ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

紫の軌跡 (Purple Passages)

2005年10月05日 | 名盤


 ディープ・パープルというロック・グループは、いまではレッド・ツェッペリンと並ぶハード・ロックの代名詞的存在です。
 とくに、プロ、アマを問わず、ロックをプレイするギタリストの中には、リッチー・ブラックモア(g)を崇めている人も少なくないようですね。


 ぼくも時々、ディープ・パープルを聴いていますが、このところよく棚から取り出すCDは、「紫の軌跡」なんです。
 タイトルから推測できる通り、これはディープ・パープルのベスト・アルバムです。
 いわゆる「第1期(1968年~1969年)」と言い慣わされている期間に発表された3枚のアルバムの中から選び抜かれたものですが、実はこの頃のディープ・パープルは、「ハード・ロック・グループ」とは呼ばれていません。
 ジョン・ロードの弾くオルガンを中心としたクラシカルな香りのするサウンドは、今で言う「プログレッシヴ・ロック」的な香りを漂わせていて、当時は「アート・ロック」などと呼ばれていたようです。


      
      「ハッシュ~ディープ・パープル Ⅰ」


      
      「詩人タリエシンの世界」


      
      「ディープ・パープル Ⅲ」



 実際、この頃のディープ・パープルはクラシックへの接近を試みていて、このアルバムにも収録されている「四月の協奏曲」では、文字通り弦楽器とロック・ミュージックとのアンサンブルを聴くことができます。
 また、1969年9月にはロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラと共演、その模様をライブ・レコーディングしたアルバムを同年12月に発表したりしています。
 とはいえ、その後ハード・ロック・サウンドに変貌を遂げる下地は充分あって、ドラム、ギター、オルガンの演奏はパワーとエネルギーを充分秘めています。


 このアルバムの中でとくにぼくが好きなのは、元々はトラディショナルで、ジミ・ヘンドリックスの演奏によって有名になった「ヘイ・ジョー」です。ボレロのリズムを効果的に使ったディープ・パープル独特のアレンジは、前面に押し出されたオルガンの暗く重い音とよくマッチしているんです。
 「アンド・ジ・アドレス」「ハード・ロード」「何故ローズマリーは」といったインストゥルメンタル・ナンバーや、「ケンタッキー・ウーマン」「エマレッタ」などのパワーのあるポップ・ナンバーなども大好きです。



     

 ややハードなサウンドのウラにはクラシックやブリティッシュ・フォークのエッセンスなども感じられ、独特のエキゾチックで重い雰囲気を持っています。
 先日、やや長い時間を運転することがあったのですが、なんとなくこのアルバムをBGMにしたくなって、久しぶりにずっと聴いてました。1960年代後半の、熱気とエネルギーに満ちた演奏は、聴き応えが充分にありました。


 このアルバムの3曲目に収められている「ハッシュ」、最近カヴァーされて車のCFで使われていますね。



◆紫の軌跡/Purple Passages
  ■歌・演奏
    ディープ・パープル/Deep Purple
  ■リリース
    1972年11月
  ■録音
    1968年~1969年
  ■プロデュース
    デレク・ローレンス/Derek Lawrence
  ■収録曲
   [side A]
    ① アンド・ジ・アドレス/And The Address (Blackmore, Lord)
    ② ヘイ・ジョー/Hey Joe (trad., arr. Lord, Evans, Simper, Paice, Blackmore)
    ③ ハッシュ/Hush (Joe South)
    ④ エマレッタ/Emmeretta (Lord, Blackmore, Evans)
   [side B]
    ⑤ 影を追って/Chasing Shadows (Lord, Paice)
    ⑥ 小鳥は去った/The Bird Has Flown (Evans, Blackmore, Lord)
    ⑦ 何故ローズマリーは/Why Didn't Rosemary? (Blackmore, Lord, Evans, Simper, Paice)
   [side C]
    ⑧ ハード・ロード/Hard Road (Wring That Neck) (Blackmore, Lord, Simper, Paice)
    ⑨ シールド/The Shield (Blackmore, Evans, Lord)
    ⑩ マンドレイク・ルート/Mandrake Root (Blackmore, Evans, Lord)
   [side D]
    ⑪ ケンタッキー・ウーマン/Kentucky Woman (Neil Diamond)
    ⑫ 4月の協奏曲/April (Blackmore, Lord)
  ■録音メンバー
    ロッド・エヴァンス/Rod Evans (lead-vocals)
    ジョン・ロード/Jon Lord (organ)
    リッチー・ブラックモア/Ritchie Blackmore (guitar)
    ニック・シンパー/Nick Simper (bass)
    イアン・ペイス/Ian Paice (drums)
  ■チャート最高位
    週間アルバム・チャート アメリカ(ビルボード)57位




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4 コメント

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初期のパープル (ろ~ず)
2006-03-28 15:13:24
2005-10-04 19:38:31



古い記事なんですがTBさせていただきました。

CM聴いた時、パープルと結びつかなかったです。

初期のはジャケットも雰囲気ちがいますね。

75年と92,3年?の来日コンサート行ったんですよ。

どちらもリッチー・ブラックモアはいなかったんですが、おお、目の前にパープルがいるんだという感動でした。
返信する
ろ~ずさん (MINAGI)
2006-03-28 15:13:58
2005-10-04 22:30:19



ろ~ずさんの記事中にリンクされているページ、見始めたらついつい時間が経っちゃって…。面白かったです。



おお、2度もライブに行かれたのですね。75年というと、トミー・ボーリンがギター弾いてたのかな。いいな~、羨ましいです。もうなんというか、イチローとキャッチボールしたような気分なんだろうな。(なんか例えがヘンかも)
返信する
こんばんは (gumii)
2006-03-28 15:14:41
2005-10-04 23:11:43



ジャケットに惹かれました!

「ディープ・パープル Ⅲ」は

シュルレアリズムっぽいですね。



クラシックとロックのアンサンブルは

気になるーので

今度聞いてみます
返信する
gumiiさん (MINAGI)
2006-03-28 15:15:19
2005-10-04 23:22:38



中世~近世ヨーロッパにはこんな作風の絵が多いような気がします。宗教画が多いんですよね。

ほんと、シュールですね。ぼくこういう絵、わりと好きなんです。



ちなみに「Ⅲ」がクラシックとの関わりを強めたアルバムです。クラシックに接近したロック・グループってほかにもけっこうあるんですよ。

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