美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

日本経済にとっての吉報! 安倍総裁、浜田教授を三顧の礼で迎える (イザ!ブログ 2012・12・18掲載)

2013年12月05日 22時20分53秒 | 経済
まずは、次の記事をごらんください。

自民党の安倍晋三総裁は16日、政権復帰を果たした新政権で、国際金融論の専門家、米エール大の浜田宏一教授(76)を内閣官房参与(経済担当)に起用する方針を固めた。デフレ脱却に必要な経済政策や国際金融について助言を求める。

安倍氏は、デフレ脱却のため日本銀行と政策協定を結び、インフレ目標を定めたうえでの大胆な金融緩和を進める方針を打ち出している。

この主張に対して、日銀の白川方明総裁や野田佳彦首相が反発、是非をめぐって論争になった。

その際、浜田氏は「(日銀の対応は)結局うまくいかなかった。安倍発言は全面的に正しい」との激励のファクスを安倍氏に送った経緯もある。

10日には自民党本部で安倍氏と会談、経済政策について助言した。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121217/stt12121707260002-n1.htm
【プロフィル】浜田宏一氏


はまだ・こういち 昭和11年生まれ、東大卒。
東大経済学部教授などを経て、61年からエール大教授。
平成13年から15年まで内閣府のシンクタンク「経済社会総合研究所」の所長を務めた。


日銀総裁の白川方明氏は、浜田宏一教授の教え子です。浜田氏はかつての師匠として、白川総裁の誤った金融政策を厳しく批判してきた人でもあります。また、中央銀行の量的緩和を積極的に推進することを是とするリフレ派の重鎮でもあります。そういう大立物を経済問題のブレインとして行政スタッフに招くことからも、安倍総裁の、インタゲ政策断行への強い意志を感じ取ることができます。おそらく、この一事でまた、円安・株価高が進行するはずです。今日にでも1ドル85円、株価10000円前後に達するのではないでしょうか。それくらいのビッグ・ニュースです。私はこのニュースに接してはじめて「祝 自民圧勝」が実感できました。いまの安倍さんは、驚くほどに視野が広い。このままいけばおそらく、世界有数のレベルの指導者になるのではないでしょうか。「誰が総理になっても同じ」ではないのです。このことを、特に次世代を担う若い人たちに分かっていただきたい。

*今日の株価終値は9923円、外爲は1ドル=83.84円でした。株価に関してはどうやら雰囲気をつかむことができていたようです。外爲に関しては、まだまだ感覚を磨く余地がおおいにあり、です。反省、反省。

〔続報〕
私が畏敬の念を抱いてやまない田村秀男氏が、安倍総裁による浜田宏一教授の抜擢を肯定的に取り上げています。とても参考になる内容ですので、ぜひご覧ください。tamurah.iza.ne.jp/blog/entry/2958541/「超デフレ・超円高是正を阻んできた御用メディアの大罪」

なお、私は最近田村氏のブログのコメント欄に次のコメントを書き込みました。

「拙論は全国紙ではただ一人、日本再生のためには、脱デフレと円高是正の政策を最優先せよ、そのために日銀政策の大転換を急げ、という論陣を長きにわたって展開してきた」。まったくその通りです。今回の自民党の圧勝と今後のアベノミクスの推進によって、田村さんが大手マスコミのなかでたった一人で守ってきた正論が、日本の常識になる日が来ることを心から願っています。そのためには、今後攻勢を強めると思われる、財務省・日銀主導の対安倍ネガティヴ・キャンペーンを撃破し続けなければなりません。その意味で、インターネット・メディアの重要性はますます高まるものと思われます。日本言論界の至宝として、田村さんの末永い健筆をお祈りいたします。

「日本言論界の至宝」とは大げさな、と思われた方。それは、大手メディアのこれまでの、経済問題をめぐる言論状況の惨状をご存知ないのでは?田村氏が、日銀のインフレ嫌い・引き締めぐせやデフレ下での消費増税の敢行が日本経済に与える破壊性について、大手メデイアにおいてただひとり論陣を張り訴え続けたことを評価するには、そういう最大限の賛辞を以てするほかにはないのではありませんか。

〔続報 その2〕
安倍経済政策のブレーンに、本田悦郎という人がいるという情報を入手しました。どんな人かと検索してみたところ、Wikipediaにこんなふうに書いてありました。

2012年11月の第46回衆議院議員総選挙直前、安倍は大胆な金融緩和策を提唱し日本銀行総裁の白川方明などから批判されたが、この際に安倍は「本田という元財務官僚がいて、彼がデフレ脱却について結構いろいろアドバイスをくれるんだよ」[8]と語っている。本田からのアドバイスの具体的な内容については、安倍は「マネタリーベースを上げて円高を克服すればデフレ脱却と税収増につながるというんだよね」と説明している。なお、マスコミからの取材に対し、本田も「安倍さんとはデフレ脱却について話をしているのは事実です」と回答している。

また、日本銀行法の改正を主張しており、政策目的として物価の安定と雇用の最大化を記載するよう主張している。具体的な目標値については「雇用が悪ければ物価(目標)は4%ぐらいにしないといけない」と指摘している。ただ、内閣に日本銀行総裁の罷免権を与える必要はないとの考えを採っている。望ましい総裁の人物像として「個人的には岩田規久男・学習院大教授など、インフレ目標の理念を理解している人がよい」と語っている。


積極的なインタゲ推進派のようですね。安倍さんの耳に「岩田規久男」の名が入っているのは大きいと思います。安倍自民党が力を得てからというもの、それ以前と隔世の感があります。最高権力者(になるべき人物)の周りに、ごく身近な存在として、浜田宏一、岩田規久男、そうして元日銀政策会合委員・中原伸之の名が飛び交っているのは、細かいことは脇に置いて、本当に夢のような話です。私は、経済における日本復活の実現への確信を深めています。ただし安倍さんは、財政出動に関して、宍戸駿太郎氏をブレーンとして迎えるべきではないか、とは思っています。それは、経済政策における知的布置のバランスを図るためにぜひ検討していただきたいと、私は考えます。マスコミは、「バラマキだ」「土建国家復活だ」と騒いでいますが、今日、公共事業の推進は極めて重要な政策課題です。だから、そのことのマクロ政策的な意味合いをきちんと世界水準で語れる人物がどうしても必要であると、私は思われてならないのです。管見の限りでは、宍戸氏がそういう人物です。
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美津島明  中国船が接続水域外へ  ――抑止力の本質について  (イザ!ブログ 2012・12・18 掲載)

2013年12月05日 22時15分09秒 | 外交
まずは、次の記事をごらんください。



中国船が接続水域外へ 
2012.12.18 11:40 [尖閣諸島問題] msnニュース

沖縄県・尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域を航行していた中国海洋監視船3隻と漁業監視船1隻は17日午後6時40分ごろまでにすべて接続水域を出た。第11管区海上保安本部(那覇)が18日、明らかにした。

11管によると、中国当局の船は11日から7日連続で尖閣諸島周辺の接続水域内を航行しているのが確認されていた。

接続水域の外に出たのは海洋監視船「海監50」「海監110」「海監111」の3隻と漁業監視船「漁政206」。巡視船などが、その後も監視・警戒を続けている。

「安倍効果」が対外面においても発揮されているようです。私はここに、「抑止力」の原点を垣間見る思いがします。「ヘタなことはできないぞ」という警戒心を相手に抱かせることが、「抑止力」の核心を成しているのではないでしょうか。

強面を作って鉄砲をずらっと並べることだけが抑止力の増強ではないのです。それは抑止力の現象面に過ぎません。私たちはどうやら、「領土問題を抱えている相手国に対して毅然とした態度をとることは戦争につながる」、という臆病な幻想を捨て去る時期に来ているようです。

勇気は余裕を生みます。余裕は、不測の事態に対処する余地をもたらします。そこに、鍛え上げられたリアリズムが生じることになりましょう。しかるに、蛮勇は臆病の裏返しに過ぎません。臆病は、針小棒大の妄想を掻き立てるだけです。そこに生まれてくるのは、力は正義なりというずぶずぶのクソ・リアリズムか、足場のしっかりしていないふわふわとしたアイデアリズムだけです。安倍さんに、蛮勇や臆病さとは異なる、リアリスティックな勇気を感じるのは私だけではないでしょう。つまり、静かなるリアルな勇気こそが「抑止力」の核を成している、と言い直したほうがよいのかもしれません。

それは、平和をリアルに愛する国民が腹の底に持つべきものでもあるのではないでしょうか。「抑止力」とは、平和を創出するための現実的な努力の集積によって生み出されるものである、とさらに言い直してみたいと思います。そういう努力を積み重ねるプロセスにおいて、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」(憲法前文)する余地などどこにもないことは、申し添えておきたいと思います。寝言や空想からは、平和は生まれてきません。これまで呑気に寝言や空想にふけっていられたのは、日本がアメリカの軍事的な秩序に組み込まれていたからにほかなりません。それが、周辺諸国にとっては、リアルに大きな抑止力だったのです。それが証拠に、日米同盟関係に「トラスト・ミー」と「友愛の海」の虚言によって亀裂が生じた途端に、中国・ロシア・韓国との間に事実上の領土問題が先鋭化された形で生じたではありませんか。

つまり、アメリカが日本の抑止力の事実上の担い手だったので、われわれ戦後の日本人の多くは、抑止力なるものを自分に引き寄せてマジメに考えてこなかったのです。

しかし、そういう「幸福な」時代は完全に終りを告げようとしています。たとえ、日米同盟が安倍さんのおかげで修復できたとしても、それは三年三ヶ月前とまったく同じものとはならないでしょう。日本もそうですが、アメリカもまた不況の泥沼からまだ抜け出すことができていないからです。いまのアメリカに、他人の面倒まで見ている余裕は、実のところないのです。

だから、日本は抑止力とは何かについて自力で考え抜くことが今後はどうしても必要になってきます。それは、ごく普通の国家ならごく普通にやっていることです。それを日本も抜き差しならない形でやるべき時を迎えているだけのこと、と言ってもいいでしょう。

しかしわれわれは、無から有を生むようにして、それを考案するには及ばないのではないでしょうか。冒頭の記事に触れたように、現実の動きを虚心に注意深くしかも鋭敏に観察すれば、それを考えるヒントはちゃんとあるのです。

漠然とですが、それは、思想の新しいフィールドが広がり始めていることをも意味するような気がしています。
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美津島明  「菅直人前総理の選挙結果について」 (イザ!ブログ 2012・12・17 掲載)

2013年12月05日 22時06分24秒 | 政治
当ブログで、先崎・小浜両氏によって取り上げられた菅直人前首相が、選挙区で落選しました。しかし、比例で復活当選を果たしました。首相時代もそうでしたが、「延命」に関してよくよく悪運の強い政治家です。


比例で復活当選し、事務所で記者の質問に応じた菅直人元首相=17日、東京都府中市(荻窪佳撮影)

菅直人氏 比例復活も…選挙区で敗北、陣営沈痛
2012.12.17 03:22 [東京都] msnニュース

「ああああ…」。午後11時55分ごろ、テレビの開票速報で、東京18区の民主党前職で前首相、菅直人氏(66)の選挙区での敗北が伝えられると、東京都府中市の事務所に集まった約10人の支持者から大きなため息が漏れた。腕組みをしたまま険しい表情で開票速報を見つめていた事務所スタッフは、思わず天を仰いだ。

前回衆院選でも自民党の海部俊樹元首相が落選したが、菅氏は前首相だけに重みが違う。民主党政権下の首相として、鳩山由紀夫氏(65)とともに民主党の評判を下げた「張本人」という批判が出ていた菅氏の選挙区での敗北は、民主党惨敗の象徴ともいえる。

(中略)

選挙区敗北の報を受け、報道陣が慌ただしく菅氏の所在を確認する。秘書を通じて「比例の結果が判明するまで事務所には来ないそうです!」と伝えられ、陣営関係者も「全部分かるまで何も言えない」と顔の前で手を横に振った。菅氏は結局、比例での復活を果たした。

民主党への逆風で、10回連続当選し、圧倒的な強さを誇ってきた前首相も大苦戦。これまでの選挙戦では全国各地の応援に飛び回り、地元入りすることは少なかった菅氏だが、今回は、ほとんど選挙区に張り付き、1日に30回以上の演説をして回る「どぶ板」を展開。首相として陣頭指揮した福島第1原発事故の経験を強調し、ビールケースの上にも乗って「原発ゼロ」を訴え続けてきた。

だが事故対応をめぐり、複数の事故調査委員会から「過剰介入」などと批判されたこともあり、聴衆から「責任はどうなんだ」とやじを浴びせられる場面も少なくなかった。

長年のライバル、自民党の土屋正忠氏(70)には前回の衆院選で約7万5千票差の大差をつけたが、今回は及ばなかった。

陣営関係者は「今までで最も厳しい選挙戦だった」と沈痛な表情。選挙戦終盤の13日には、選挙カーの事故で菅氏が頭を負傷するというトラブルもあった。「影響はなかったのだが…」と陣営関係者は肩を落とした。

支持者の女性は「苦戦は想定内だったが、信じられない。有権者に真意がうまく伝わらなかったのだと思う」と力なく話した。


上の記事のなかの次の箇所が、「延命」をめぐる菅前総理のしぶとさをよく表していると思います。

選挙区敗北の報を受け、報道陣が慌ただしく菅氏の所在を確認する。秘書を通じて「比例の結果が判明するまで事務所には来ないそうです!」と伝えられ、陣営関係者も「全部分かるまで何も言えない」と顔の前で手を横に振った。菅氏は結局、比例での復活を果たした。

選挙区敗北の意味は、菅さんの首相としてのキャリアが全否定されたということです。その段階で、彼の政治家としての生命は断たれたと、私は考えます。仮に、私が彼であったとしてもそう考えるでしょう。

しかし、そこを踏ん張って、意味もなく「ねばる」のが菅さんの真骨頂です。そこが菅さんの菅さんたる所以なのです。自己目的的に「しぶとい」のです。「選挙区で落選したとしても比例区があるじゃないか。この際とにかくまずはなんでもいいから当選するのが大事なんだ。代議士であり続けることが大事なんだ。選挙区で当選できなかったのは、選挙民が私の真意を理解できなかっただけで、いずれ分かるときがくる。いや、分かろうが分かるまいが、そんなことは実のところ関係ない。なぜなら、私はどんなときでも『間違っていなかった』からだ。」そうでも思わなければ、「比例の結果が判明するまで事務所には来ない」などという意思決定はできないでしょう。選挙区で敗北しても「比例区があるさ」と首を長くして待っている元首相の姿は、みっともないという言葉では足りません。マトモじゃない、と思います。

前首相としてのなけなしプライドがあるのなら、選挙区での敗北が判明し次第さっさと姿を現して、「オレは政治家を辞める。比例区の当選?後進に譲るさ」とうそぶくのが筋であると私は考えます。まあ、しかし、それができるくらいなら、菅さんは菅さんじゃない、ですね。

〔続報 その1〕msnニュース
「前首相、選挙区で落選確実」というテレビ速報から、約3時間後の17日午前3時ごろ、東京18区の菅直人氏の「比例で復活当選」の速報がテレビで流れると、東京都府中市の事務所では、約10人の支持者から静かな拍手が起こり、安堵の空気が広がった。

間もなく姿を見せた菅氏は、支持者に拍手で迎えられ、笑顔を見せたものの、選挙区での11回連続当選を阻まれただけに「今回の選挙戦を支えてくださった皆さんに、心からお礼申し上げます」と切り出した支持者へのあいさつでは終始、表情をこわばらせ、言葉にも力がなかった。

「残念ながら選挙区では勝ち上がることができなかったが、比例の最後の最後で議席をいただいたのは、全国の『原発ゼロをぜひ実現してくれ』と言う皆さんのある意味では執念」と、強調した。

前回衆院選では自民党だった首相経験者の海部俊樹氏が落選したが、菅氏は前首相だけに重みが違う。民主党政権下の首相として、鳩山由紀夫氏とともに民主党の評判を下げた「張本人」という批判が出ていた菅氏の選挙区での敗北は、民主党惨敗の象徴ともいえる。菅氏は眉間にしわを寄せた厳しい表情で「私にいろいろな点で不十分さがあったからだと思う」と述べた。


「比例の最後の最後で議席をいただいたのは、全国の『原発ゼロをぜひ実現してくれ』と言う皆さんのある意味では執念」。うん、さすがは菅さん。自分で自分をフォローする達人です。このセリフを吐くとき、彼は密かに思っていますよ、「オレは絶対に間違っていない」って。「眉間にしわを寄せた厳しい表情」。ああ、懐かしいなぁ。久々の「イラ菅」パーフォーマンスです。自分を否定する物言いにじかに接したときにせり上がってくる不快感をじっとこらえるあの表情です。気分は、悲劇のヒーロー。気難しい菅さんの取り巻きって、仏さまのような方々なのでしょうかね。

〔続報 その2〕msnニュース
民主党で「脱原発」路線を主導した菅直人前首相が「当選」を決めたのは、開票開始から7時間余りも経過した17日午前3時すぎ。選挙区で自民元職に破れ、比例代表東京ブロックの民主党枠の最終議席にようやく滑り込んだ。菅氏は都内の選挙事務所で「全国の『原発をゼロに』と考える皆さんの執念で議席を与えてもらった。大変重い1議席だ。福島第1原発事故を経験した首相として、語り部になる」と語った。

最後のセリフが聞き捨てにできません。「福島第1原発事故を経験した首相として、語り部になる」とは、何の言い草でしょうか。次に掲げるのは、阿比留瑠衣氏のブログからの孫引きです。

《菅さんは、ある時点から、反原発、脱原発に立場を変えた方が、政治家として支持が得られると考え始め、路線を変えたのではないでしょうか。もともと、確固たる信念のない政治家なのかもしれません。

市民活動家として政治の道を歩み始めましたが、自民党から政権を奪取し、権力を手中に収めた後は、消費税引き上げを主張しています。原発についても、首相に就任直後の二◯一◯年六月に閣議決定した「エネルギー基本計画」で、二◯三◯年までに14基を新増設し、発電量の五◯%を原発で賄うという方針を打ち出しました。自民党政権当時は、三◯%から四◯%でした。さらに原発の海外への輸出も、菅政権の成長戦略の一つでした。こう見ていくと、菅政権は震災が起こるまでは、長年与党だった自民党よりも、はるかに原発推進派だったのです。》(P152)
『証言 班目春樹 原子力安全委員会は何を間違えたのか?』より
http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/2938427/

この指摘一つで、菅さんの「反原発」がいかに嘘っぱちなものか、はっきりと分かります。彼は首相として、自民党による長年の原発推進を批判できた義理じゃないのです。彼は、自民党以上の「超原発推進派」だったのですから。そのことに対する反省がまったくないまま、原発事故の対応に追われる現場でヒステリックにわめき続けて関係者に散々迷惑をかけた後、いつのまにか「反原発派」に豹変して、元々反原発派であったかのように振舞っているだけなのです。私の目に、菅さんは、ボーダー・パーソナリティと映ります。

以上を踏まえたうえで、もう一度、先の言葉を引用します。

「福島第1原発事故を経験した首相として、語り部になる」

ここには、凶悪犯罪の真犯人が現場に舞い戻り、「よくあんなヒドいことができたものだ」と首を振ることで、あれは自分がやったことじゃないんだと自己暗示をかけようとする心理によく似た胡散臭さがあります。

私見によれば、菅直人は日本憲政史上最低の首相です。
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小浜逸郎氏 「団塊衰弱」 (イザ!ブログ 2012・12・16 掲載)

2013年12月05日 15時59分26秒 | 小浜逸郎
(テンテケテン、テケテンテン)

えー近頃はなんでございますな。世の中もだいぶ騒がしくなってまいりまして、年の瀬も押し迫っているというのに、投票をして国会議員を決めなきゃなんない。たくさんの方たちが入り乱れて立候補されているようで、だれにしていいのか迷います。皆様それぞれしっかりしたお考えをお持ちと存じますが、なんにせよ、住みやすい日本にしていただきたいもんでございます。

八つぁん へい、ご隠居さん、おさむうございやす。

ご隠居さん おう、八か、まあ上がれ。どしたい。

八 いやね、瓦版やってる美津公から妙なものを預かってきやしたんすけどね。

隠 妙なもの。どれどれ見せなさい。

八 へい、この写真でやす。したんところに「かんなおと」と書いてある。


かんなおと

隠 ああ、こりゃよく知られた政治家だ。総理大臣もやった。最近はめっきり落ち目だがな。これがどうかしたかい。

八 政治家? あっしはまた大工かと思いやした。

隠 なんでまた。

八 毎日、「鉋(かんな)の音」を響かせてるんじゃねえかって。

隠 バカを言いなさい。だいいち大工が背広着て街中に突っ立つか。

八 それなんすよ。この人は何してるんすか。

隠 これはな、選挙があるんで演説をしてるんだ。

八 なある。んで、この足元の「原発ゼロ」ってのはなんすか。

隠 そんなことも知らんのか。相変わらずだな。去年北のほうで大地震があったろう。こっちもずいぶん揺れたな。

八 へえ。あんときゃ、かかぁが風呂屋から素っ裸で飛び出しやがって、あとでしきりと恥ずかしがってやした。あら、あたし、なんてこと しちゃったのかしら、町の男衆みんなに見られちゃったんじゃないかしらン、世間体が悪いったらありゃしない、ねえ、どうしようかしらン、ねえ、あんた、ちょいとまわって菓子折りに熨しつけてみなさんに謝ってきてくれない? ねえ、あんたってばン……

隠 いつまでやってんだ、バカ。おめえの女房のことなんぞどうでもいい。あんときにな、原子力発電所が壊れて放射能が飛び散ったんだ。だからこんな危ねえものはもうやめましょう、ゼロにしましょう、とこういうことを訴えてるわけさ。

八 放射能ってえと、あの「ピカドン」みてえなもんで。

隠 そうだ。だけどな、ピカドンときにゃあホントにたくさんの人が死んだが、まあ、今回の事故の放射能で死んだ人も病気ンなった人もまだ一人も報告されてねえ。

八 んじゃあ、なにもゼロにしなくったってよさそうなもんでやすね。きょうび、電気なかったらあっしなんぞ仕事ンならねえ。

隠 あたしもそう思うがな。なにしろ怖がってる人がたくさんいるんで、自分が当選したら原発をなくしますよ、原発以外で電気作りますよって、そういう人たちに約束してるのさ。しかしそんな簡単にゼロにできるわけはねえ。

八 んでも、このかっこう、なんか笑っちゃいやすね。「原発をゼロにした偉い人」の銅像みたいじゃねえすか。

隠 八、おめえもたまには味なこと言うな。この季節に桜が咲くかもしれねえ。たしかにもうそろそろ銅像にしてもいいころあいかな。

八 てえと?

隠 この菅直人ってのはな、わけえとき、仲間集めて若衆組作って、世直しに燃えてたんだ。とにかくお上にさからうことがいいんだみてえな考え方でな。その考え方でずーっと来てるのさ。だけどそういう連中ばっかし集めたって、世の中もちゃあしねえ。もうそういう考え方は古いんだ。

八 へ? お上にさからう人が総理大臣すかい。なんかヘンじゃねえすか。

隠 八、おめえ、今日は妙に冴えてるな。この季節に菖蒲が咲くかもしれねえ。そりゃあ、お上だっていつもあたしたちのこと考えてくれているわけじゃねえし、悪いことするのもたんといる。だからさからう気持ち持ってる人うまく集めりゃあ、前のお上を倒して総理大臣にだってなれるってもんさ。しかしまあ何だな、世直しなんて聞くと、あたしもなんだか懐かしいね。

八 ご隠居さんと、この菅直人って人は歳がおんなじくらいなんで?

隠 そうだ。

八 するってえと何ですかい。ひょっとしてご隠居さんもその「世直し」とやらに手をお出しなすった……

隠 八、おめえ、今日はヘンにするどいな。この季節に牡丹が咲くかもしれねえ。じつはな、こう見えてあたしもわけえころは血の気が多くてな。ちょいとわっしょいわっしょいやったこたあある。だがな、女房も持ち子どもも育てて、いろいろと世間に出てやってみるてえと、なんというか、世直し、世直しとただ言ってたって、そうは簡単にいかねえことがわかったのさ。そいでちっとは考え直すことにした。まあ「若気の至り」ってやつだな。

八 若気の至りとくりゃあ、まかしておくんなせえ。あっしなんざ、切った張ったやるわ、博打は打つわ、これ(小指を出して)にゃ、やたら手ぇ出すわ、もうたいへんなもんでごぜえやして。

隠 おめえの武勇伝を聞くのはこの次にするよ。あの頃、世直しに手出した連中のその後見てると、だいたい二つに分かれるんだな。けろりと忘れて偉くなって威張ってる手合い、わけえころのわっしょいわっしょいが忘れられなくて、なんかいいことしたみたいに頭ン中だけであっためてる手合い。あたしはどっちも違うと思うんだがね。

八 なんだか話が小難しくなってきやがったな。で、この菅直人さんはどっちなんで。

隠 両方だな。偉くなって威張っていながらわけえころの世直しをいいことと勘違いしてそのままやってやがる。こういう連中はあたしくらいの年代にゃあ、けっこう多いんだ。お恥ずかしい話さ。

八 ふーん。両方ねえ。あっしのまわりにはあんまりいやせんけどね。

隠 まあ、あんまりいなくなったてえのはいいことさ。いずれあたしも含めて団塊ももうすぐただのジジイで、墓場が見えてきてるからな。

八 「だんかい」? なんです、そりゃ? 

隠 あたしたちの年頃連中がでけえ固まりみてえにたくさんいるてえことよ。団塊は若いもんに迷惑かけねえうちに、ゆっくり隠居でもすりゃあいいのさ。

八 へえ。あっしゃあまた、こう一歩一歩踏んでいくあの……

隠 段階か。バカ、なんでそんな勘違いするんだ。

八 へえ、段階を踏んで墓場へ行くのが世のならいでごぜえやすから。

(トントトトン テレツンシャン)
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美津島明 『「暴走中年」よしりんの脳内破綻』  (イザ!ブログ 2012・12・13 掲載)

2013年12月05日 01時48分33秒 | 経済
私は長年、「よしりん」こと小林よしのりの隠れファンであり続けてきました。一時期読書人の話題をかっさらった観のある『戦争論』。私は当時、本書の自虐史観に対するカウンターとしての価値を認めるにやぶさかではありませんでした。また、いまでもその評価について変わりはありません。その後に書かれた『台湾論』や『沖縄論』に対しても基本的には好感を抱きました。戦後思想が見て見ぬふりをしてきたものをひとつひとつ拾おうとする、よしりんの丁寧な手つきを感じたのです。

『パール真論』は、極東軍事裁判の本質に関してやや的を外した観があったものの、その志を以てよしとしました。「極東軍事裁判の本質に関してやや的を外した観があった」とは、たとえば、広田弘毅の、首相としてのリーダーシップの取れない無能ぶりを度外視して、やたらとその無欲ぶり・死に臨むにあたっての淡々とした虚無僧のような気風を持ち上げようとした点を指しています。そういう構えでは、極東軍事裁判をめぐる戦勝諸国の生臭いパワー・ポリティクスの実相に迫ることはかないません。とはいうものの、小林氏が、パール判事の発言を真正面から取り上げて、極東軍事裁判の、戦勝国による敗戦国に対する一方的な問答無用の鉄拳制裁という一側面に鮮烈な光を当てたことは間違いありません。

私が急速に小林氏に対する興味・関心を失ったのは、彼が天皇関連の問題に首を突っ込みはじめてからです。表現としての自由度がいちじるしく低下してきたように感じたのです。表現が平板で、なんとはなしにつまらないという感想を抱き始めたのですね。「天皇陛下バンザイ」を連呼することの快感がどうのこうのと言われても、それは個人的な趣味の問題であって、こちらとしてはなんと言ったらよいのやら、といったようなケースが増えてきたのです。念のために言っておきますが、私は私なりに、天皇に対して、日本人としてのごく自然な親しみの情を抱いています。例えば、野村芳太郎監督の『拝啓 天皇陛下様』(1963年・渥美清主演)に心からの共感を覚える人間であります。ただし、それを誰かに向かって主張しようとは思いません。

で、昨日、よしりんの筆になる次の文章を目にすることになりました。

安倍自民党はやはりインフレターゲットを設けて、公共事業に投資することで、景気が良くなると考えているらしい。

わしは経済の実力がないままに、通貨の価値だけ落として、モノの価格を上げるという政策は破綻すると思う。

インフレ2%なら、新発の国債利回りも2%以上にしなければならない。 長期短期合計1000兆円の既発国債が暴落する危険があり、税収をはるかに上回る国の借金となってしまうだけだ。

だが国民は「デフレ脱却」「景気回復」の念仏に踊って、それを選択するのだ。 国民は絶対に責任を取ってもらいたい。 あとで泣きごとを言うな!

その時に、自民はやっぱりダメだったから、今度はまた民主だなんて、気楽に乗り換えりゃ済む話ではない。

わしは警告をした。 あとは自力で富裕層に入ることのみ考える!

 
https://www.gosen-dojo.com/index.php?action=pages_view_main&active_action=journal のなかの
www.gosen-dojo.com/index.phpより引用

ここには、マスコミの悪質なデマを真に受けることによってすっかり判断を狂わされた、小林氏の無残な姿があるだけです。いくら上から目線でゴーマンかましてもダメなものはダメです。これまで当ブログをご覧いただいてきた方なら、私が小林氏の言葉をひとつひとつ議論の俎上に載せて論駁する労を省くことを許容してくださるものと信じます。

とはいうものの、ひとつだけ、インタゲ政策に対する小林氏の致命的な無知・無理解の例をあげておきます。

インタゲ政策がデフレ脱却に関して効を奏しはじめるのには、通常2、3年ほどかかると言われています。だからそれまでは、国債金利が財政破綻を招くほどに上昇することは考えにくいのです。インタゲ政策には、そういうタイム・ラグがあることをまったく理解していないから、「インフレ2%なら、新発の国債利回りも2%以上にしなければならない。 長期短期合計1000兆円の既発国債が暴落する危険があり、税収をはるかに上回る国の借金となってしまうだけだ」などという短兵急な言葉が出てくるのです。

「新発の国債利回りも2%以上にしなければならない」のは、デフレ脱却が実現しつつあることを示すまことに喜ばしい事態なのです。だって、国債以外に投資の対象が広がるようになったからこそ、国債の金利が上がるのでしょう?金利の上昇というのは、国債を擬人化して彼にしゃべらせれば、「ほらほら他所見しないで、こっちを見てよ。こんなにたくさんご褒美をあげるんだからさ」ということですよね。それは、みんながお金を溜め込まずに、世の中にお金が活発に出回るようになったということではないですか。それが、デフレからの脱却ということでしょう?ついでに、よしりんの本ももっと売れるようになるのですから、デフレ脱却ウハウハではありませんか。かくも喜ばしき(一定のタイム・ラグを経ての)兆候である国債利子の上昇をあべこべに悲観的な材料にするとは、絶句するよりほかはありません。よしりんは、おそらく経済については何も知らないも同然なのでしょう。これからは、そういうことについて何も語らないのが身のためです。だって、エラそうにご宣託を垂れたつもりが、まるでトンチンカンなことを言ってしまっている、というのは格好悪すぎでしょう。

私は、小林氏の誤った経済認識を難詰しようと思って、彼の文章を引っ張り出したわけではありません。

財務省発のマスコミ垂れ流し年中行事記事である「国の借金1000兆円」の呪縛力の恐ろしさをみなさんに再認識していただきたいと思っているのです。このデマを真に受けると、経済に関してマトモに頭が働かなくなります。財政が破綻する前に脳内が破綻してしまうのです。これに例外はありません。

野田首相、櫻井よし子、橋爪大三郎、そうして今回の小林よしのり。こうやって、「国の借金1000兆円」教の信者になった者たちの「脳内破綻」の墓碑がひとつまたひとつと、日本のどこかで立てられているのでしょう。みなさん、くれぐれも気をつけてください。

ついでながら。よしりん個人に、ひとつだけそっと伝えたいことがあります。「変に拗ねてないで、素直に安倍さん支持に回りなさいよ。そうしないから、次々に馬鹿な言葉が口を突いて出てきてしまうんだよ。「暴走」はあの老人ひとりに任せておこう。あなたまでお人好しよろしく、それに付き合う必要はないよ」私は、経済問題についてよしりんと論戦を交えようなどとは夢にも思っていません。が、上のかぎかっこ内の言葉だけは、風の便りで彼の耳に届くことを願っています。
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