ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ザ・ガッド・ギャング (The Gadd Gang)

2007年07月13日 | 名盤


 当代きってのドラマー、スティーヴ・ガッド率いる「ザ・ガッド・ギャング」は、あの伝説的なフュージョン・グループ「スタッフ」のメンバーだったリチャード・ティー(keyboards)、コーネル・デュプリー(guitar)を核に、ベースにはビル・エヴァンス・トリオやマンハッタン・ジャズ・クインテットで鳴らしたエディ・ゴメス(bass)を迎えた4人で結成されました(のちロニー・キューバ baritone-sax)が正式に加わります)。
 とにかく全員が一国一城の主で、職人芸的な素晴らしいテクニックの持ち主ばかりです。


  


 「ガッド・ギャング」は、とにかくファンキーでソウルフルです。メリハリの利いたノリの良い演奏がこのバンドの魅力だといえるでしょう。
 メンバー同士の結束も固いようで、全員が実に楽しそうに演奏しているのが伝わってきます。


 アルバムの冒頭を飾る『ウォッチング・ザ・リヴァー・フロウ』は、ボブ・ディランの作品です。ディランがフォーク・ギターをバックに泥臭く歌っているのに対して、「ガッド・ギャング」は正統派の4ビートにアレンジし、とてもブルージーなものに組み立て直しています。曲はデュプリーの弾くテレキャスターがテーマをとっています。独特の乾いた音が耳に残りますね。ソロはキューバ、デュプリー、ティー、ゴメスの順で回されますが、いずれもR&Bフィーリングいっぱいに、そしてリラックスした感じでキメています。
 改めて思うのですが、ディランの曲って宝石の原石のようなものが多いですね。他の人が取り上げ、アレンジしてカヴァーすると、原曲とは違った輝きが増す、というケースが多いような気がします。





 『ストレングス』では、ティーのフェンダー・ローズが優しく流れたかと思うとラテン・ビートになり、ガッドとゴメスがリードするリズムの切れ味が楽しめます。
 『ウェイ・バック・ホーム』はクルセイダースのカヴァー。ファンキーなギターのカッティングがグルーヴィーですね。
 『モーニング・ラヴ』と『エヴリシング・ユー・ドゥ』からは、洗練されたニューヨーク・サウンドの真髄が聴かれます。
 『デュークス・ララバイ』はドラム・ソロ。ガッドのドラムって、けっして機械的なんかじゃありません。グルーヴしまくっているうえに、様々な手法で曲に色彩を施しています。


 ラストは『ホンキー・トンク/アイ・キャント・ストップ・ラヴィング・ユー』です。ミディアムのうねるような4ビートの『ホンキー・トンク』は、ブルージーなギター・リフに始まります。ゴメスの強靭なウォーキング・ベースがボトムをしっかりと支えていて、キューバのバリトン・サックス・ソロでソウルフルな雰囲気が増幅されます。ティーのキーボードもデュプリーのギターも実にファンキー。それをガッドのアフター・ビートの利いた自在なドラミングが包み込みます。
 曲はメドレー風に『アイ・キャント・ストップ・ラヴィング・ユー』に引き継がれます。ここでのリズムは重く粘るスローの3連です。ニューヨーク随一のホーン・セクションをオーヴァー・ダヴィングすることによって得られたダイナミックなビッグ・バンド・サウンドが存分に聴かれます。


 ガッド・ギャングは2枚のスタジオ録音盤と1枚のライヴ・アルバムを残しましたが、1993年にバンドの要のリチャード・ティーが膵臓ガンのために亡くなってからは活動を停止しています。しかし残りのメンバーは着実に音楽活動を続けているようです。



 
 

◆ザ・ガッド・ギャング/The Gadd Gang
  ■演奏
    ガッド・ギャング/The Gadd Gang
  ■リリース
    1986年
  ■プロデュース
    伊藤潔
  ■収録曲
   ① ウォッチング・ザ・リヴァー・フロウ/Watching The River Flow (Bob Dylan)
   ② ストレングス/Strength (S.Gadd, R.McDonald, W.Salter)
   ③ ウェイ・バック・ホーム/Way Back Home (Wilton Felder)
   ④ モーニング・ラヴ/Morning Love (Eddie Gomez)
   ⑤ デュークス・ララバイ/Duke's Lullaby (Steve Gadd)
   ⑥ エヴリシング・ユー・ドゥ/Everything You  (Richard Tee)
   ⑦ ホンキー・トンク~愛さずにはいられない/Honky Tonk (B.Doggett, S.Shepard, C.Scott, B.Butler)~I Can't Stop Loving You (D.Gibson)
  ■録音メンバー
   ☆ザ・ガッド・ギャング/The Gadd Gang
    スティーヴ・ガッド/Steve Gadd (drums,percussions,vocal)
    コーネル・デュプリー/Cornell Dupree (guitar)
    リチャード・ティー/Richard Tee (acoustic-piano,electric-piano,organ,keyboards,vocal)
    エディ・ゴメス/Eddie Gomez (bass)
   ----------------------------------------
   ★ゲスト
    ロニー・キューバ/Ronnie Cuber (baritone-sax ①③⑦)
    ジョン・ファディス/Jon Faddis (trumpet ⑦)
    ルー・ソロフ/Lew Soloff (trumpet ⑦)
    バリー・ロジャース/Barry Rogers (trombone ⑦)
    デヴィッド・テイラー/David Taylor (trombone ⑦)
    マイケル・ブレッカー/Michael Brecker (tenor-sax)
    ジョージ・ヤング/George Young (tenor-sax ⑦)


The Gadd Gang『Watching The River Flow』 (Live in Tokyo 1988)
The Gadd Gang『Way Back Home』) (Live at Bottom Line N.Y. 1988)



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4 コメント

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おばんでございまする。 (Nob)
2007-07-13 19:15:15
そうそう、そーいえば今年、彼仕様のドラムセットが出た!っていうニュースがありましたよ。
スティーブ・ガッドのサイン入りもあるらしいです。
まあ、私の場合、タタキものは布団タタキくらいなのであまり関係ありませんが・・・
ボブ・ディランの曲は結構ジャズ系にもカバーされるんですね。
私はどっちかというとカバーの方が好きだったりするので(汗)、聴いてみたいです~♪
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Nobさん (MINAGI)
2007-07-13 19:52:36
おじんでございまする。

ガッド仕様でガッド様のサイン入りですか。通し番号なんかも打っているのでしょうか。サイン入りなんか、プレミアがつきそうですね。

>タタキものは布団タタキくらい
 またまたあ、あれがあるじゃないですか、ホラ、仏壇でチーンていうやつ。リズムとりながら乱打しちゃダメですよ~(・∀・)

ディランの曲、本人はモソモソ歌ってたりするので、あまりメロディーがはっきりしない場合があるんですが、カヴァーされたものを聴くと、メロディーは良いしカッコいいしで、ぼくもカヴァーを聴いて好きになる曲が結構多いんですよ。(^^)
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ガッドーーーッ! (カルロス)
2007-07-14 01:45:02
僕の人生の師匠、ガッド先生ですね!うれしいのなんのって・・・
今でもしょっちゅう聴いてまっせ!
あのフトン叩きおばさんもきっと聴いていたに違いない(え?)
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カルロスさん (MINAGI)
2007-07-14 09:39:38
なんと!「人生の師匠」というくらい慕っていたんですね。。。(^^)
ガッド先生がメインのCDは、ガッドギャング3枚とソロ1枚持ってますが、どれもR&B色がくっきりで、ぼくの好みです。
フトン叩きおばさん、結構パワフルなビートを出していたような・・・(汗)
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