先日買って何度も繰り返して聴いた、北川潔トリオの『プレイヤー』。
そのサウンドにすっかりマイってしまい、さっそく澤野工房に注文したのが、北川潔のセカンド・アルバム、『アンセストリー』である。
ここでもストレートな「北川潔ワールド」が広がっている。
「アンセストリー」とは、「祖先」という意味らしいが、文字通り自分の音楽的原点を存分に披露しているのだろう。
ソロ作品を除き、サイド・メンを従えた北川氏の初のリーダー・アルバムであるにもかかわらず、北川氏の中で広がっている音楽観に対する、北川氏自身の確固たる自信がみなぎっているのを感じることができる。
ケニー・バロンを起用してのアルバム制作は、もともとは澤野工房側からの打診だったそうだ。話があった時点で、ドラマーはブライアン・ブレイドにしたい、という北川氏自身の構想があったということだが、このあたり、自分の思い描く音を具現化するための北川氏自身の人選やビジョンは非常に明確であった、とも言えるだろう。実際、この三人のコンビネーションは素晴らしいものだと思うのだ。
ジャズ界の中でも名だたる手練れであるケニー・バロン、ブライアン・ブレイドの両名がサイドを固めているといえ、北川氏は彼らの強烈な個性に没することなく、堂々と、そして伸び伸びと自分の世界を描いている。
逆に、ケニーとブライアンは、自分たちの個性を出しつつも、北川氏の意図や音楽観を的確に捉え、その世界に積極的に入り込んでいて、見事に「北川潔のベース・トリオ」というコンセプトをサポートしきっていると思う。
全10曲中、北川氏のオリジナルは4曲。残りはウェイン・ショーター、ジョン・コルトレーン、タッド・ダメロンなどのジャズ・オリジナル作品が5曲、そしてスタンダードが1曲、という構成だ。
1曲目の「Ancestry」からいかにもジャズ、といった風情の強烈なリフが飛び出してくる。3曲目の「Time To Go」では、スピーディーかつグルーヴィーなウォーキング・ベースに心地よく身を委ねたい。8曲目の「Hot House」はドラムとのデュオだ。ベースでバップのメロディーを存分に歌っている。
4曲目の「I Wish I Could」でのピアノ・ソロとベース・ソロの美しいこと。同じバラードでも、10曲目の「You've Changed」はピアノとベースのデュオで、この曲では北川氏のベースが全面的にフューチャーされ、心に響くメロディーを紡ぎ出している。
とにかく、10の曲群が、統一された北川ワールドを形作っているのだ。
ぜひ一度は生で聴いてみたい。が、世界を股にかけて活躍している北川氏のこと、日本でのライヴの機会にもなかなか巡り合えないのがとても残念。せめて次はライヴ・アルバムを出してくれないものか、とひそかに思っている。
あ、そうそう、先日の『プレイヤー』の記事を書いた時に、ごく一部(笑)で話題になった『アンセストリー』のライナー・ノート、ここに記載しておきます。
(もしライナーの転載に不都合がありましたら、コメントを下さればすぐに善処いたします)
【ancestry/キヨシ・キタガワ・トリオ】
北川潔は1988年に活動の拠点をNYに移し早16年が経つ。現在、ジミー・ヒース、ケニー・バロン等、大御所ミュージシャンにレギュラー・ベーシストとして招かれ、アメリカ、ヨーロッパを舞台にバリバリ活躍している唯一の日本人ミュージシャンと言っても過言ではない。しかし、今の彼の日本での知名度は、日本のジャズ・メディアの中で紹介されることは皆無に近く、その活躍、活動のスケールからすれば驚くほど低い。
そんな中、今回のアルバムはプロデューサー澤野由明氏と北川潔の一瞬の出会いがキッカケで実現した。さて、肝心の本アルバムの内容は?と訊かれると、そりゃあもう、自身のお耳でお確かめ、お聴きいただくしかないわけである。ただ敢えて言うなら、「KIYOSHI JAZZの確固たるビジョンのもと、ケニー・バロン、ブライアン・ブレイドは忠実にしかも見事にサイドメンの仕事をし、北川Worldを描き上げている。」まさにこの言葉に尽きる。
このアルバムに関する北川潔の思いが澤野工房HPにインタビューとして掲載されているので、是非、お聴きになった後、そちらをご覧頂きたい。最後に非常に粗っぽい文章になってしまった事をお許し願いたい。収録曲に関するデータ、解説等は一切避けた。それは作品に対して、それを受けるオーディエンスは何の先入観も無しに先ずはお聴きいただきたいと制作に携わっている人間のひとりとして切に願うからである。 text by 篠田博嗣 (原文のまま)
◆アンセストリー/Ancestry
■演奏
北川潔トリオ
■リリース
2004年
■録音
2003年11月25~26日 システム2(ニューヨーク市ブルックリン)
■プロデュース
北川潔 & 篠田博嗣
■レコーディング・エンジニア
マイク・マルシアーノ/Mike Marciano
■収録曲
① Ancestry (Kiyoshi Kitagawa)
② Equinox (John Coltrane)
③ Time To Go (Kiyoshi Kitagawa)
④ I Wish I Could (Kiyoshi Kitagawa)
⑤ Tadd's Delight (Tadd Dameron)
⑥ Mahjong (Wayne Shorter)
⑦ Tell Me Why (Kiyoshi Kitagawa)
⑧ Hot House (Tadd Dameron)
⑨ Pinocchio (Wayne Shorter)
⑩ You've Changed (Carey / Fisher)
■録音メンバー
北川潔 (bass)
ケニー・バロン/Kenny Barron (piano)
ブライアン・ブレイド/Brian Blade (drums)
■レーベル
澤野工房
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いらっしゃいませ!
なんかね、聴いて聴いて聴きまくってから書いた記事なんですけど、あとでライナーなんか読むと似たようなことが書かれてるんですよ。で、最初は「パクリと思われるやん」などと思ったんですが、結局、八尾虎さんもおっしゃってますけれど「『気持ちだけは皆さんと同じ』ってことなんだから」、とひとりナットクして記事をUPしてみたわけでございます。
良い音楽を聴いて「良いな~」と感じる気持ちは皆同じですもんね。
こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。
う~む、ある意味前のライナー読んでみたい気がするな~(笑)ダンナさん、さっさと捨てちゃった、ということは、よほどひどかったんでしょうね。
ケチつけたい人は相手がキース・ジャレットだろうが、美空ひばり(古い?笑)だろうが、こじつけてでもケチつけるものですからね・・・
>感動する心は同じなのだ
そうそうそう!、そういうことですよね。同じなのだ~!
すみません、いきなりオオボケかましてしまいました。
ですので、訂正させて頂きます。
上の文中のライナーについてですが、「アンセストリー」のライナーノートは僕も最初のを読みました。
で、僕は言いたかったのはその事ではなく、
MINAGIさんのこちらで書かれている文のことです。ほんま僕は学も教養もありませんので、しょっちゅうとんちんかんな事を書いてしまいます.御免なさい。お恥ずかしい限りです。MINAGIさんのような文を書かれる方が羨ましいです。これからもよろしくお願いします。ほな 御免やす (^-^)/
おはようございます。八尾虎と申します。
昨日は僕のブログへの書き込みありがとうございました。ライナー読ませて頂きました。
説得力のある文ですね。僕は全くうまく書くことが出来ないし、表現力も全然ですが、気持ちだけは皆さんと同じつもりでいます。
もし宜しければこれからもジャズのお話でお付き合いお願いしたいと思います。
MINAGIさん&taechiさん、こんばんはー♪
ホントだー。ライナー思いっきり差し替えられてる!!
せやろなぁ。あのままだったら、ある意味凄すぎる。
うちのダンナさんは「腹が立つ」といって、さっさと捨てちゃいましたから。今となっては、どなたが書かれてたのかさっぱり覚えてません。(内容は覚えてますけどね)
私も「凄いです!」「大好き!」というような文になってしますので、taechiさんに同じくこの記事の内容に感心しました!
でもま、どんなエントリであろうと、感動する心は同じなのだ、っちゅーことで。わはは。
>文才
ありがとうございます(*^^*)。正直テレます。でもね、ぼくの記事をまとめると「すごい!」とか「カッコイイ!」になるんですね~、これが。taechiさんと思うところは同じってことです。taechiさんの記事読んでも、CD聴いた時のコーフンがよーく伝わって来ますよ。時々茶も吹きますが(笑)
ライナー差し替えてたんですね~。こりゃよっぽどと、豚でもない、トンでもないことが書かれてあったんやな~・・・
MINAGIさんこんばんは。
相変わらず文才のある記事を書かれますね~。
私は「すごい!」とか「カッコイイ!」とかしか叫べない人間なので1枚のCDを聴いてここまで書かれるMINAGIさんを尊敬します。
このトリオの凄い所は、全員超個性的なのにぶつかり合わない所ですよね~。分かります分かりますっ!
ライナーですが、すんごいいい事書いてますね!私の手元にあるあのおっそろしいライナーとは全然違います。書いてる人も変わってます。
やっぱり差し替えたんですね。
北川さんのインタビューが澤野工房HPにあったんですね。知らなかったです。ちょっと猛ダッシュで見に行ってきますスタコラッシュ!