【Live Information】
高校時代、見事にツボにハマッたシカゴ。
とくに1970年代前半までの、ブラス・セクションのエネルギーを活かしたゴリゴリの「ブラス・ロック」サウンドが大好きで、これは今に至るまでに変わっておりません。(もちろんそれ以降のポップス色が強まったシカゴも嫌いではないです)
卒業を控えた高校3年の秋ごろだったと思いますが、岡山市・倉敷市の高校3年生を中心としてメンバーを集め、スペシャルなビッグ・バンドを作って卒業記念のコンサートをやろう、という話が持ち上がりました。
どういう経緯で決まったかは記憶にないのですが、ベースはぼくが担当することになりました。
当時はまだコントラバスは弾いていなくて、エレクトリック・ベースでの参加です。
セット・リストを決める時、「シカゴの『イントロダクション』をやりたい!」と、遠慮しながら、いやそれでもちょっとワガママに提案したんです。
音源を聞いてもらうと、「楽譜があるなら」という条件ながら「やろう」ということになりました。それだけでワクワク感が増したのを覚えています。
シンコー・ミュージックだったかリットー・ミュージックだったかのシカゴのコピー譜を手に入れ、アレンジとは名ばかりの未熟なアレンジを施して、手書きの譜面を全員に配ったものです。
【イントロダクション/Introduction】
◆発表
1969年
◆収録アルバム
シカゴの軌跡/Chicago Transit Authority
◆作詞・作曲
テリー・キャス/Terry Kath
◆リード・ヴォーカル
テリー・キャス/Terry Kath
◆ブラス・アレンジメント
ジェイムス・パンコウ/James Pankow
◆録音メンバー
シカゴ・トランジット・オーソリティ/Chicago Transit Authority
テリー・キャス/Terry Kath (guitar, vocal)
ロバート・ラム/Robert Lamm (keyboards)
ピーター・セテラ/Peter Cetera (bass)
ダニエル・セラフィン/Daniel Seraphine (drums)
リー・ロクネイン/Lee Loughnane (trumpet)
ジェームス・パンコウ/Jams Pankow (trombone)
ウォルター・パラゼイダー/Walter Parazaider (woodwinds)
シカゴ・トランジット・オーソリティ『シカゴの軌跡』
「イントロダクション」は、当時「シカゴ・トランジット・オーソリティ」と名乗っていたシカゴが1969年に発表した2枚組デビュー・アルバム『シカゴの軌跡』の1枚目A面1曲目に収められています。
1960年代のアメリカは、ベトナム戦争、ケネディ大統領暗殺、公民権運動、キューバ危機など、社会的にも政治的にも混沌としており、まさに「激動と混乱」という言葉がぴったりでした。しかし、混乱や破壊の先には新しい世界の誕生が見られるものです。
開拓まもないロック・ミュージックの世界でも、様々な要素をロックに持ち込んで新しいものを創ろう、という気運が盛り上がってきていました。ビートルズがそのクリエイティブな動きの中心的存在だったと思います。
弦楽器やクラシック音楽の導入・融合、ブルースとの融合、ハード・ロックの誕生、より高度なコーラス・ワーク、効果音や録音技術の活用、より文学的に昇華させた歌詞、などなど。その動きのひとつに「ジャズとの融合」「ブラス・セクションの導入」があり、ブラス・セクションを内包したバンドがシカゴであり、ブラッド・スウェット&ティアーズなどだったわけです。これらのバンドは、「ブラス・ロック」あるいは「ジャズ・ロック」というカテゴリーで呼ばれることになります。
シカゴは、ブラス・セクションを持ち、デビュー・アルバムから連続3作して2枚組アルバムをリリースし、政治的な発言も行うという、新しい世界を予感させるような、斬新なスタイルをオープンにしていて、すぐに高い人気を得るようになりました。
音楽的にも、ブラス・セクションの分厚いサウンドとロックの激しさを持ち合わせていて、まさに激動の1960年代アメリカを締めくくるにふさわしい、ユニークで攻撃的なサウンドを創り上げていたと思います。
曲は、ブラス群を効果的に使ったエネルギッシュなリフでスタートします。
変拍子のブリッジからリズムはジャズ・ワルツとなり、スピード感が増してゆきます。まさにジャズ・ロックといった趣き。
トロンボーンのソウルフルなソロが展開されたあとは、テンポが少し落ちて、バラード風の曲調となりますが、ここで聴かれるのはやや哀愁を帯びたトランペット・ソロ。
そして徐々にテンポが早くなり、テリー・キャスによるギター・ソロが始まります。混乱した現状に怒りをぶつけるかのような、ワイルドかつブルージーなソロです。ちなみに、あのジミ・ヘンドリックスはテリーのギターのファンだったそうです。
ギター・ソロが終わると、ブラス・セクションによるテュッティ。ブラスの魅力炸裂です。この音に触発されたかのように、ドラムとベースがヒート・アップしています。
ドラムスのソロを挟んで、テーマのリフに戻ります。
テリーのややハスキーなボーカルは黒っぽくて、力強くて、まさに「これぞロック!」。
6分34秒が短く感じます。創造的、そしてとても魅力的です。
激しくて、はっきりした自己主張が感じられるサウンドは、当時の世相を反映させているかのようであり、また来たるべき新しい時代をも予感させます。
われわれのスペシャル・ビッグ・バンドの本番は文化センター(現在の天神山文化プラザ)で行われました。
今となっては、本番の日が卒業式の前だったか後だったかすらも覚えていません。
また、セット・リストは全く記憶にありませんし、メンバーが誰だったかもほとんど覚えていません。
ギターとドラムはK商業に通っていたヤツで、トランペットにK高校のヤツがいて、MCはC高校の女の子で、、、う~ん、もう断片的にしか覚えていないです。
ただ、MCの子がオープニングに「Ladeis and Gentlemen、~なんとかかんとか」と英語でアナウンスしたんですが、普段英語なんか使っていないので固くなってカミカミだったのだけはハッキリ覚えています。誰かの演出だったんだろうなあ。。。(^^;)
イントロダクションの演奏の出来は、これもあまり印象に残ってないです。
とりあえず無事にエンディングを迎えることはできました。
本番では、ギター・ソロ部分をギターのN島くんがアドリブで軽々とこなしていたのが印象に残っています。当時、涼しい顔でアドリブ・ソロを取れる高校生なんかなかなか見当たりませんでしたから。
「シカゴの軌跡」は1969年4月にリリースされ、全米17位、全英9位を記録しました。
このアルバムからは「いったい現実を把握している者はいるだろうか?」、「ビギニングス」、「クエスチョンズ67/68」の、3曲のシングル・ヒットが生まれています。
「イントロダクション」は、アマチュアを含めたビッグ・バンドや吹奏楽、あるいは管楽器入りのコンボ・バンドで、今でもしばしば取り上げられているようです。
管楽器奏者のいるバンドでは一度はやってみたくなる曲、というよりロック史上に残る「隠れた名曲」と言っていいと思います。
《イントロダクション 歌詞和訳》
やあ、みんな
どうも
どうか駆けまわらないでくれ
僕たちは少し緊張しているし
遠くから来たんだ
だから みんな座って
演らせてくれ 歌わせてくれ
何年も練習してきたんだ
このグループを作る前から
天国も嵐も見てきたさ
神に感謝しよう
今まで遊びまわってた人も
座って聴いてくれ
みんなの演奏だ
変化のある音も聴かせたし
ムードも変えてみた
特別な印象を持ったり
感激してくれれば幸いだ
だから心配事なんてすべて忘れ
何か新しいものを求めよう
みんなのために演奏しよう
[英語詞]
「Introduction」 Chicago
「Introduction」 Chicago Live at Tanglewood, Massachusetts 1972 (0:05~6:32)