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独裁者

2011-10-26 13:14:01 | 編集手帳



  10月22日付 読売新聞編集手帳


  墓碑銘には、
  その人の一生が凝縮されている。
  従わない者を次々と断頭台に送ったフランスの革命家、
  ロベスピエールに成り代わり、
  彼の墓碑銘を考えてやった人がいる。

  〈すぎゆく人よ、わが死に涙をそそぐな
   もし私が生きていれば、君は死ぬだろう――
  マクシミリアン・ド・ロベスピエールのための作者不明の墓碑銘〉
  (大修館書店『〈さようなら〉の事典』より)。
  古今東西、
  不満の声を容赦なく弾圧した暴君に応用できそうな墓碑銘である。

  27歳でクーデターを指揮し、
  以来42年間にわたって憲法も議会もない国に君臨した
  リビアの元最高指導者ムアマル・カダフィ氏が、
  反カダフィ派に拘束されたのちに死亡した。

  弾圧された死者は1万人とも、
  3万人とも、
  それ以上とも言われる。
  「ネズミども(=反カダフィ派)を引っ捕らえろ」。
  今年2月、
  カダフィ氏は国営テレビを通じて全土に命令を発した。
  その人が、
  排水管に隠れていて拘束されたのは皮肉である。

  悲しいことにこの地上には、
  ロベスピエール式墓碑銘の似合う独裁者が少数とはいえ、
  いまなお存在している。
  海を隔てた、
  わが隣国にも。
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