01、朝日の記事、2015年03月18日
大津市立中学2年の男子生徒(当時13歳)がいじめを受けて自殺した事件をめぐる訴訟で、生徒の両親と市の和解が03月17日、大津地裁(山本善彦裁判長)で成立した。
越直美・大津市長は和解後、いじめ自殺を防ぐ字校側の責務を広くとらえた今回の和解条項を、全国で共有するように国などに働きかける考えを明らかにした。
和解条項では、教職員が生徒へのいじめを認識し、自殺を予見することが可能だったのに防げなかったことなどについて、市が両親に謝罪するなどとした。賠償額は4100万円相当とし、すでに支払われた災害共済給付金を除く1300万円を和解金として市が支払うとした。
地裁は、事件前から文部科学省がいじめに関する通知を繰り返し出していたことなどを踏まえ、2月に行った和解勧告の中で「教職員は一般的に、いじめを要因として自殺が生じうることを予見できる状況にあった」と踏み込んでいた。
越氏は生徒の父親らとともに記者会見。越氏は「今回の和解条項で特に重要なのは、教職員がいじめに気付き、止める責任があると書かれた点」と評価し、「『いじめに気付かなかった』との言い訳は通じない」と述べた。父親は「(いじめで)苦しむ全国の人たちにこの画期的な和解内容を伝え、役立てたい。全国の教育関係者は、二度と悲劇を繰り返さないための手がかりにして」と求めた。
★
信頼が土台に(大津市の第三者調査委員を務めた教育評論家の尾木直樹さんの話)
第三者委は疑問が出れば必ず解明する姿勢を徹底し、事実を緻密に積み上げていじめ行為を認定した。委員には遺族の推薦人を入れた。公平だと信頼され、調査結果が和解の土台になったと思う。事件をきっかけに「いじめ防止対策推進法」はできたが、依然いじめ対応が後回しの学校はある。命にかかわる事態との認識を強めてほしい。いじめに気づくため、教室で生徒同士が指摘し合える雰囲気作りも大切だ。
★
和解条項の要旨
・市は男子生徒の自死を予見できたのに適切に対応せず、予防できなかったことを謝罪する
・市は自死後に適切に対応しなかったことを謝罪する
・市はいじめ防止のための取り組みを継続する
・市はすでに支払った2800万円とは別に、和解金1300万円を支払う
・市は和解条項をホームページに掲載する
★
生徒の自殺をめぐる主な経緯
2011年10月、生徒が自殺
11月、大津市教委が「いじめはあったが、自殺との因果関係は不明」と発表
2012年02月、生徒の両親が市や同級生らに損害賠償を求め提訴
07月、「自殺の練習をさせられていた」とするアンケートの回答が明らかに。
越直美市長が第三者委設置を表明
07月、滋賀県警が元同級生による暴行容疑で中学校と市教委を捜索
12月、県警が暴行容疑などで元同級生2人を大津地検に書類送検。当時13歳の1人を児童相談所に送致
2013年01月、第三者委が「いじめが自殺の直接的要因」とする報告書を提出
09月、いじめ防止対策推進法施行
2014年03月、大津家裁が元同級生3人の処分決定
2015年02月、大津地裁が和解を勧告
02、牧野の感想
この程度の成果でも「画期的な和解」(生徒の父)と評価されるのは、この問題についての理解がいかに低いかを証明していると思います。
どこに不十分さがあるかと言いますと、第1に、「学校に責任」という捉え方です。私見では、「校長と教育長に8割の責任」としなければなりません。従って、いじめが起きたら、ましていじめ自殺が起きたらなおさら、校長と教育長とは給与の一部を返し、場合によっては退職金なしで辞職するべきです。それくらいの覚悟がないならこどもを預かったりするな、と言いたいです。
学校教育というものは個々の教師が行うものではなくして、「校長を中心とする教師集団が行う」ものです。これまでにも何度も言ってきましたが、少しもこの理解が広まっていません。尾木直樹さんですら、こういう点を主張していません。
第2に、これくらいの成果でも達成出来たのには越市長のやる気が大きいと思います。アンケートの結果の公表を渋る教育長を何時間も説得して公開させた点にそのやる気がよく出ています。聞くところによると、越市長は自分自身かつていじめを受けたことがあるそうです。
我が浜松市でも同じ問題で「市や教委側に誠意がない」として、裁判が起こされ、裁判所から和解勧告が出ていますが、この程度の和解にさえ達するか、あやしいものです。浜松市では市長にやる気がないからです。
第3に、自分の人権を守る方法を具体的にきちんと教えるべきです。人権尊重こそ道徳教育の第1の課題です。この事が確認されておらず、実行されていません。特に裁判所に(簡易裁判所でいいから)訴える方法を教えるべきです。裁判の見学を教育課程に入れるべきです。
この事は、いじめに遇ったこどもが先生にも校長にも親にも言いにくいという現状を考えると特に重要です。私自身、裁判の傍聴を通じて自分で裁判を起こす方法を知った事はとても大きな自信と勇気になりました。
第4に、又校長の問題に戻りますが、校長のだらしなさは本当に度しがたいものがあります。先日、川崎市の中学生がいじめで殺されました。その後再開された当該の学校の校長が、その時何と言ったか。ラジオで聞いただけですから、間違っている点もあるかもしれませんが、根本は間違っていないと思います。私の記憶では、校長は、「皆さんがしっかり生きて行くことがU君の死を無駄にしない方法だ」とか言ったはずです。
この発言のどこが問題でしょうか。校長の反省がない点です。「U君が自分に相談してくれなかったことは、自分が生徒に信頼されていないことだ。申し訳ない。今後はいじめを受けたら、又はいじめを見聞きしたら、直ぐにまず校長の私に知らせてください。命がけで、いじめを無くし、皆さんの命を守ります」とどうして言えないのでしょうか。
関連項目
いじめ自殺問題