美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

ジャーナリスト岩上安身はいま異彩を放っている  (イザ!ブログ 2012・6・28 掲載分)

2013年11月22日 04時45分39秒 | 政治
ジャーナリスト岩上安身。その名に注目し始めたのは、つい最近のこと。当ブログで取り上げた平智之元民主党議員の民主党離党の翌20日の彼へのロング・インタビュー(2時間!)におけるインタビュアとしての彼の力量に舌を巻いたのが、きっかけでした。

平議員は、反原発(本人の真意はもっと過激に即座の「禁原発」)の最前線に立ち続けてきた行動派の政治家であると同時に、原発の技術的側面に関する深い知識に裏付けられた知性派の政治家でもあります。だから、インタビューをする側に、彼の真価を炙り出す力量がなければ、無残なインタビューになってしまう危険性が高いのです。そういう意味で、インタビュア泣かせの「要注意人物」あるいは「難物」であると言っていいでしょう。

2時間のインタビューを最初から最後まで辛抱強く見聞きして、私は「平議員って、大した人物だ」と率直に思いました。また、私は正直に言って、これまで原発についての態度がフラフラしていたのですが、彼の話を聞いて、気持ちが脱原発に大きくシフトしたのも事実です。それくらいには、当インタビューは、私に衝撃を与えました。岩上氏は、ヘソ曲りの私の心をそこまでこじ開けるくらいの 「演出」をきっちりと出来るジャーナリストなのです。

むろん、平議員に対して異論がないわけではありません。突然の原発破棄と経済成長とはやはりどう転んでも両立しないのではないかと、私は思ってしまうのです。彼は、両立する、という立場なのですが。また、彼の「禁原発」の立場と大飯原発再稼働を甘受した橋下市長に対する高評価とは私の頭の中ではどうにも結びつきません。さらには、ベーシック・インカムの推進を是としているようですが、それもどうかと思います。これって、弱い者イジメの新自由主義政策の典型なのですから。彼は弱い者イジメが嫌いみたいなので、大丈夫なのかな、と。理系の頭の良い人ほど、フリードマンの、論理的に美しい空語にヤられてしまいがちなのですが、さて。

もっとも、他人同士がまったく同じ意見であることの方がまれでしょう。だから、当然のことながら、意見の違いは違いとしてはっきりと認識することと、相手を大した人物である、誠実な人柄であると認めることとは両立します。

彼に対する異論を展開し始めると、それはそれで長い話になってしまいます。そうすると、今回の投稿の主旨からだいぶ逸れてしまうので、今回もまたそれは控えようと思います。

とにかく一度観てみてください。2時間経って、「おお、民主党内にも、しゃんとした奴がいたんだな」と再認識すること請け合いです。彼の知的な誠意は疑いようがないと思うのです。「そんなことない。あいつはクワセモノだ。損をしたぞ!」と思われた方、ぜひコメントを。

http://www.youtube.com/watch?v=zp1khfRnKU8"

次に、消費増税法案の衆議院における可決直後の、有田芳生民主党議員に対する、これまたロング・インタビューがとても刺激的で興味深いものでした。

有田芳生氏と言えば、江川紹子とともにあのオウム真理教関連報道で露出度ナンバーワンのジャーナリストでした。

正直に言って、私が、議員としての彼に期待することはこれまで何もなかったのです。逆に、ちょっとうさんくさい感じさえ抱いていたほどです。「オウム報道で顔を売って、いまでは議員さんかい」といったふうな。

ところが、今回の、岩上安身氏によるロング・インタビューで、そんな「邪推」が払拭されました。というか、このインタビューで、国会議員「有田芳生」の存在価値がくっきりとあぶりだされることになったという印象が残りました。

具体的に言えば、このインタビューを聴く前と後とでは、例の「小沢一郎夫人書簡」のイメージが真逆になりました。これが、当インタビューの目玉であることは言うまでもありません。

世間では、「小沢一郎は、今回の奥さんの手紙を取り上げた、文春の私生活暴露記事によって、政治生命を断たれてしまった」とか、あるいは「小沢は、原発事故のとき、放射能が怖くて秘書と一緒に逃げた。そんな奴は政治家失格だ」という「風評」が一般的です。

ところが、有田議員によれば、この小沢報道の本質は〈謀略〉あるいは〈陰謀〉である、となります。その記事の主要部分が、事実無根であることを有田氏は力説します(彼は小沢派ではありません)。私は有田議員から、ほとんど説得されてしまいました。有田議員の言っていることがウソかホントウか、みなさんも、次に掲げるインタビューのアドレスをクリックして、自分の目で判断してみてください。お前は有田に騙されたのだ、というご意見をお持ちになった方、ぜひコメントを。

有田議員の指摘の数々は、単なるゴシップものをめぐる瑣末なおしゃべりとは言い難い。理由は二つあります。

小沢一郎は、陸山会政治資金問題をめぐって、検察と検察審査会による〈謀略〉あるいは〈陰謀〉にも巻き込まれています。それが、目下首謀者の減俸処分という軽い処置で揉み消されようとしています。有田議員によれば、小沢一郎夫人書簡の本質も〈謀略〉あるいは〈陰謀〉です。これは、偶然の一致でしょうか。私には、どうもそう思えません。なんとなく、個々の政治家を超えた大きな権力の存在を感じませんか。ぞっとしませんか。日本権力の闇のようなものと言いましょうか。有田議員は、その所在を示唆しているように感じられます。これが、理由の一つ目。

もう一つは、おそらく近いうちに実施される総選挙における国民の投票行動の自由度を、有田議員の語りは格段に広げてくれたこと。

次回の総選挙の争点のひとつは間違いなく、今回衆議院で可決された消費増税法案の凍結の是非であると、私は思っています。なぜなら、国民の過半数はいまだに消費増税に納得していないからです。その思いの受け皿に、小沢新党がなりうるかどうかは今後の国政を左右する大きなポイントです。

もしも、文春の言うことが本当だったら、というか一般国民がそのゴシップを鵜呑みにしてしまったら、いくら小沢新党が消費増税反対を力みかえって唱えたとしても、清き一票をそこに投じることに、二の足を踏んでしまうでしょう。後は、今のところ、みんなの党か共産党か社民党に投票するしかなくなってしまいます。それでは、あまりに選択肢が少ない。そんなことでは、国民の投票行動が、政治の閉塞状況を打破する勢いを得るのはまったく無理です。

有田議員は、そういう最悪の事態を鋭いジャーナリスト感覚に裏打ちされた話し言葉で事実上打破してしまったのです(大手マスコミは当然だんまりを決め込むでしょうが)。彼は、「政治家になったのに、いつまでジャーナリスト気取りをしているんだ」と揶揄されることがしばしばあるそうです。彼によれば「しかし、私はジャーナリストとしてのセンスを忘れない政治家でいたいのです」。その大きな成果が今回出たというべきであると、私は思います。有田議員のそういう基本スタンスの無視し得ない価値を、岩上氏は今回彼から引き出すことに成功したようです。予定は一時間だったところ、40分もオーバーしてしまい、有田議員は慌てて腕時計を見ていました。時が経つのも忘れて、つい話し込んでしまったのでしょう。岩上氏は、相手を話に夢中にさせる才覚に恵まれているようです。

このインタビューは、二人の優秀なジャーナリストの合作なのではないでしょうか。

話題は、小沢氏の人となり、新党の動き、拉致問題と多方面に渡りました。ぜひ、ご覧ください。

/http://www.ustream.tv/channel/iwakamiyasumi"

岩上安身氏のジャーナリストとしての手法は、ごくオーソドックスなものです。相手の話を丁寧によく聴き、同意できるところには共感を示しながら大きく頷き、ここというツボにさしかかると果敢に掘り下げる。つまり、彼は、「話すことは聞くことである」というコミュニケーションのつぼを心得たジャーナリストなのです。

そうやって彼は、話相手の真価を自ずと示し、事実をきちんと報道し、物事の真実を伝えようとしています。そんなふうにオーソドックスに踏み行えば踏み行うほどに、危ういくらいの迫力が生じてきます。臭いモノに蓋をしたがる人びとがそわそわと落ち着かなくなってきます。これこそ、ジャーナリズムの本道なのではないでしょうか。岩上氏の存在そのものが、「垂れ流し報道」「無責任な野次馬報道」に対する痛烈な批判になりえているように、私は感じます。

狡猾な周囲から潰されないように、しぶとくがんばってほしいものです。


*この後、私の岩上評は、ガラリと変わりました。脱原発運動への過剰な傾斜ぶりに対して、拭えぬ違和感を抱くようになったからです。彼のUSTREAMチャンネルが「原発反対ドン、ドン、ドン」の連中のお祭りさわぎの様子を延々と実況中継したときに、私の違和感はピークに達し、それ以降、彼の言動に注目するのを一切やめてしまいました。気が萎えたのです。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 安全保障の危機の進行 消費... | トップ | ザ・ピーナッツ 伊藤エミさ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

政治」カテゴリの最新記事