ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン (Fly Me To The Moon)

2007年10月30日 | 名曲


 
フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン (Fly Me To The Moon)
■1954年
■作詞・作曲…バート・ハワード


 先日、「ムーンライト・セレナーデ」を紹介しましたが、今日も月にまつわる曲、「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」についていろいろ書いてみたいと思います。
 この曲は、バート・ハワードの放った最大のヒットであるばかりか、ポピュラー音楽史上にも残る名曲です。1954年に発表された時には「イン・アザー・ワーズ(In Other Words=言い換えれば)」というタイトルで、4分の3拍子(ワルツ)の曲として作られていました。まずフェリシア・サンダースが歌って紹介。最初にレコーディングしたのはケイ・バラードで、彼女の歌はヒットしなかったものの、歌曲そのものは注目されました。


     
     バート・ハワード


 1962年、ピアニストのジョー・ハーネルが、流行し始めていたボサ・ノヴァのスタイルにアレンジし、タイトルを歌詞の一部である「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」に変えて発表したものが同年末から翌年にかけてヒットしました。これは、「アポロ計画」「月ロケット」という当時の話題に便乗したもので、かなり露骨な宣伝戦略により、1954年には浸透しなかったこの曲は、一気に一般に知れ渡るようになったということです。ハーネルはこのヒットによって、1962年度グラミー賞最優秀ダンス楽団演奏賞を受賞しています。
 1965年にはトニー・ベネットのレコードがヒットしました。作者のハワードは、「トニー・ベネットのヴァージョンこそ決定版だ」とベネットに語ったそうです。


     
     トニー・ベネット


 この曲は、「私を月に飛んで行かせて、星の中で遊ばせてほしい。木星や火星の春を見せてほしい。言い換えると、私の手をとってキスしてほしいのです」という歌詞のラヴ・ソングです。「月まで飛ばせて」という部分がなんとなく色っぽく感じられます。
 また、男性諸君は、彼女が「木星の春を見せて」と言った時は、期待に応えてあげて下さいね。女性陣はキスをねだる時にこう言い換えると洒落ていていいかも。


 ちょっぴり甘く、ちょっぴり切ない極上のメロディーはとても親しみ易く聴こえます。原曲はスロー・テンポのワルツですが、4拍子のミディアム・テンポの4ビートで演奏されることも多いです。また最初のヒットの影響で、ボサ・ノヴァでもよく演奏されます。さまざまなアレンジに耐えうる名曲だと言えるでしょう。コード進行もいわゆるアメリカン・ポピュラー・ソングの「王道」を行くもので、いろんな意味でジャズ、あるいは音楽の教科書のような曲だと言うことができます。


 ジャズ・シンガーでレパートリーに入れていない人はいない、というくらい、多くのシンガーがこの曲を歌っています。もちろんインストゥルメンタルとしても名演の多い曲です。
 アニタ・オデイには3拍子と4拍子の双方でソフトに可愛らしく歌っているヴァージョンがあります。またカウント・ベイシー楽団をバックに、スゥインギーに歌うフランク・シナトラ版は、2000年公開のクリント・イーストウッド主演・監督映画「スペース・カウボーイ」のラストで効果的に使われています。
 そのほか、ジュリー・ロンドン、ペリー・コモ、ブレンダ・リー、ドリス・デイ、アストラッド・ジルベルト、ボビー・ウーマックなどなどによって歌われています。
 最近では宇多田ヒカル嬢や椎名林檎嬢なども、この歌をカヴァーしていますね。


     
     宇多田ヒカル『Beautiful World / Kiss & Cry』


 今夜の空は雲が厚く垂れ込めています。どうもぼくが月にまつわる曲について書いている時は、月の見えない夜空であることが多いです。。。



     フランク・シナトラ『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』


【フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン】
私を月へ飛んで行かせて
星の中で遊ばせてほしい
木星や火星の春を見せてほしい
言い換えれば 
私の手をとりキスしてほしいのです

私の人生を歌で満たして
そしていつまでも歌わせて
あなたは私の望みと憧れのすべて
言い換えれば 
そのままのあなたでいてほしいのです
言い換えれば 
私はあなたを愛しているのです




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8 コメント

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テレビ番組のEDで・・・ (ひろ)
2007-10-31 06:51:43
毎週聴く機会に恵まれて、覚えました(*_*) かなり前に・・・女性ジャズヴォーカリストのアルバムにも合って感激したモノですm(__)mターンテーブルがあれば聴きたくなる名曲ですねぇ\(~o~)/
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ひろさん (MINAGI)
2007-10-31 08:02:08
おはようございます♪
あ、番組のEDで使われてたんですか、それは知らなかったです(^^;)
そうですね、歌詞から考えると女性が可愛らしく歌ったほうが似合うかもしれませんね。女性ヴォーカリストでこの曲を歌う方、とても多いですよね。
シナトラ版も小粋でシャレていていいですよね。ひろさんもレパートリーにこのようなジャズの名曲も加えてみてはいかがでしょうか(^^)
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Unknown (ジェイ)
2007-10-31 08:08:52
私、この曲大好きなんですよ~。
ボサのノリを覚えるのに最初にチャレンジしたのが「酒バラ」で、次がこの曲。何だか切ないですよね、このメロディ。色んなヴァージョンがあるので、色んな人の演奏を聴くたびに、耳ダンボになってしまいます。
因みに最初、ボサって全然ノリきれなくて焦りました。(今でも苦手。。)
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ちわっす♪ (Nob)
2007-10-31 11:39:19
シナトラ版がとっ~ても好き♪
ほんとに月まで飛んで行けそうなくらい軽々と歌いますよね(笑)
そうだ、私も近々出すべ!
それにしてもカバーが多いです。さすが名曲♪
林檎ちゃんのはベッタリしてそうな気がしますが、どうなんでしょ(汗)
残念ながら、私のレパートリーには入っていません・・・(涙)
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ジェイさん (MINAGI)
2007-10-31 12:31:42
改めて聴いてみると、名作ですよね、この曲。メロディ、キレイですよね~
スタンダードをボサノヴァで演るのはやっぱりこの曲と「酒バラ」、っていう場合が多いですね。どちらもいろんなアレンジができる「万能曲」だと思います。
ボサノヴァってノリが横揺れなんですよね。ご存知かもしれませんが、右に2拍、左に2拍って感じで体を揺らしてみてください。(^^)
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Nobさん (MINAGI)
2007-10-31 12:41:30
そうですよね、シナトラ版はホントに軽々と歌ってますよね。バックの演奏もとてもスウィンギーでVery Good!でも作者はトニー・ベネット版が最高だと言う。でもベネット版、未聴なんです~(汗)
あ、椎名林檎ヴァージョンも未聴だったな(再汗)。。。
宇多田ヒカル嬢がこの曲をカヴァーした時は、正直言ってオドロキました。
Nobさんもたまにはしっとりとこんな歌を歌って、男性陣をクラクラさせてみてはいかがでしょうか~(^^)
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いい曲ですね~ (カルロス)
2007-11-03 22:23:14
いま、この曲をウクレレで一生懸命練習してます~!
そのうち聞かせたいです!(←小学生の書き込み?)
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カルロスさん (MINAGI)
2007-11-03 23:22:37
おっ、サントリーの曲の次は「フライ・ミー」ですか!楽しみですね~(^^)
ジャズだと結構ウクレレの音色も合いそうですね。

すみませんが2行目は吹いてしまいました。(笑)
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