふるき」「米五升」という暮年の

寂しさ、哀れさ、多忙さ等との対比は、

半世紀以前の庶民の暮らしを想起させ

させたりもする。

 清貧はよいのだが・・・・。