美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

イギリス・ジョンソン首相は、残念ながら、骨がらみの親中派である

2020年05月10日 22時32分58秒 | 政治

左から、父のスタンリー・ジョンソン、ひとりおいて、ジョンソン首相、弟のジョージ・ジョンソン

武漢ウィルスに感染し、死を覚悟するところまで追い詰められていたボリス・ジョンソン英首相が、4月16日無事に退院しました。ボサボサ頭がトレード・マークでどこか愛嬌のある人物なので、当方としては、キャラとして惹かれるところのある政治家だと思っています。英国人の間でもさぞかし人気の政治家であることと思われます。女性にモテるのもむべなるかな、とも思います。

しかしながら、まことに残念なことに、ジョンソン首相は、骨がらみの親中派なのです。

まずは、彼の家族と中共とのつながりについてです。

イギリスの大手一般新聞であるガーディアン紙の報道によると、ジョンソン首相の父、スタンリー・ジョンソン氏は駐ロンドン中国大使の劉暁明氏と面談し、イギリス高官に劉大使の次のような意向を伝えていました。ジョンソン首相がコロナ禍についてのお見舞いメッセージを北京に発信していないことに、劉大使が不満を示したというのです。中国がジョンソン首相の父親を通じてイギリス政府に影響を与えていたことが危惧されます

ジョンソン首相の弟、ジョー・ジョンソン氏も対中関係には積極的です。彼は大学担当大臣在任中、イギリスの大学の代表団を率いて中国視察ツアーを行いました。中国の教育大臣らと対談し、レディング大学と南京情報科学技術大学(NUIST)の提携を取り付けました。ちなみにジョー・ジョンソン氏は、運輸担当の閣外大臣だった2018年11月、ブレグジットに抗議して突然の辞任を表明し、メイ政権に打撃を与えたりしています。

ジョンソン首相の異母弟、マックス・ジョンソン氏も中国との縁には深いものがあります。彼は北京大学でMBAを取得した後、香港のゴールドマン・サックスに入社しました。現在は中国向けに製品を販売する企業を対象とした投資会社を運営しています

次は、ジョンソン首相の対中がらみの来歴について、時系列順に見てゆきましょう。

2013年10月、当時ロンドン市長だったジョンソン氏は事業促進を目的とした中国ツアーを敢行し、中国有数の起業家や投資家、高官らと交流しました。氏の後押しにより、科学技術を促進するロンドンと北京との相互協定が結ばれました

また、氏は市長在任中、ロンドンと上海という2つの金融拠点の連帯を推進しました。2019年6月17日、念願の上海・ロンドン株式相互接続(ストック・コネクト)が正式に決まりました。これは上海上場企業がロンドンに、ロンドン上場企業が上海に、それぞれ上場できる制度で、中国投資家によるイギリス企業への投資につながることが期待されました。

2016年のEU離脱後、イギリスと中国の距離は更に縮まりました。EUの後ろ盾をなくしたイギリスは、経済や貿易面で中国の助けが必要となったのです。今やEUを除くイギリス最大の貿易相手国は中国です

外務大臣時代のジョンソン氏は、2018年1月、あるインタヴューで氏は、一帯一路を賞賛し、また、英国が中共主導のアジア・インフラ銀行(AIIB)に最初に参加した国であることを強調し、大陸中国からイギリスへの投資をさかんに促しました。

2019年1~8月にかけて、中国企業に買収されたイギリス企業は15社、買収価格は83億ドル(約8700億円)に上ります。2019年2月、アリババ系列のアント・ファイナンシャルは、ロンドンを拠点とする決済・両替企業 ワールドファーストを買収しました。中国の投資会社ヒルハウス・キャピタルは2019年6月、スコッチウイスキーブランド「ロッホ・ローモンド・グループ」の株式を4億ポンドで取得し、筆頭株主となりました。更に2020年3月、中国の敬業グループが、経営破たんした英国2位の鉄鋼メーカーを5000万ポンドで買収すると発表しました。

2019年9月、香港取引所がロンドン証券取引所の買収を試みましたが、これは失敗に終わりました。香港取引所の最大株主は北京政府です。もし買収に成功していたら、中国共産党が欧州の金融市場を支配していたかもしれません

2020年1月28日に、ジョンソン政権は「コア部分」を除き、その他周辺機器については中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の参入を容認すると発表しました。これは、中共と貿易戦争という名の覇権戦争に突入し、安全保障上のリスクから華為の導入に反対した米国の意向に真っ向から対立する決断でした。これまでの流れからすれば、むしろ自然・当然の成り行きと言わざるを得ないでしょう。安全保障面で、英米の足並みはまったく揃っていないと言っても過言ではないのです。つまり、英米はもはや軍事同盟国ではないのです。

以上から、ジョンソン首相は、骨がらみの親中派であると断じざるをえません。「コロナに殺されそうになったジョンソン首相は、中共に怒っている。これから反撃が始まる」というのは、どうやら希望的観測にすぎないようです。


以上の文章は、以下の記事の順序と文体を多少変え、いささか加筆しただけのものです。「<中共ウイルス>コロナに感染したジョンソン首相 イギリスと中国共産党の意外な関係」https://www.epochtimes.jp/p/2020/04/55178.html

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1 コメント

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こんにちは (猫の誠)
2020-05-11 16:37:35
ファーウェイについては、英国は以前から導入に積極的だった気がします。元々アヘン戦争時代から、英国と支那はコネクションが強かったのではないでしょうか。
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