ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

TOTOⅣ~聖なる剣 (TOTO Ⅳ)

2007年11月14日 | 名盤


 TOTOというグループは、ウェスト・コーストの腕利きセッション・マンが集まって結成したバンドです。
 前評判通りのハイ・テクニカルで隙のないサウンドと、キャッチーなメロディーの中に都会的雰囲気漂う作品の数々で、一躍スター・ダムにのし上がりました。
 そんな彼らの最高傑作と言われているのが、「TOTOⅣ~聖なる剣」です。

 
                   
 
 
 前作「ターン・バック」のセールスがやや低迷したTOTOですが、このアルバムではさらにモダンで、さらにポップで、しかもパワフルな曲作りに取り組みます。AOR(アダルト・オリエンテッド・ロック。都会的で洗練されたサウンドとポップなメロディーで構築されたロック。)やプログレッシヴ・ロックなどの要素もふんだんに取り入れ、完全にTOTO独自のサウンドに昇華しています。テクニック面、楽曲の良さに加えてサウンド・プロデュースに至るまで質の高さを見せつけました。25年前の作品であるにもかかわらず、今聴いても全く古臭さを感じさせません。


 ハイ・クォリティなこのアルバムは当然リスナーにも広く受け入れられ、全米4位の大ヒットにつながります。また、「ロザーナ(全米2位)」「アフリカ(同1位)」の2曲のミリオン・セラーのほか、「メイク・ビリーヴ(同30位)」、「ホールド・ユー・バック(同10位)」「ユア・ラヴ(同73位)」と、計5曲のヒットを生み出しています。
 
 
           


 「ロザーナ」はデヴィッド・ペイチがジェフ・ポーカロのガール・フレンドである女優のロザーナ・アークェットに捧げた曲です。デヴィッドは、スタジオに差し入れを持ってきてくれるロザーナを見て創作意欲をかき立てられたんだそうです。
 この曲におけるジェフ・ポーカロのドラム・ワークは実に高度でグルーヴィーです。ジェフの叩き出すシャッフル・リズムはアクセントが効いていて、適度な重みと適度な軽やかさが同居しています。時折挿入されるブラス・セクションや中間部のギター・ソロがこれまたカッコいいのです。
 「アフリカ」はデヴィッド・ペイチとジェフ・ポーカロによる共作です。広大な大陸、夜のサバンナを連想させる、スケールの大きな曲です。サビの伸びやかなヴォーカルとコーラスが印象的です。余韻の残る終わり方もアルバムの最後を飾るにふさわしいものです。


 「メイク・ビリーヴ」は、ノリのよい3連符に乗ったピアノの音色と、ジョン・スミスによるサックスが印象に残ります。
 「ホールド・ユー・バック」は、流れるようなストリングスを伴った、AOR色の強い、美しいバラードです。
 「ユア・ラヴ」は、ファンキーなベース・ラインが光るお洒落なAORロックです。
 その他、軽快なロック・サウンドの「アフレイド・オブ・ラヴ」~アルバム中最もハードな「ラヴァーズ・イン・ザ・ナイト」~スカッとしたロック・ナンバー「ウィ・メイド・イット」、この3曲の流れは緊迫感とノリの良さが前面に出ています。
 
 
          
 
 
 このアルバムは、雑誌などで「80年代特集」のようなものが企画されれば必ずといっていいほどリスト入りしています。文字通り、80年代を代表するアルバムのひとつだと言っていいでしょう。
 卓越したメロディーと高度な演奏技術、とても高い1曲1曲の完成度、全編に流れるリラックス感は素晴らしい。全員腕利きでありながら、それをひけらかすようなプレイは見られず、前に出るところとそうでないところのメリハリがきちんとついたバランスの良さも特筆されるべきだと思います。
 そこらあたりが数々のスタジオ・ワークをこなし、音楽というものを熟知した売れっ子セッション・マン集団ならではの音楽性の現れではないでしょうか。
 
 
 「TOTOⅣ」は、1982年度のグラミー賞ではアルバム・オブ・ジ・イヤー、レコード・オブ・ジ・イヤーなど6部門を制覇するという輝かしい成功を収め、彼らは一躍全米のトップ・バンドの仲間入りを果たしました。



◆TOTO Ⅳ ~聖なる剣/TOTO Ⅳ
  ■歌・演奏
    TOTO
  ■リリース
    1982年4月8日
  ■プロデュース
    TOTO
  ■収録曲
   [side-A]
    ① ロザーナ/Rosanna (Paich)  ☆
    ② メイク・ビリーヴ/Make Believe (Paich)  ☆
    ③ ホールド・ユー・バック/I Won't Hold You Back (Lukather)  ☆
    ④ グッド・フォー・ユー/Good for You (Kimball, Lukather)
    ⑤ イッツ・ア・フィーリング/It's a Feeling (S. Porcaro)
   [side-B]
    ⑥ アフレイド・オブ・ラヴ/Afraid of Love (Lukather, Paich, J. Porcaro)
    ⑦ ラヴァーズ・イン・ザ・ナイト/Lovers in the Night (Paich)
    ⑧ ウィ・メイド・イット/We Made It (Paich, J. Porcaro)
    ⑨ ユア・ラヴ/Waiting for Your Love (Kimball, Paich)  ☆
    ⑩ アフリカ/Africa (Paich, J. Porcaro)  ☆
    ☆=シングル・カット
  ■録音メンバー
   [TOTO]
    ボビー・キンボール/Bobby Kimball (Lead-vocals①②④⑧⑨⑩, backing-vocals①②④⑥⑦⑧⑨⑩)
    スティーヴ・ルカサー/Steve Lukather (guitars, piano④, lead-vocals①③⑥, backing-vocals①②③④⑥⑦⑧⑨⑩)
    デヴィッド・ペイチ/David Paich (keyboards, lead-vocals⑦⑩, backing-vocals①②⑤⑥⑦⑧⑨⑩)
    スティーヴ・ポーカロ/Steve Porcaro (keyboards, lead-vocals⑤)
    デヴィッド・ハンゲイト/David Hungate (bass)
    ジェフ・ポーカロ/Jeff Porcaro (drums, percussion)
   [additional personnel]
    レニー・カストロ/Lenny Castro (congas & percussion①④⑤⑦⑩)
    ジョー・ポーカロ/Joe Porcaro (percussion⑤⑩, xylophone⑥, tympani⑦, marimba⑩)
    ラルフ・/Ralph Dyck (synthesizer⑦)
    ロジャー・リン/Roger Linn (synthesizer-programming④)
    ゲイリー・グラント/Gary Grant (trumpet①)
    ジェリー・ヘイ/Jerry Hey (trumpet①)
    ジム・ホーン/Jim Horn (sax①⑦)
    トム・スコット/Tom Scott (sax①⑦)
    ジョン・スミス/Jon Smith (sax②)
    ジェイムズ・パンコウ/James Pankow (trombone①)
    マイク・ポーカロ/Mike Porcaro (cello③⑧)
    トム・ケリー/Tom Kelly (backing-vocals①②)
    ティモシー・シュミット/Timothy B. Schmit  (backing-vocals③④⑩)
  ■チャート最高位
    1982年週間チャート  アメリカ(ビルボード)4位、イギリス4位、日本(オリコン)3位
    1982年年間チャート  アメリカ(ビルボード)41位
    1983年年間チャート  アメリカ(ビルボード)39位




 

コメント (20)
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