すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【サッカー戦術論】ゲームモデルとプレー原則とは何か?

2019-08-24 07:12:09 | サッカー戦術論
「機械のようにプレーせよ」ではない

 ゲームモデルやプレー原則という言葉がよく聞かれるようになったが、これらは誤解されることが非常に多い。人によっては「機械のように決められた通りプレーしろというのか?」「選手の創造性を否定するのか?」などと拒否反応を示す人もいるが、実はまったくそんなことはない。

 ゲームモデルとはひとことで言って、「チームとしてどんなサッカーをしたいのか?」である。つまり同じ戦術に基づきチームがコレクティブに戦うためのガイドだ。これなしで11人揃えても、そんなものは単なる烏合の衆にすぎない。基本的な方向性すらないのでは、意思疎通のある集団プレーのしようがない。

 例えば私がもし監督なら、攻守の切り替えが早く相手を自由にさせないプレッシング・サッカーをやりたい。トランジション(切り替え)を重視する時点で、足を止めて「お休みする時間」はない。また状況に応じて機敏にポゼッションとカウンターを使い分け、選手には考える力を要求する。これがゲームモデルである。

 一方、プレー原則というのは、そのゲームモデルを実現させるための約束事だ。これは(1)攻撃時、(2)守備時、(3)攻→守の切り替え(ネガティブ・トランジション)、(4)守→攻の切り替え(ポジティブ・トランジション)ーーの4つの局面でプレー原則が設定される。つまり「この場面では、ウチのチームはこうプレーしましょう」という最低限の決まりである。

 逆にいえば最低限の約束事だから、そこから先は個人の応用力が求められる。細かく選手を縛るわけでも何でもなく、「創造性がない」なんてことにはなりようがない。

ボールを失ったときのプレー原則は?

 では私が上で例示したゲームモデルを実現させるには、どんな場面でいかなるプレー原則が必要なのか? わかりやすい例をひとつ挙げれば、ネガティブ・トランジション時、つまり前線でボールを失ったときのチームとしてのふるまいである。

 自分たちはボールを保持して攻撃していた。で、そのとき最前線でボールを失った。では、そのあとチームとしてどうプレーするのか?

 私のチームはトランジションを重視する。ゆえにその場で足を止めずに集団でゲーゲンプレッシングし、ボールの即時奪回をめざす。で、ボールを奪えば高い位置から素早くショートカウンターをかける。

 反対にもしボールをすぐ回収できない場合には、背中で敵のパスコースを切りながらミドルサードまでリトリートし、ブロック守備に移る。これが我々のプレー原則だ。

 一方、これとは正反対の考え方もある。例えばボールを失ったら初めからディフェンディングサードまでリトリートし、低い位置にブロックを組むことだ。これにより組織的な守備からボールを奪い返し、ロングカウンターをめざす。そんなプレー原則に基づいた戦い方もある。

 粘り強い組織守備が得意なチームなら、こっちを選択するのもアリだろう。ただしこのプレー原則を選ぶ場合は、そもそも元になるゲームモデル自体が私のチームとは異なることになる。

ポゼッションとカウンターをどう使い分けるか?

 また私のチームは状況に応じてポゼッションとカウンターを使い分ける。ゆえに選手には状況を読む力が求められる。

 例えば敵ががっちりブロックを作り、守備態勢を整えている場合には、あわてて攻める必然性がない。そこでこんな局面では、ポゼッションによる遅攻を選択することがプレー原則になる。じっくりボールを動かし揺さぶりをかけ、オーバーロード等で敵のゾーンにギャップを作ってから(敵の陣形にほころびを作ってから)フィニッシュに行く。

 一方、ボールを奪った時点ですでに敵の守備隊形が崩れている場合は、一気に攻め崩すチャンスだ。そこでこの場合なら、速いカウンターを選択することがプレー原則になる。ざっくりいえば、ポゼッションとカウンターの使い分けはこんなふうになる。

プレー原則が違えば別のチームになる

 少し話を戻そう。さあ、我々はボールを失った。そのとき、その場で集団でのゲーゲンプレッシングをプレー原則とするのか? それともディフェンディングサードまでリトリートすることをプレー原則とするのか? それによってチームとしてのふるまいは180度ちがってくる。

 そもそもボールを失ったとき、個人の裁量でめいめいがバラバラな動きをするのでは収拾がつかない。意思統一が必要だ。そこで上に書いたように「その局面ではゲーゲンプレッシングしましょう」というような最低限のプレー原則を決めておく。で、意思統一して有機的にチームとして動こう、ということだ。

 こんなふうに局面に応じて最低限の原則を決めておくだけだから、プレー原則は別に選手を縛るモノでも何でもない。「守備の時にはチャレンジ&カバーを心がけましょう」みたいな基本と同じだ。

 こうしたプレー原則まで否定するなら、もはや「戦術などという選手を縛るものは必要ない」というのと同じだ。それではサッカーにならないだろう。

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