美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

大滝詠一特集(1)『NIAGARA CONCERT ‘83』について(その4)

2019年03月27日 20時35分18秒 | 音楽


今回は、『NAIAGARA CONCERT ‘83』CD2の最後まで行ってしまいましょう。

十二曲目は、「Train Of Love~サマー・ローション」です。当曲が歌われたのは、一九七七年六月二〇日渋谷公会堂での「THE FIRST NIAGARA CONCERT」においてです。なぜ「FIRST」なのかといえば、当ツアーが、ナイアガラ・レーベル発足以来初めてのコンサート・ツアーだったからです。七七年六月一九日の大阪毎日ホールを皮切りに、二〇日が渋谷公会堂、二一日が仙台電力ホール、二四日が名古屋勤労会館、二四日が福岡電気ホールという日程のなかでの、当収録は二〇日のものです。

「Train Of Love」は、ポール・アンカが作詞・作曲した楽曲で、アネットが六〇年四月に発表し、全米第三六位を記録しました。同年七月にはイギリスの女性シンガー・アルマ・コーガンが発表し、全英第二八位を記録しました。日本では、最近亡くなった森山加代子が「恋の汽車ポッポ」の邦題で六一年に日本語でカヴァーしました。
ここで大瀧詠一は、その歌詞を大幅に改変して歌っています。

「サマーローション」は、大滝詠一が資生堂のCMソングとして七三年四月に録音した曲なのですが、なぜかしら、一回しかオン・エアされませんでした。

参加ミュージシャンとしては、ギター村松邦男、キーボード井上鑑(あきら)の名が挙がっています。

原曲に触れると、アネットの小悪魔的ヴォーカルがなかなか魅力的です。

森山加代子に関しては、弘田三枝子や中尾ミエなどとともに草創期のジャパンポップスのシンガーとして、大滝詠一は、彼女を哀惜の念を籠めながら高く評価しています。森山加代子は、今年の三月六日に永眠なさいました。合掌。個人的な経験になりますが、一九七〇年、当方中二の春か秋に、函館の野外会場で彼女が歌うところを生で(無料で)観ています。中学生の私にとっても、はじけるような、とてもキュートな歌いっぷりだったことが、いまでも印象に残っています。自然体のコケティの持ち主と申しましょうか。彼女の生来の持ち味なのでしょうね。

Annette Funicello - The Train Of Love


森山加代子 恋の汽車ポッポ(1) 1961 / The Train Of Love


十三曲目は、「Dream Lover~Travelin’Man」のメドレー。一九七六年一〇月七日渋谷公会堂で実施された「GO!GO!NIAGARA」で歌われたものです。

「Dream Lover」は、ボビー・ダーリンが五九年四月に発表した自作自演の曲で全米第二位を記録し、「Travelin’Man」はリッキー・ネルソンが六一年四月に発表した曲で全米第一位を記録しています。当曲の作者ジェリー・フラーは、リッキー・ネルソンに多数の楽曲を提供しているほかに、ゲイリー・パケット率いるユニオン・ギャップの「ヤング・ガール」などのヒット曲を作詞・作曲しています。

Bobby Darin - Dream Lover


Travellin' Man Ricky Nelson


十曲目の「Who Put The Bomp」もそうですが、曲調やテンポやコード進行が似ている曲をさりげなくメドレーにしてしまうところに、大滝ワールドの大きな特徴がありますね。

十四曲目は、「Blue Suede Shoes」です。エルヴィス・プレスリーが五六年三月二三日に発表した楽曲で、全米二四位を記録しました。作者のカール・パーキンスのヴァージョンは五六年一月に発表され、全米カントリー・チャートで第一位、ポップチャートで第二位を記録しています。二人のプレイを掲げておきましょう。

Elvis Presley - Blue Suede Shoes 1956 (COLOR and STEREO)


1956 HITS ARCHIVE: Blue Suede Shoes - Carl Perkins (a #1 record)


演奏メンバーに、エレキギター村松邦男、キーボード坂本龍一の名が見られます。

一五曲目は、ポール・マッカートニーの「Yesterday」です。録音状態は決して良くないのですが、一九六六年十一月三日、岩手予餞会での演奏というだけでも話題性十分です。高校生のころの歌、ということになりますね。このころのヴォーカルにすでに大滝詠一らしさがうかがえます。

(次回に続く)
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大滝詠一特集(1)『NIAGARA CONCERT ‘83』について(その3)

2019年03月26日 18時17分11秒 | 音楽


目下、大滝詠一が好んで取り上げたオールディーズにひとつひとつスポットライトを当てる、という地道な作業をしております。

サービス業を営んでいるせいでしょうか、わたくし、自己満足に終始する勇気に乏しいところがあるのです。上記のような振る舞いになど、よほどの大滝フリークでなければ興味を持ってもらえないのではなかろうか、あるいは、大滝フリークにしてみれば私がここで言っているあれこれなど周知の事実であって彼らに白けた気分を味わわせてしまっているだけなのではなかろうか、という不安につきまとわれながらアップをしております。しかしながら、オールディーズ自体の輝きや魅力を感じ取って楽しむ奇特な方もいらっしゃるのではなかろうか、と思い返し、アップを続けます。

『NAIAGARA CONCERT ‘83』CD2の七曲目は「Mr. Blue」、八曲目は「Dreamy Eyes」、九曲目は「Come Softly To Me」、十曲目は「Who Put The Bomp」、十一曲目は「His Latest Flame」(邦題「マリーは恋人」)です
(以上、一九八〇年十二月十六日「LET’S DEBUT AGAIN」於・芝郵便貯金ホール)。

「Mr. Blue」、「Dreamy Eyes」そして「Come Softly To Me」は、長万部キャッツと大滝詠一による無伴奏のアカペラという貴重なセッションです。大滝詠一のスイートヴォイスの魅力がじっくりと味わえます。

「Mr. Blue」は、フリートウッズが五九年八月に発表し、全米第一位を獲得しています。作詞作曲はドゥウェイン・ブラックウェルです。
THE FLEETWOODS - Mr. Blue


「Dreamy Eyes」は、ポップカントリーを代表するシンガー、ジョニー・ティロットソンが五八年に発表したファーストシングルで、全米第六三位を記録した自作自演の美しいバラードです。
Johnny Tillotson - Dreamy Eyes (1958)


「Come Softly To Me」は、今回何度も名前がでているフリートウッズが五九年二月に発表したデビューシングルで、全米第一位を記録しています。
Come Softly To Me - The Fleetwoods (1959) (HD Quality)


十曲目の「Who Put The Bomp」(邦題“シビレさせたのは誰?”)は、シャネルズと共演しています。大滝詠一は実に楽しそうに歌っています。歌詞を間違えたのか、「あ・違ったかな?」のセリフはご愛敬です。原曲は、バリー・マンが六一年八月に発表し、全米七位を記録しています。エンディングでは、次に列挙する楽曲の数々が一節ずつ歌われています。すなわち、ボブ・B・ソックス&ザ・ブルー・ジーンズの「Why Do Lovers Break Each Other’s Hearts」、ボビー・ヴィーの「Take Good Care Of My Baby」、アレイ・キャッツの「Puddin N’Tain’」、モノトーンズの「Book Of Love」、大瀧詠一がTBSラジオの番組「こずえの深夜営業」のために作ったテーマ曲「土曜の夜の恋人に」の五曲です。同じコード進行で歌える曲をメドレーにしているのですね。実に凝っています。遊び心満載の一曲です。言われなければ、こんなことふつうは気付きもしませんよね。

原曲を聴いていてちょっと思ったのですが、「歌詞を音の響き優先にしてしまう」という大滝詠一・作詞法の基本スタンスに影響を与えた楽曲のなかのひとつ、なのかもしれませんね。
Who Put The Bomp - Barry Mann


十一曲目の「His Latest Flame」(邦題「マリーは恋人」)は、大滝詠一が世界のポップス史を「ビフォア・エルヴィス」と「アフター・エルヴィス」とに分けるほどに敬愛するエルヴィス・プレスリーが、六一年八月に発表した曲で、全米第四位を記録しています。六八年から七〇年にかけての「はっぴいえんど」時代の大滝詠一について、ドラムと作詞担当だった松本隆は、「エルヴィスの物まねをする人」という印象を語っています。ちなみに、大滝詠一によれば、「ビフォア・エルヴィス」と「アフター・エルヴィス」の境目は、エルヴィスが「ハート・ブレイク・ホテル」を引っ提げて登場した一九五六年三月、との由。

原曲の話に戻ると、当楽曲の作者であるドク・ポウマスとモート・シューマンは、エルヴィスに多くの楽曲を提供しているほかに、ドリフターズの「ラスト・ダンスは私に」やミスティックスの「ハッシャバイ」など多くの名曲を残したソングメイクチームです。

当日のギター・メンバーに、鈴木茂と村松邦男の名が見られます。リズムはボー・ディドリー調です。楽曲としてはほかに、ビートルズの「I Call Your Name」とデル・シャノンの「Runaway」(邦題‘悲しき街角’)が歌われたそうですが、残念ながら当CDには収録されていません。

原曲を聴いてみてあらためて思うのは、歌いっぷりがこんなにカッコいいんじゃ、見た目もあんなんだし、当時のアメリカの年頃の娘さんたちが失神したり失禁したりしてしまったのも仕方ないよなぁ、ということです。女性は、男のトータルな魅力を理屈抜きに全身で感じ取るのでしょう。男も、女性に対して基本的にはそうなのでしょうが、「理屈抜きに」とはいかないところがあるような気がします。
Elvis Presley - (Marie's The Name) His Latest Flame (Audio)


(次回に続く)
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大滝詠一特集(1)『NIAGARA CONCERT ‘83』について(その2)

2019年03月25日 17時46分17秒 | 音楽


大滝詠一が出演したラジオ番組を聴いていて驚くのは、50年代から60年代にかけての英米ポップス、いわゆるオールディーズ・ナンバーについての博識ぶりです。一つの楽曲、たとえばエルビスプレスリーの「ハートブレイクホテル」が、歴史的な流れのなかでどう位置付けられるのかが、どうやら彼の頭のなかでははっきりしているようなのです。

ということは、自分の楽曲がポップスの歴史のなかでどのように位置づけられるのかを、大滝詠一は、いつも気にかけていた、ということになるでしょう。だから、大滝ソングスは時の風化作用に極めて強い、つまり、いつまでも古びない、のですね。ちなみに、詳細は残念ながら忘れてしまったのですが、ある人が大滝詠一に面と向かって「お前の〇〇という楽曲は、AとBとCのパクリだ」と言って大滝詠一の鼻を明かそうとしたところ、大滝詠一は「いやあ惜しいなぁ。DとEもパクッているんだけどなぁ」と返したそうです。

その意味で、今回のアルバムのCD2は、とても興味深い。というのは、当CDで、大滝詠一はオールディーズ・ナンバーを全部で15曲歌っているのですから。ここからわれわれは、大滝詠一の好みやシンガーとして作詞作曲家として受けた影響のあれこれをくみ取ることができるでしょう。

では早速一曲目「Confidential」と二曲目「Blue Velvet」に触れましょう。
「Confidential」は、フリート・ウッズが六〇年十一月に発表した曲で、作詞・作曲はドリンダ・モーガンです。
原曲を聴いてみましょう。
The Fleetwoods - Confidential

「Blue Velvet」は、ボビーヴィントンが六三年八月に発表し、全米ナンバーワンヒットになった曲。もともとは、黒人ドゥー・ワップ・グループのクローヴァーズが五五年一月に発表し、全米R&Bチャートで一四位を記録しています。
OBBY VINTON-BLUE VELVET

ここで披露されているのは、いわゆるクルーナー唱法です。それは、マイクロフォン使用を前提として、声を張り上げず、滑らかに発声する唱法だそうです。大滝詠一が、彼らから影響を受けているのは明らかですね。山下達郎が「大滝さんは、クルーナーヴォイスだ」と言っていたのは有名ですから。ちなみに、クルーナー唱法のパイオニアはビング・クロスビーで、フランクシナトラはその継承者、との由。以上の2曲は、一九八一年十二月三日、渋谷公会堂で催された「HEAD PHONE CONCERT」から。当コンサートは、2チャンネル・ステレオにミックスされたライブの音源をFM電波にのせ、観客がヘッドフォンで聴くという前代未聞の試みでした。わが友人Sは、そのライヴを観に行ったそうです。うらやましい限りです。当ライブには、鈴木茂(元はっぴいえんどのギタリスト)と村松邦男(ギター)が参加しています。女性コーラスは、長万部キャッツです。

三曲目は「Secretly」、四曲目は「I Love How You Love Me」、五曲目は「Fools Rush In」、六曲目は「Shaila~シャックリママさん~Love’s Made A Fool Of You」です。

3曲目の「Secretly」は、ジミーロジャースが五八年四月に発表したナンバーで、全米三位を記録しました。大滝詠一が歌詞をトチッているのが愛嬌ですね。
Secretly - Jimmie Rodgers


四曲目の「I Love How You Love Me」は、パリス・シスターズが六一年八月に発表し全米五位を記録しました。バリー・マンとラリー・コルバーによる名曲です。プロデューサーは、大滝詠一が敬愛するフィル・スペクターで、原曲ではスペクターお得意のエコーが、曲に独特の輝きを与えています。
I LOVE HOW YOU LOVE ME ~ The Paris Sisters (1961)

五曲目の「Fools Rush In」は、リック・ネルソンが六三年九月に発表した曲で、全米一二位を記録しています。ジェイムズ・バートンのギター・ソロ・パートを村松邦男と鈴木茂が再現しているのは特筆ものです。もともとは四〇年にグレン・ミラー楽団が全米で全米一位を記録し、同年にトミー・ドーシー楽団をバックにフランク・シナトラが歌ったスタンダードナンバーです。
Ricky Nelson Sings Fools Rush In

六曲目のメドレー「Shaila~シャックリママさん~Love’s Made A Fool Of You」のなかの「Shaila」は、トミー・ロウが六二年八月二日に発売し、全米一位を記録した大ヒット曲です。大滝詠一がなかなか心地よいリズミカルなノリで歌っています。次の「シャックリママさん」は、七五年ナイアガラレーベル発売のアルバム『ナイアガラ・ムーン』収録曲です。レコーディング・メンバーだった鈴木茂のギターソロがライヴバージョンで聴ける点が貴重です。メドレー三つ目の「Love’s Made A Fool Of You」はバディホリー率いるクリケッツが五九年九月に発表した曲で、六六年三月にはボビー・フラー・フォーのカヴァ・ヴァージョンが全米二四位を記録しました。メドレーのところどころに織り込まれた、大滝詠一命名の「シャックリ唱法」が聴きどころのひとつです。
Tommy Roe - Sheila ( 1962 )

The Crickets - Love's Made A Fool Of You

以上は、一九八一年六月一日新宿厚生年金会館で催された『ロング・バケイション』の発売記念コンサートからナンバー。コーラスは、長万部キャッツです。


(次回に続く)
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大滝詠一特集(1)『NIAGARA CONCERT ‘83』について(その1)

2019年03月22日 21時30分04秒 | 音楽


三月二一日(木)、大滝詠一のライヴ・アルバムが発売されました。それについて、いろいろとお伝えしたいと思います。情報源は、当アルバムのブックレットと『レコード・コレクターズ―ズ』二〇一九年四月号と『ギター・マガジン』二〇一九年四月号です。煩わしさを避けたいので、出典はいちいち掲げません。

当方、最近は、大滝詠一ばかり聴いています。その楽曲のみならず、彼がパーソナリティやゲストとして出演したラジオ番組も聴いています。

数年前までは、『A LONG VACATION』(一九八一年三月二一日発売)と『EACH TIME』(一九八四年三月二一日発売)を繰り返し聴く程度だったのですが、ベスト版の『Best Always』(二〇一四年十二月三日発売)を繰り返し聴くうちに、彼が一九六八年から七〇年まで所属していたグループ「はっぴいえんど」時代の楽曲や、彼が立ち上げたナイアガラ・レーベル時代の七〇年後半の楽曲に関心が広がっていきました。知らず知らずのうちに大滝ワールドに「ハマって」しまった、ということになるでしょう。



だから、今回のライヴ・アルバムの発売は、とても楽しみにしていました。なにせ私にしてみれば、大滝詠一のライヴパーフォーマンスをまとまった形で見聞きできる初めての機会なのですから。

今回入手した初回盤には、二枚のCDと一枚のDVDが納められています。CD1には、一九八三年七月二四日(日)所沢の西武ライオンズ球場で実施された「オールナイトニッポン・スーパーフェス83」でのパーフォーマンスが納められています。当フェスには、大滝詠一のほかにラッツ&スターとサザンオールスターズが出演しています。ちなみにトリは大滝詠一ではなくてサザンです。集客力を考えれば、当然のことでしょう。

思えば、「ロンバケ」をソニーのウォークマンで繰り返し聴いていた一九八四年ごろ、大滝詠一のコンサートにぜひ行きたいものだと思い、娯楽情報誌『ぴあ』を毎月のように買っては、大滝ライヴ情報を入手しようとしたものでした。

ところが、どうしても探し出すことができない。で、ついに根負けして、大滝ライヴ情報の入手を断念した、という経緯があります。当時、大滝詠一(を含むポップス情報全般)についてあれこれと語り合うことができる友人Sが就職して忙しい日々を過ごしていたので、八〇年代の大滝詠一がライヴから遠ざかりがちであることなど知る由もありませんでした。当時「大滝詠一はライヴ嫌いだ」といううわさが大滝ファンの間で出回っていたことを知ったのはずっと後のことです。そんなことを振り返るにつけ、自分は「遅れてきた大滝ファン」なのだと思う次第です。

話が脱線してしまいました。

当アルバムのCD2は、初回生産限定盤のオマケです。ここには、かつてライヴで披露されたオールディーズ・ナンバーのカヴァー・ヴァージョンと、それらの間にときおり挟まれた形の自身のオリジナル・ナンバーをメドレーにしたものとが収録されています。

DVDには、一九七七年六月二〇日、渋谷公会堂で催された「THE FIRST NIAGARA TOUR」が映像作品として収録されています。大滝詠一が歌っているところをまじまじと見つめることができるなんて、感慨深いものがあります。とりわけ嬉しかったのは、大滝詠一は(予想に反し)鼻筋がスッと通っていてなかなか品がある風貌だったことと、「夢であえたら」のシリア・ポールがとても素敵だったことです。本当にまるで夢のようです。

次回から、当アルバムの中身に具体的に入ってゆきましょう。
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3月16日(土)開催・藤井厳喜の白熱教室のご報告

2019年03月17日 22時34分37秒 | ブログ主人より


昨日、都内で開かれた藤井厳喜氏の「白熱教室」の模様をご報告いたします。

当教室は、ケンブリッジ・フォーキャスト・レポート(C・F・R)の正会員が無料で参加できる、藤井厳喜氏の月一度の講演会です。実施時間帯は午後の約四時間です。一般の方が参加するには二万円を出費する必要があります。今回初参加の当方は、正会員なので無料でした。要するにC・F・R会員の「特典」、ということですね。当講演会の特徴は、講演の大半が参加者と藤井氏との応答で構成されていることです。みなさん、盛んに質問なさっていました。
今回のテーマは、「安倍政権、7つの大罪:首相は何故、自滅の道を歩むのか」でした。

安倍政権の「7つの大罪」とは、以下の通りです。( )内は、大罪たるゆえん等です。

① 消費増税(不況をもたらすことが必至だから)
② 対中従属外交(それはすなわち反米外交となり、また、中共による間接侵略を促進することになるから。私見によれば、この局面での親中への傾斜は、大東亜戦争と同様の戦略的失敗を招きます)
③ 対韓・慰安婦謝罪(慰安婦問題に関する日韓共同宣言なるものが、日本の謝罪の上に成立しており、事実無根の歴史問題について謝罪することは、日本国民にいわれなき汚点を残すことになるから。このあたりのことについては、山岡鉄秀氏が目下インターナショナルに大活躍なさっています)
④ アイヌ新法(当法律は、歴史的に根拠のないアイヌ先住民族説を甘受したものであり、そのことで、日本国民を分断し、反日勢力の拠点を提供することにつながる。みなさん、この論点については、インターネットで検索し、問題意識を深堀りなさってください)
⑤ 憲法改正後退(安倍政権は、9条改正の意志を喪失してしまった。消費増税が、経済不況を招き、憲法改正機運に鉄槌を下すことになる)
⑥ 移民受け入れ(新入管法は事実上の移民受け入れ法である)
⑦ 天皇陛下のご「退位」・ご「譲位」問題(天皇皇后両陛下は「譲位」というお言葉を使われているのに、安倍政権はあくまで「退位」で通そうとしている。不敬である)

その他、国際情勢について氏が触れたことを以下に列挙します。

・2月27日28日の米朝首脳会談が失敗した最大の原因は、北朝鮮がアメリカの現状を読み誤ったから。金正恩は、トランプがもっと大胆な妥協をするだろうと予想していた。同期間に米国議会で行われたマイケル・コーヘン弁護士(トランプ大統領の元個人弁護士)の証言で、北朝鮮は、コーヘン氏が、ロシアゲートに関してトランプ大統領が不利になる爆弾発言をすると予想していた。だから、トランプは大胆な妥協をするだろう、と。ところが、その内容はむしろトランプ大統領のロシア疑惑関与を否定するものだった。それゆえトランプ大統領は、同証言によってまったく追い詰められなかった。北にとってみれば、「当てが外れた」ということ。金正恩は、米国政権中枢のディープ・ステイトの反トランプ情報に安易に乗っかったのでは。

・中共の習近平は、3月下旬に予定されていた訪米をキャンセルした。中共は、対米貿易黒字の削減には対応できる。しかし、国営企業に対する大量の補助金を削減し、知的所有権の窃盗を止めること(これらはアメリカが要求していること)は、共産党一党独裁という中共経済の核心を揺るがすことがらであるから、アメリカの要求を呑むのは構造的に無理である。それゆえ、訪米の成果が望めないので、習はキャンセルしたのだろう。したがって、米中経済戦争は長引く。日本政府は、アメリカに就くのか、中共に就くのか、旗幟鮮明にしなければならない。「いいとこどり」は、命とりになる。

・イギリスの「合意なきEU離脱」の可能性は高い。イギリスが離脱の延期をしたいと思っても、EU加盟27か国が全員一致でそれに賛成しなければ実現しないから。もともと、ブレグジットとトランプ現象とは似ているところもあるが、大きく異なる点がある。それは、トランプ政権が米国国民各層の幅広い経済ナショナリズムの支持の潮流から生まれた政権であるのに対して、イギリスのブレグジットの場合、経済ナショナリズムを支持する真面目な一般国民の上に、英国旧植民地利権勢力が上乗りしてこの運動を進めたことである。英国旧植民地利権勢力は、ブレグジットによって、シティのタックスヘイブンとしての金融利権を維持しようとした。ブレグジット問題の本質は、イギリスが抱えているタックスヘイブン問題である。具体的にいえば、同勢力は、ジャージー島・ガーンジー島・マン島という3つの英王室属領のタックスヘイブンという砦を守り続けてきた(これらの領域には、イギリスの法律が通じない)。イギリスがこれらのタックスヘイブンをきちんと規制しない限り、EU側は、英国とまっとうな交渉をすることを拒んできたのである。それが今日の「合意なきEU離脱危機」を招いているのである。いずれにしても、金融センターとしてのロンドンシティの地盤沈下は避けられない。シティが辛うじて生き延びることができる唯一の道は、イギリスに本社を置くすべての金融サービス会社が、EUの監督下に入ることである。

・そのことに関連して、アメリカのファーウェイ排除に抵抗している筆頭はイギリスである。英国旧植民地利権勢力は、元々親中派であり、英政府通信本部が「5Gにファーウェイ製品を導入しても、リスクを抑える方法はある」とするのも、同勢力が水面下で中共と提携関係にあることを考えればむべなるかな、というよりほかはない。英米は一体ではない。英米の対立関係が見えていないと、本当の国際情勢は見えない。

ほかにもいろいろと話は出ましたが、このあたりでやめておきます。藤井氏から得たものを当ブログを読んでくださっている方々と共有するため、これからいろいろな形で発信いたしますので、気長にお待ちください。当「白熱教室」のサブタイトルは、「日本の未来を創る!」です。その趣旨に、当方、大いに賛成なので、藤井氏が発信するところは、お伝えしていきたいと思っております。

PS 「退位」「譲位」問題に関連して、当方からひとつ藤井氏に質問をしました。ついでながら、それを述べておきましょう。
氏は当問題についておおむね次のように述べました。

すなわち〈天皇皇后両陛下は「譲位」というお言葉を使われているのだから、それを尊重して「譲位」を使うべきなのに、安倍内閣は、「譲位」を使うと天皇陛下が主体的に国事に関する行為を行ったことになるからという理由で「退位」を使っている。
しかし、憲法第憲法7条「天皇の国事行為」には「内閣の助言と承認により」とある。これは、天皇の主体的意思の所在を前提している。だから政府見解は、「譲位」を否定する根拠とはなりえない。
天皇陛下の「譲位」決意の御心の根底には、長らく続いている平成不況と東日本大地震などの大規模自然災害による国民の苦しみの引き受けによる自責の念があるように思われる。歴代の天皇陛下は、国民の苦しみを引き受け続けてこられた。それが皇室の伝統的なあり方でもある。
その御心を尊重すれば「退位」などとんでもない〉と。

それに対して、私は〈今日のお話のすべてに感心しましたが、とりわけ、今上天皇に対する藤井先生の真心に感銘を受けました。
他方では、藤井先生がおっしゃるように、消費増税は、一般国民に深甚なる苦しみをもたらすので、なんとしても阻止しなければならない。
今上天皇の御心を汲むならば、安倍政権は、御代替わりをきっかけに消費増税凍結を世に向けて宣言し、新天皇の新しい時代を寿ぐことが、人心にかなっているのではないか。
消費増税凍結は、一般国民の心に、新天皇の「恩赦」と映り、天皇陛下に対する国民の心寄せをゆるぎないものにすることになるのではないか〉という意味のことを申し上げました。

藤井氏は、ご自身の反消費増税の論考が掲載されている、藤井聡氏の『クライテリオン』を掲げながら、「私が言いたかったのは、そういうことだ」という意味のことを発言なさり、私に謝意を表されました。とても嬉しかったですね。

目にした藤井厳喜氏の姿勢は、率直そのものでした。自然体をキープなさっていました。偉ぶったところは、微塵もありませんでした。それは、20年間読書会を通じてお付き合いいただいた小浜逸郎氏のお人柄に通じるものでした。一流の人士には、やはり共通するところがある、と再認識いたしました。
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