マキペディア(発行人・牧野紀之)

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新潟県(01、実力)

2008年07月27日 | ナ行
     

 新潟県は何地方か。中部、北陸、東北、関東? いずれも収まりがいまひとつだ。ひとつの独立した地方と見た方が現実的かもしれない。

 北端から南端まで300㌔、これは東京から福島市や前橋市までと同じ距離だ。山地などを除いた可住地面積は北海道に次ぐ都道府県2位。県土を貫く信濃川は、延長・水量ともに日本一。米の生産量1位、食料自給率もばば100%の一大農業県だが、工業出荷額(2006年度)も23位と上半分に入る水準だ。

 世帯あたり実収入15位と、地価や物価の違いを考えれば都会より豊かかもしれない。そのためか、県外への転居者数を県人口で割った人口転出率(2006年度)は46位と低い。高校進学率は日本一だが、大学進学率が29位で専修学校等進学率は28%で4位という数字(2007年)が示すように、手に職をつけて地元にとどまる若者も多いのだ。

 本州日本海側最大の町・新潟に集まる若者のエネルギーは、アルビレックス新潟の、毎試合平均4万人弱という入場者数(2007年度・Jリーグ2位)にも表れている。

 うなぎの寝床のような町屋の奥に、天井からぷら下がる何百本もの鮭。江戸時代に世界で最初に鮭の放流が事業化されたという村上市の名産・塩引き鮭の熟成風景だ。案内してくれた作務衣の若だんなは商社マンを辞めて地元に帰ってきた人。彼らが始めた3月の人形さま巡りと9月の屏風まつりは、町屋の中におじゃまできる行事として全国区になり、鮭のように毎年通う客が増えている。

 豊かな小宇宙・新潟を再発見し、いつの日かそこに帰ってくる日本人は今後、増えていくのではないだろうか。

  (朝日、2008年06月21日。
  地域経済アナリスト・藻谷浩介、協力・日本政策投資銀行地域振興部)

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