♠ 殻ちゃん~31回 ♠
はじめてQA会へ行った日の帰路、「この夏は旅行できないね」と殻ちゃんが言い、「川上先生のおかげだね、帰ったらお礼のメールを送る」とアキが言っただけ。家に戻ると殻ちゃんはすぐに勉強を始めた。いつものように7時に2人で夕食、8時半に水口が帰宅した。
水口▲「明日から夏休みだね。いつ三陸へいくの?」 夕食を食べながら言う。
アキ▼「それどころじゃない。成績表見てショック、奈落の底に落とされちゃった」 アキは今日の午後のことを水口に話す。隣室で殻ちゃんが勉強しているので声をひそめて。
水口▲「阿部先生か。首相みたいな男だと困るよ」と笑いながら言う。アキも笑う。
アキ▼「QA会の費用は大丈夫。鈴鹿ひろ美さんから頂いたお金があるから」。 1か月前から腰痛の鈴鹿さんの家事をアキは手伝っている。買い物、掃除、料理、服の手入れやアイロンかけなど、来月からテレビの連続ドラマに出演するひろ美は、「しばらく私をサポートしてね」と彼女のブランドのバッグをくれた。その中の封筒に「ありがとうアキ」そして10万円。
夕食を終え新聞をひろげた水口にアキはQA会で会ったタワーくんのことを話す。神山中学に合格と同時にQA会に入り1月期の主要科目の先取りをしている。しかしその子がユイの息子だとは言えない。ユイはいまファッション・アドバイザーとして活躍している。アキが15年前タレントだったことは誰も知らない。ユイは昔よりキレイになり洗練されたいい女。しかも息子の塔もカッコよく勉強もできる。ユイと自分との差。その差を水口に知られるのはイヤだ。すごくイヤなのだ。「差があるってことは苦しいなあ」と思う。11時過ぎ、殻ちゃんは眠っていた。枕元には阿部先生から頂いた明日のテストのための3枚のプリントが。
♠ 殻ちゃんは眠りの森に、成績のことは忘れていいよ朝まで
まだ続きます。 12月1日 松井多絵子
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