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ひとの心を傷つける声

2011-10-17 10:02:57 | 編集手帳



  

  10月13日付 読売新聞編集手帳


  世の中には聞き苦しい声がある。
  〈お前の声てえものはね、
   入梅どきに共同便所に裸足(はだし)で入って、
   出る途端に金貸しに出っ食わしたような声をしやがって…〉  
  は落語でおなじみのセリフだが、
  悪声以上に聞き苦しいのは、
  ひとの心を傷つける声だろう。

  「お前ら震災で頭がおかしくなったんちゃうか」。
  社会人ラグビーの試合中、
  横河武蔵野アトラスターズ(東京)の選手が
  釜石シーウェイブスRFC(岩手)の選手にそう言ったという。

  アトラスターズは謝罪し、
  選手は所属する協会から出場停止処分を受けたが、
  何ともさびしい「声」である。

  「セシウム牛は要りません」。
  こちらは大分県由布市の「由布院牛喰(く)い絶叫大会」で、
  某県議(県畜産協会長)の絶叫である。
  うちの牛肉は安全だぞ、と。

  口直しならぬ“耳直し”に、
  記憶の中から「声」を引く。
  この春のセンバツ甲子園、創志学園(岡山)・野山慎介主将の選手宣誓より。
  「人は仲間に支えられることで、
   大きな困難を乗り越えられると信じています。
   がんばろう、
   日本。
   生かされている命に感謝し、
   全身全霊で正々堂々とプレーすることを誓います」
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