ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

真夜中のランプ(Burning of the Midnight Lamp)

2022年01月30日 | 名曲

【Live Information】


小学生のころ、みんな一度や二度は「早くおとなになりたい」と思ったことがあったでしょう。
(こどもの目から見て)お金はいっぱい持っているし、なんでも好きなものが買えるし、好きなところへ遊びにいける。
反面、「こんなのだったらおとなになりたくないな」と思うこともありました。
その理由のひとつは、「おとなになると、いま人気のある歌手や曲への興味をなくしてしまうのか」ということだったんですが。
でも充分すぎるほどの年齢になっている今の自分は、歌手の名前くらいは聞いたことがあるけれど、米津玄師や藤井風の曲なんて全然知らないですもんね。(あいみょんの曲なら、少しはわかる
もしかして、自分が「なりたくない大人」になってしまったのかな
いや、知らないことに対する好奇心がなくなってはいない(と思う)から、まだまだ大丈夫です
そんなわけで、今日も相変わらず1960年代末期の音楽についてです。


不世出の天才ギタリストと言われているジミ・ヘンドリックス。
この世を去ったのは1970年ですが、未だに彼の音楽から放たれる輝きの眩さはまったく変わりがありません。
彼の革命的とも言える演奏は、「ジャズの帝王」マイルス・デイヴィスからも高く評価されていました。
ぼくは、ギタリストとしてのジミはもちろん大好きですが、コンポーザーとしてのジミもこれまた大好きなのです。
その中でも「真夜中のランプ」の醸し出す雰囲気には、いまだにしっとりと酔ってしまいますね。





全編を通じて流れるハープシコードの音色、雰囲気がなんともいえず内省的、神秘的であり、でもどこか郷愁を感じさせ、タイトル通り漆黒の闇の中にひっそり灯るランプのようにも感じます。
このハープシコードを弾いているのはジミ自身。
歌詞に出てくる「真夜中のランプ」とは、いろんなものを失った主人公にわずかに残された「希望」、あるいは「命のともしび」のことであるような気がします。
このハープシコードから静かな明るさを感じるのは、そのせいでしょうか。


イントロの、ギターとハープシコードの絡みが醸し出している雰囲気で、一気に曲に惹き込まれます。
親しみやすい曲調だけれど、コード進行がとても印象的です。
ブルージーなジミのボーカルは、ちょっと詩の朗読をしているような趣もあります。どこかボブ・ディランを思わせるようなその歌いっぷりには生々しいジミ自身が滲み出ているようで、これまた愛着を感じるのです。





ギターは、いつものことながら、「ジミ節」全開です。
ワイルドでエキセントリック。
そのくせどこか繊細で、ジミにしか歌えない「歌心」満載。
そしてなんといってもワウ・ペダルの使用が大きな特徴です。
まだワウ・ペダルが使われ始めて間もない当時ですが、ペダルの踏み方を早くしたり遅くしたり、あるいはトレモロ・アームとコンビネーションで使ったりと、ジミはすでにこれを自分のものにしている感じがします。


女声コーラスもこの曲の大きな特徴です。
曲にエモーショナルな雰囲気をもたらしているばかりか、サイケデリックな雰囲気すら生んでいます。
プロデューサーのチャス・チャンドラーは、この曲にバッキング・ボーカルを入れることを決め、黒人女性ボーカル・グループ「スウィート・インスピレーションズ」を起用しました。
このスウィート・インスピレーションズのリード・シンガーはシシー・ヒューストン。そう、あのホイットニー・ヒューストンのお母さんなんですね。


最近の音楽にはやや疎いぼくではありますが、1960~70年代のロック(だけじゃないですけど)への愛着はそれを補っても余りがあるもの、と改めて思っている次第であります。  


[ 訳 詞 ]

[ 歌 詞 ]



◆真夜中のランプ/Burning of the Midnight Lamp
  ■シングル・リリース
    1967年8月19日(イギリス)、1968年9月2日(アメリカ)
  ■演奏・歌
    ジミ・ヘンドリックス・エキスペリエンス/Jimi Hendrix Experience
  ■プロデュース
    チャス・チャンドラー/Chas Chandler
  ■作詞・作曲
    ジミ・ヘンドリックス/Jimi Hendrix
  ■録音メンバー
    ジミ・ヘンドリックス/Jimi Hendrix(vocals, guitars, harpsichord)
    ノエル・レディング/Noel Redding(bass, backing-vocals)
    ミッチ・ミッチェル/Mitch Mitchell(drums, backing-vocals)
    ザ・スウィート・インスピレーションズ/The Sweet Inspirations(backing-vocals)
  ■チャート最高位
    1967年週間シングル・チャート イギリス18位
  ■収録アルバム
    スマッシュ・ヒッツ(1968年)/Smash Hits
    エレクトリック・レディランド(1968年)/Electric Ladyland








コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2022年2月のライブ予定 | トップ | Bassの役割はBase »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

名曲」カテゴリの最新記事