「地元へ帰ろう」
✿見たくない、花首たれた立ち枯れの後期高齢向日葵の列 (松井多絵子)
昨日、となりの町の公園をのぞいたら、立ち枯れの向日葵の列。まるで私のように見えてくる。すぐに公園を去る。枯れても生きる向日葵、いつまで生きるのかあの立ち枯れの向日葵は。そして、十年も会っていない歌友のことをおもう。「田舎ぎらい老女Z」を。
消息はわからないが彼女は後期高齢者になっているだろう。東京の人とばかり親しくしていたが
西日本のある田舎に生まれ育ったらしい。出身地をだれも知らない。彼女が出詠する歌は東京の生活、東京のことばかり。歌会では、地方の自然や生活を詠んだものが人気があるのに、決して郷里のことは詠わない。
ドラマ「あまちゃん」のなかで小泉今日子が口を尖らせて云った。「田舎が嫌いで飛び出したヤツ
って東京へ行ってもダメよね。逆にさ、田舎が好きな人って、東京へ行ったら案外うまくやれる」
このセリフに大いに共感する。「田舎ぎらい老女Z」は東京の人たちだけと付き合っていた。友達はたくさんいたように見えたが、特に親しい人はいなかったらしい。仲間たちから「老女Z」の消息を聞かれても、私も彼女の出身地さえ知らない。「あまちゃん」のなかで唄われる「地元へ帰ろう」がわたしは大好きだ。この、ゆったりした歌を彼女は聞いているだろうか。彼女の地元で。
9月14日 「地元へ帰ろう」を口ずさみながら 松井多絵子
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