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すちゃらかな日常 松岡美樹

積極財政などの政治経済をすちゃらかな視点で見ます。ワクチン後遺症など社会問題やメディア論、サッカー、音楽ネタも。

【J1第19節】首位・FC東京は永井を生かすゲームモデルを確立せよ ~FC東京0-3川崎F

2019-07-15 08:16:38 | Jリーグ
このままでは貯金を吐き出すだけだ

「久保効果」で首位に躍り出たFC東京は、久保建英がいなくなったあとどんなサッカーをやっているのか? そんな興味でJ1リーグ第19節、対川崎フロンターレ戦を観戦した。すると相手が悪かったせいもあるが、想像以上に深刻な状況だった。

 いったい何をやりたいのか、見ていてまったくわからない。恐らく彼らには確たる羅針盤がなく、自分たちが何をすべきかわかってない。ピッチで漫然と「ただ困っている」だけなのだ。

 川崎Fがパスを繋いでポゼッションし、FC東京は4-4のブロック守備からカウンターを狙う、という展開に見えた。だがFC東京にはボールを奪ってからの手立てがない。展開力のないFC東京は、逆にボールを持たされると途端に組み立てに詰まるのだ。

 最終ラインからビルドアップするわけでもなく、かといってロングボールを入れこぼれ球を狙うわけでもない。サイドを使う意図もほぼゼロ。ポジティブ・トランジション(守→攻の切り替え)時のアイディアがない。ただ最終ラインが意味もなくボールを持ち、困っているだけなのだ。

 当然、そこに川崎Fの第1プレッシャーライン(FW)がプレスをかけ、ボールを奪われる。で、カウンターを食らう。この繰り返しだった。たまたまボールを前へ持ち出せたケースではフィニッシュへ行く場面もあるが、確たるコンセプトに則ってやってるわけではない。そんな印象だ。いい意味での「自分たちのサッカー」がないのである。

縦に速いダイレクト攻撃をすべきだ

 では、FC東京はどんなサッカーをやるべきなのか? まず現有戦力から考えれば、最終ラインから丁寧にビルドアップし、ポゼッションするような戦い方は向いてない。というか、できない。

 まずボールの収め所がない。代表の大迫のように強力なポストプレイからの落としで、MFに前を向いてボールを持たせてやれるFWはいない。中盤にも、フィジカルを生かしたボールキープで時間を作ってくれる選手がいない。チーム全体にボール保持力がないため、そんな細かいことをやろうとしても潰されてしまう。

 ただ反面、このチームには速いFW(永井謙佑)と上手いFW(ディエゴ・オリヴェイラ)が2人いる。アタッキングサードにおける破壊力はある。ならば、速いタイミングでファイナルサードにクリーンなボールを送り込むダイレクト攻撃が向いているはずだ。

 例えばラインを低く構えて相手にボールを持たせ、速いカウンターを狙う。このとき引きつけている敵の最終ラインの背後には、膨大なスペースがあるはずだ。そこでボールを奪えば速い切り替えから正確なロングパスをライン裏に落とす。で、スピードのある永井を走らせる。あるいは機動力豊かなSB室屋のいるサイドを徹底して使い、早めにサイドから勝負のアーリークロスを入れる。そして強力な2トップの瞬間的な破壊力に賭ける。そんなゲームモデルである。

正確なロングパスを蹴れる森重を生かせ

 そもそもCB森重はハリル時代の日本代表で、絶妙な長いサイドチェンジのボールや、前線の選手の足元に正確につけるロングパスをバシバシ出していた。なのに今はそんな気配すらない。なぜやらないのか?

 例えば森重とは逆のサイドのFWをタッチライン際まで開かせ、そこに精度の高いサイドチェンジのボールを入れる。これで次の瞬間にはアタッキングサードでボールをキープできるのだ。ロングボールを入れれば、もし競り合いになっても敵の最終ラインは裏を警戒して下がる。するとDFとMFの間にスペースができ、バイタルエリアが空く。こぼれ球を拾えばそこを狙える。これは大きい。

 現状のように最終ラインからボールを引き出せず、自陣でボールを失いカウンターを浴びるのとくらべれば天と地の差があるはずだ。長谷川監督には、ぜひそんな現有戦力の武器と個性を生かすゲームモデルを確立してほしい。

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【神戸・リージョ監督辞任】「バルサ化」という名の無謀

2019-04-19 08:44:22 | Jリーグ
絵に描いた餅に踊るメディアとオーナー

 ヴィッセル神戸へのイニエスタの劇的な電撃加入から始まり、リージョ監督就任、ビジャ加入、という一連の豪華リレーをずっと冷ややかな目で眺めていたが……今回のリージョ監督辞任である。「やれやれ、やっぱりか」という感じがする。

 Jリーグの1チームを、日本人が三度の飯より大好きなバルセロナに変えようーー。そんな、いかにも電通あたりが考えそうな広告効果の高い無謀なプロジェクトである。いったい実現する可能性なんてあるのだろうか?

 例えばイニエスタの存在ひとつとってもそうだ。

 むろんイニエスタは尊敬すべき偉大な選手である。

 だが例えばJリーグ創成期にアントラーズをチャンピオン・チームにしたジーコや、王者ヴェルディに君臨したビスマルク、ジェフ市原を劇的に変えたリトバルスキーらのようなチームへの多大な貢献を彼が成し遂げたといえるだろうか? せいぜい商売目的でメディアが持ち上げ、ネタにする程度に思える。

 裸の王様・三木谷会長が掲げる「バルサ化」という壮大な絵に描いた餅の行きつく先は、いったいどこなのだろうか? まさか紆余曲折したあげくにクラブ解散、なんてことにならないよう祈りたい。

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【高校サッカー・決勝】高校離れした「個の力」 〜前橋育英1-0流通経大柏

2018-01-09 07:18:09 | Jリーグ
速いボールスピードで前橋が圧倒

 正確なパスの繋ぎと前線の選手の圧倒的な「個の力」で、試合は前橋育英が終始ペースを握った。流通経大柏は守備は固いが守ってばかりで鋭いカウンターがあるわけでもなく、勝者にふさわしいのは明らかに前橋だった。だが敵の堅固な守備にあい点が取れない。後半アディショナルタイムに決勝ゴールをこじ開けたときにはホッとした。なかなか熱い試合だった。

 前橋育英の怒涛の攻撃を、ローブロックで堅陣を敷く流通経大柏が受け止める展開が続いた。前橋は盛んにポゼッションして攻め立てるが、ゴール前に人垣を作って守る敵の前にゴールが割れない。前橋の攻撃と流経大の守備がガッチリ噛み合った好ゲームだった。

 それにしても前橋育英の速いボールスピードには驚いた。彼らは下手なJリーグの選手より強いパスが出せる。狭いエリアでちょろちょろと弱いショートパスばかりを交換したがるJリーグとはえらい違いだ。「育成の効果が出てきてるんだな」と安心した。

 前の選手の技術の高さと破壊力にも感心させられた。流通経大柏の集中守備をかいくぐり、左サイドをうまく使って「ここ」というところにズバリとパスを突き刺す。高い「個の力」が圧倒的だった。

 一方の流通経大柏にもチャンスはあった。だが頻度があまりに低い。固い守備から、相手が前がかりになったところを突いてもっと速いカウンターを何度も繰り出せれば勝機は見出せた。だがせっかくボールを奪ってもパスがほとんど繋がらない。課題は攻撃だろう。

 いずれにしろ、強くて速いパスが出せる前橋育英に日本サッカーの明るい未来を見せてもらった試合だった。

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【天皇杯・決勝】熟成する鹿島の「逃げ切り芸」 〜鹿島2-1川崎

2017-01-02 11:03:49 | Jリーグ
金崎抜きの「飛車落ち」でも鹿島が勝つ

 相手にボールを持たせてカウンターを狙う4-4-2の鹿島アントラーズと、グラウンダーのボールをつなぐポゼッション型3-4-3の川崎フロンターレが天皇杯決勝で激突した。噛み合わ的には理想的な対戦だ。

 鹿島は前半41分に右コーナーキックから、戻りながらの難しいヘディングシュートを左SB山本脩斗が決めて1点先制。すると川崎は後半頭から3バックを4バックに変え追撃態勢に。その川崎は後半8分、FW小林悠が縦パスをスルーすることで鹿島のCB昌子を食いつかせて作った敵ゾーンの穴に自ら入り込み、きれいなシュートを左スミに決めて1点。両者1-1で譲らず延長戦に突入した。熱戦だ。

 すると鹿島は延長前半にゴール前へのロビングから途中出場のファブリシオが決め2-1とリード。これで勝ちパターンに入った鹿島はすかさず自陣に4-4のブロックを固めて試合を殺した。デキは必ずしもよくないながらも、鹿島には「より1歩」強く寄せる粘りのディフェンスがある。リードするや守備を固めて試合を終わらせる鹿島の「逃げ切り芸」が鮮やかに決まった一戦だった。

川崎は前半に2度のビッグチャンスを逃す

 前半、勢いよく攻める川崎を鹿島は受けて立った。川崎は前半に2度のビッグチャンスがあったが決められず、逆に鹿島はセットプレイからしぶとく先制する。攻められながらも結局しっかり点を取るのは鹿島である。実質的にはこの前半で「勝負あった」といえるだろう。

 1点リードした鹿島は後半頭から自陣にブロックを作り、相手を待ち受けるゾーンディフェンスに変える。後半に追いつき1-1とした川崎は、結局は鹿島を引き立たせるための咬ませ犬になってしまった。川崎は前半に2度もあった決定的なチャンスをものにできなかったのが最後まで響いた。あれを決めていれば川崎にも十分勝つチャンスはあった。だが勝負に「タラレバ」はない。

 この日、川崎のFW小林は非常にキレており、前半にエウシーニョのポストプレイから小林にビッグチャンスが回ってきたが決められなかった。小林は意味もなくシュート態勢が崩れてしまったが、なぜあそこでしっかり打てないのか? あのシーンには、ゴール前でパニックに陥る日本人選手の決定力不足の原因が隠されているように感じた。小林はこの日、決定機をキッチリ決めていれば3点取れたはずだ。

鹿島は堅守速攻・逃げ切り型の試合運びを完成させた

 立ち上がりに両チームの激しい前プレから始まった試合だったが、川崎に1-1とされた後半途中から、相手ボールになると鹿島は全員が自陣に引いた。川崎がボールを握っているように見えるが、実は鹿島のペースだ。かさにかかって攻める川崎を鹿島は粘り強くいなし、延長前半でとどめを刺した。川崎には、延長前半で失った1点を取り返すメンタルがもう残ってなかった。

 鹿島の2点は、セットプレイと縦ポンのロビングからだ。鮮やかな攻めの形を見せたわけでも何でもない。だがそれでも気がつけば最後にお立ち台に立っているのはアントラーズである。結局、最後は逃げ切りパターンに入った鹿島の横綱相撲で幕を閉じた。

 準決勝に引き続き3バックで試合に入り後半4バックに変えるなど、川崎の風間監督は策に溺れた印象だ。逆に鹿島の石井監督は、お家芸である堅守速攻・逃げ切り型のうまい試合運びを熟成させた。Jリーグ・チャンピオンシップからクラブW杯、天皇杯と、狙ったゲームプラン通りに試合をハメる経験を積んだ鹿島はいま、無敵の「王国」を作りつつある。

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【天皇杯・準決勝】これがJリーグで2位のチームなのか? 〜川崎1-0大宮

2016-12-31 07:35:13 | Jリーグ
負けた大宮の熱い魂に拍手を

 Jリーグで年間勝ち点2位の川崎フロンターレは、攻めの歯車がまったく噛み合わない。特に前半はマイボールになっても周囲が動き出さず、まるで消化試合のようなありさまだった。「金を返せ」と客が暴動を起こさないのが不思議なくらいだ。

 敵に張り付かれたままオフ・ザ・ボールの動きがない。間受けするためゾーンのギャップへ4歩移動することさえしない。ルーズ・ボールへのアクションも常に大宮アルディージャが先手、先手だ。最終ラインでボールをキープした時も3バックが開かずたがいの距離が近いままなので前への角度を作れず、うまくビルドアップできない。

 一方、負けた大宮はいいところばかりが出た。4-4-2で守備を重視したベーシックなサッカーだが、「勝ちたい」という気持ちを全面に出す。ひとつひとつのプレイに気持ちが入り、ソウルフルで力強かった。そんな大宮が終始ペースを握り、彼らの精力的な守備が川崎をしっかり押さえ込んだ。

 スッポンのように敵に吸い付きパスコースを消す。相手ボールホルダーに1歩でも近く寄せてバランスを崩させる。これを90分間、止まらず続けるのだから川崎はたまらない。

 攻撃面でも、大宮は何度もシュートシーンを作った。全員がよく走り、スペースへ、スペースへと労を惜しまず動いてパスをつなぐ。無骨で美しいサッカーとはいえないが、機動的でガッツのある攻めは迫力があった。

 後半は4バックに変えた川崎がリズムをつかみ攻める頻度が増えたが、それでも大宮は全員が必死で自陣に引いて弾き返す。だが惜しいかな、大宮はあまりにもチャンスを逃しすぎた。決定機を何度も手放すうち、幸運の女神はおずおずと大宮から離れていった。

 そして最後はどん詰まりの後半40分。川崎・中村憲剛の右コーナーキックから谷口彰悟に押し込まれて万事休す。チャンスを生かせないと痛いしっぺ返しがくる、という教訓を絵に描いたような展開だった。大宮は絶対的なストライカーが1人いればおもしろくなりそうなチームだと感じた。

 それにしても前半にあんなみっともない試合をサポーターに見せた川崎はとくと反省してもらいたい。あれではJリーグからお客さんが逃げる一方だ。「これだからJリーグは」などと海外サッカー・マニアに言われないよう、決勝ではしっかり魂を見せてほしい。

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【天皇杯・準決勝】冴え渡るカウンター、受け流す技術 〜鹿島2-0横浜FM

2016-12-30 11:36:10 | Jリーグ
相手の攻めを「いなす」鹿島の独壇場

 SBを高く上げサイドから攻める鹿島アントラーズと、ドリブルからフィニッシュに行く横浜F・マリノスという対照的な対戦になった。鹿島はいずれも得意なカウンターから2ゴールを上げ、守っては横浜FMの波状攻撃を堅い守備で柳のようにサラリと受け流す。終わってみれば2-0と鹿島の「大人の試合運び」が光った試合だった。

 鹿島のシステムはベーシックな4-4-2だ。攻撃時には両SBを高く上げて基点を作る。そのためボールが中盤にあるときは2-2-4-2、ボールが前線に渡ると2-2-2-4のような形になってフィニッシュへ行く。一方のマリノスは4-2-3-1だが、相手ボールになるとリトリートして4-4-2のブロックを組んで守る。攻めはマルティノスと斎藤学が軸になり、主にドリブルからラストパスを出す形だ。

 マリノスはドリブルを交えポゼッションして攻めるが、決定機はあるものの鹿島の堅い守備に弾き返され決めることができない。鹿島はまるで剣の達人のように相手の攻めをサラリといなす。そしてボールを奪うと得意の速攻だ。前半41分にはカウンターから鹿島がチャンスを作り、最後はMF柴崎岳の右からのクロスをFW土居聖真がヘッドで決めて1点目をあげる。

 続く後半28分には、マリノスの致命的なタテへのミスパスをカットした鹿島がまたもカウンターを発動。MF永木亮太のスルーパスが入り、最後は柴崎の右からの折り返しを途中出場のFW鈴木優磨が決めた。

 鹿島はこのようにカウンターのチームだが、ひとくちに「堅守速攻」といっても自陣にべったり引いているわけではない。最終ラインを高く保ち、コンパクトな陣形から全体のゾーンを圧縮してボールを奪う。またワンプレー、ワンプレーの精度が明らかにマリノスより上で、ミスが非常に少ない。

 鹿島の選手はフォームも美しく、プレー時にしっかり腰が入っている。足先だけの軽いプレーが目立つマリノスとは対照的だった。マリノスにもチャンスはあったが、結局は鹿島のゲームプラン通りに進んだ横綱相撲といっていいだろう。

 最後に、個人的に注目しているマリノスの斎藤学について。彼のキレのあるドリブルはJリーグでは通用しているが、問題は世界に出たとき武器になるかどうかだ。彼はこの日、4〜5本のシュートを打ったが決められなかった。鋭いドリブルからラストパスやシュートに行く彼のスタイルは非常に魅力的であり、決定力さえ磨けば日本代表におもしろい選択肢をもたらす選手になりそうだ。

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【サッカー】日本人は「純粋まっすぐ君」から卒業すべきだ

2016-12-28 15:27:15 | Jリーグ
ズル賢い奴ほど試合運びがうまい

 この年末のサッカー・イベントには、まったく考えさせられた。

 いかにも日本人らしく真っ直ぐ「純粋」に散った浦和レッズ。

 うまい試合運びでチャンピオンシップをしぶとく勝ち残り、クラブW杯でも名を残した鹿島アントラーズ。

 この2チームの対比はあまりにも鮮やかだ。日本人は浦和的なよくいえば「正々堂々」、悪く言えば「純粋まっすぐ君」のメンタリティから卒業し、鹿島のようにズル賢くしぶとく戦えるようにならなければならない。そうでなければいつまでたっても「世界」に手が届かない。

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【クラブW杯決勝】延長戦にもつれ込む壮絶な死闘 〜レアル・マドリー4-2鹿島

2016-12-19 08:25:25 | Jリーグ
ジーコが作った魂は生きていた

 FIFAクラブW杯決勝戦。鹿島があのレアル・マドリードを土俵際まで追い詰めた。後半7分には柴崎岳がミドルシュートを叩き込み、2-1とリードすると同時に待ち受けるディフェンスに切り変え勝ちパターンに持ち込んだ。延長前半のロナウドの2発で逃げ切られたが、打たれても打たれても立ち上がり、ファイティングポーズを取り続ける鹿島の姿には胸が熱くなった。

 ハイプレスで試合に入った前半の鹿島はボールを奪うが安定して繋げず、ロストボールが目立った。またクリアが短くトラップは緩く、パスが弱い。ワンプレー、ワンプレーに出る個の技術が甘く、客観的にレベル差をいえばレアルとは当然かなりの開きがあった。だが「勝負」という意味では確実に鹿島に脈があったことも事実だ。

 実際、鹿島は後半7分に柴崎が2点目を取り、2-1として待ち受けるディフェンスに変えたあたりではハッキリ勝ちパターンに入っていた。彼らのゾーンディフェンスはレアルに対し機能し、美しいディアゴナーレが組み上がっていた。ヒリヒリするような緊張感だった。

 そもそも後半45分にファウルを犯したDFセルヒオ・ラモスは本来なら2枚目のイエローカードで退場になるはずであり(だがビデオ判定もなし)、そうなればレアルは延長戦を10人で戦うことになり勝負の行方はまったくわからなかった。延長前半のロナウドの2発もなかったかもしれない。

 ただし鹿島は後半13分、ファウルを取られPKになり2-2の同点とされたが、あそこはファウルでなく技術で止めなければならないのだろう。この種の足りない部分がやはり随所にあり、その意味ではまだまだ研鑽の余地がある。特に手付かずの「個による守備の技術」については日本のチームはこれから身につけて行く必要がある。このほか今後の課題としてはボールスピードの弱さやプレイ強度の不足、サポートの遅さなども目についた。

 一方のレアルは第一にコンディションがあまりよくなく、第二に気を緩めて試合に入ったのが響いて接戦にもつれた、という要素はある。実際、褒められたデキではなかった。特にロナウドは本調子でなかったが、鹿島に逆転されたあとのPKと延長前半に突き放す2発のゴールは「さすが」と感じさせた。

 いずれにしろ、あまりの興奮で客観的に記事を書ける段階にない。特に柴崎が2点目のミドルシュートを叩き込んだ瞬間には頭に血が上り興奮して涙が出た。2ゴールの柴崎だけでなく神がかりなセービングを連発した曽ヶ端や何度もピンチを救った昌子、インテンシティが高い金崎あたりは明日からすぐ代表レギュラーになってもおかしくないんじゃないか? ハリルはこの試合をどう見たのだろう。それが知りたい。

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【クラブW杯決勝・展望】レアルを前がかりにさせカウンターで仕留める

2016-12-18 08:15:51 | Jリーグ
カギは0-0のままどこまでやれるか?

 さていよいよFIFAクラブW杯決勝戦。今夜はわくわくモンの鹿島vsレアルの試合だ。鹿島にはぜひとも日本の代表として、拮抗したいい試合をしてもらいたい。そこで試合の展望である。

 レアルにひと泡吹かせるには、いかに相手のバランスを崩すか? がカギだ。この場合のバランスには、2つの要素がある。まずフィールド上における選手の配置という意味でのバランスと、次に心理的なバランスである。これらを崩してしまうのだ。

 鹿島は守備を重視したうまい試合運びが得意だ。準決勝のアトレティコ・ナシオナル戦の後半に見せたようないい守備さえできれば、いかにレアルといえどそう簡単には得点できない。で、0-0のままジリジリするような試合展開に持ち込めれば、必ずレアルに焦りが出てくる。つまり心理的なバランスが崩れる。

「おかしいぞ。俺たちのほうが圧倒的に強いはずなのに点が入らない」

 こうなるとレアルはリスクを冒し、得点を取ろうと前がかりになる。準決勝でアトレティコ・ナシオナルがそうだったように。

 かくてレアルは精神的バランスだけでなく、フィールド上のバランスを自ら崩して攻めてくる。彼らが前がかりになれば、後ろにスペースができる。その形になったら鹿島の得意なカウンターのチャンスだ。彼らはこの形からどうすれば点が取れるか、知りつくしているーー。

 とすればやはり、鹿島がどこまで失点せずに0-0のまま持ちこたえられるか? がポイントになる。それができればジャイアント・キリングもあながち夢じゃない。

 個人的な希望としては、FW鈴木優磨が点を取り、ロナウドが見ている前でロナウドのゴールパフォーマンスをして1-0で鹿島が勝つこと。これが実現したら来年は春から縁起がいいな。

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【クラブW杯】鹿島がうまく試合を殺した 〜鹿島3-0 A・ナシオナル

2016-12-15 10:06:04 | Jリーグ
ゴールマウスに魔法をかけた11人

 FIFAクラブW杯の準決勝。南米王者のアトレティコ・ナシオナル(コロンビア)に1-0でリードした鹿島は後半、ブロックをやや低くして待ち構える守備で試合を完全に殺した。攻めてはカウンターから追加点を奪って突き放す。前半は降り注ぐ敵シュートの雨あられを耐え、ゴールマウスに魔法をかけた。

 PKからの先制や後半に見せた守備重視のうまい試合運びなど、終わってみれば3-0と鹿島らしい狡猾さが光った。さあ日本チーム史上初の決勝進出。おそらく次はあのレアルだ。ジーコが作った「鹿島魂」をとくと見せてもらおう。

 リードした鹿島ほど強いものはない。後半は敵のパス&シュートコースを巧妙に消し、粘り強い守備からボールを奪うと前がかりになった敵の背後をカウンターで襲う。前半は相手の個人技の前にいつ失点してもおかしくなかったが、後半はまさに鹿島の横綱相撲だった。特に昌子と植田の守備が光った。

 アトレティコは細かくパスをつないでくるポゼッション・タイプだ。最終ラインから丁寧にビルドアップしてくる。特に前半は鹿島ゴール前で彼らの個人技が輝きを放った。だがシュートがバーを叩くなど、何度打ってもゴールに入らない。

 個の力では圧倒的にアトレティコが上。だが鹿島のようにしぶといディフェンスをベースに戦えば日本人でも「世界」に勝てる。鹿島が大きなヒントをくれた一戦だった。

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【CS決勝第2戦・分析】何が浦和レッズを崩壊させたのか?

2016-12-05 08:56:42 | Jリーグ
攻めるしかないチームのこわさ

 Jリーグ・チャンピオンシップ(CS)決勝第2戦は、厳しい心理戦だった。

 条件はもちろん、第1戦で勝っていたホーム・浦和レッズのほうが有利なはず。アウェイゴールも含め、すべての環境が浦和に微笑んでいた。だが、あとがなく「行く」しかない鹿島が勝ち、攻めるのか守備的にやるのか迷いが生じた浦和が敗れた。選択肢のない土壇場の状況が鹿島の選手を思い切りよくプレーさせ、逆に試合の進行とともに浦和は歯切れが悪くなって行った。

 そんなメンタルの差が鹿島伝統のしたたかさと勝負強さを引き出し、次第に浦和を心理的に追い詰めて行ったーー。ひとことでいえばそんなゲームだった。終盤のパワープレイをめぐるドタバタが、この日の浦和の「心の混乱」を象徴していた。

戦い方がわかりやすかった鹿島

 追い込まれた鹿島は戦い方がわかりやすかった。やるべきは2点取ること。ゲームプランがはっきり明確だった。そのぶん強い求心力が働きやすく、目標達成をしやすくさせた。逆に攻めるのか、守るのか下手に選択肢があるぶん浦和のハードル設定はむずかしく、それが鹿島を後押しした。この試合は個々のプレイのディテールよりむしろ、そんなメンタルの戦いだった。

 もちろんゲーム以前に年間1位の浦和には、チャンピオンシップですべてが決まる割り切れないレギュレーションと向き合い、葛藤し、まず心で打ち勝っておく必要があったことも無視できない要因である。

鹿島のハイプレスが浦和を圧迫した

 また浦和には物理的なプレッシャーもかかった。

 この日、攻撃的に行くしかない鹿島が前線から積極的にハイプレスを仕掛けてきたため、浦和は心理的に強い圧迫を受けていた。前から激しくプレッシングされ続け、浦和の選手はせわしなく、落ち着きないプレーに追い込まれた。

 例えばずる賢くバックパスを使って最終ラインでボールを回し、時間をうまく使ってゲームを落ち着かせるような試合運びをするのが浦和にはむずかしかった。終始チャレンジャーである鹿島の影におびえ、自分たちのペースで試合ができなかった。

 この心理的プレッシャーが試合のあらゆる局面で強く作用し、最後は足を伸ばせばボールに届いた鹿島と、届かなかった浦和との差を作り出した。フットボールは戦術やフィジカル以前に、メンタルで6割が決まるのだ。

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【Jリーグ・CS決勝第2戦】ドーハの悲劇ふたたび 〜浦和1-2鹿島

2016-12-04 07:56:29 | Jリーグ
勝ち試合を勝ち切れ

 試合運びのまずさで初めてのW杯出場を逃した「ドーハの悲劇」を見ているかのようだった。

 カウンターを食らい、PKを取られたあの浦和の失点シーン。浦和は1-1のまま試合を殺せば優勝できるというのに、敵陣に7人もの選手がなだれ込み前がかりになっていた。

 なぜそんな必要があるのか? しかも時間帯は後半31分だ。もしハリルなら、守備的にゾーンを低くして自陣にブロックを作る時間帯だっただろう(そして世間の非難を浴びるのだ・笑)。すべては「守りに入るのは悪だ」という純粋無垢な日本人ならではのメンタリティゆえ。ズルさがない。

 ドーハの悲劇では最後のロスタイムに失点し、94年アメリカW杯出場を逃した。

 あのときも「日本の選手はコーナーに向かってドリブルするなど、うまく時間を使うべきだった」などと世間の批判を浴びた。だがラモス瑠偉は89分50秒にリスキーな縦パスを入れ、カットされて失点の要因を作った。勝ち試合を勝ち切るための試合運びがずいぶん議論された記念碑的なゲームだった。

 Jリーグは、あの20年前のドーハの悲劇からまったく進歩してないのだろうか?

 愕然とさせられた試合だった。

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日本のサッカー界はマナウスより「温室」だ

2016-07-06 19:46:52 | Jリーグ
Jリーグは終身雇用制か?

 以下は、英アーセナルに移籍が決まったFW浅野(広島)のコメントだ。

「いつの日か広島に戻ってきて、新しいスタジアムで広島のあたたかいサポーターとともに戦いたい」

 で、広島も「いつでも戻ってこい」と言うんだろう。終身雇用制が保証されてる。ふつうのサラリーマンよりラクな転職だ。ぜんぜんリスクを取ってない。こんなメンタルじゃ移籍したって芽が出ないだろう。

 道理で日本代表はいつまでたってもワールドカップで勝てないわけだ。

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【JリーグCS】スピードは力なり ~広島1-1G大阪

2015-12-08 15:38:04 | Jリーグ
 Jリーグ・チャンピオンシップ決勝第2戦は、思い切りのいい広島・浅野の躍動がすばらしかった。

 スピードのある彼が前のスペースめがけて走り始めると、何かが起きる予感が漂う。ぜひまた日本代表で見てみたい。

 なんだか森保ジャパンを期待させる一戦だった。

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【JリーグCS】見習うべきは「大きなサッカー」か? ~G大阪2-3広島

2015-12-03 14:32:27 | Jリーグ
広島が粘りと決定力を見せた

 Jリーグのチャンピオンシップ決勝第1戦は、対照的なスタイルのチームによる組み合わせになった。徹底したサイド攻撃と放射状の浮き球のパスで組み立てる「大きなサッカー」の広島と、グラウンダーのショートパスを足元に繋ぐ「小さなサッカー」のガンバ大阪だ。

 広島はボランチの青山を経由してビルドアップし、彼がダイアゴナルなパスを左右に振って最後はサイドからクロスで仕上げる。また相手ボールになるとリトリートし、両WGが下がり5-4-1の形になって守備をした。

 広島は終始、ガンバにリードされる展開になったが最後まであきらめず、土壇場で決めるところを決めた決定力はさすが。特に途中出場した右サイドの柏は印象的だった。

 日本代表が見習うところがあるとすれば広島のほうだろう。

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