貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

趣向の一句!冬夏の二重構造

2021-08-11 10:55:38 | 日記

趣向の一句!冬夏の二重構造

令和3年8月11日(水)

冬牡丹 

  千鳥よ雪の 

    ほとゝぎす

  前書き 「桑名・本当寺にて」。

 冬牡丹が咲く庭に聞こえる千鳥の

鳴き声は、雪中の時鳥といった恰好だ、

の意。

「冬牡丹」・・・春の蕾を摘んで、

冬に開花するようにした牡丹で、

寒牡丹ともいう。        

 俳諧独自の題。

  貞享元年(1684)の作。

 本当寺は本統寺。

 木因と訪れた寺で、古益らと句会を

催したときの吟。

 牡丹が本来は夏季であるのに因み、

千鳥を雪の時鳥言いなしたのが趣向。

 千鳥も季語。

◎ 雪積もる庭に面して牡丹と千鳥を

配し、新年の雅会を巻いていると、

千鳥が時鳥のように鳴いた。

 手の込んだ趣向の妙は、

夏になって、時鳥の鳴くのを待ち

焦がれている人々に、千鳥が時鳥

に変化すればという望みを起こ

させる。

 同時に、雪景色が牡丹と千鳥に

よってこそ、美しく見えるという

満足感を与えてくれる。

 この冬と夏の二重構造の句、

趣向の面白さで際立っている。