熊本地震を詠む ①
昨日届いた「現代短歌新聞5月号」1面に▲平成二十八年熊本地震第一夜 浜名理香 の10首が載っている。地震発生から半月、昨日の朝日歌壇には熊本地震の歌はまだない。来週あたり辺から掲載されるだろう。今、この1連はリアルタイムの貴重な作品である。
熊本地震第一夜 浜名理香
本棚が壁より剥がれくる下を揺れながらうまく這うたることよ
スペアキー一本握りおとうさああん走る歩道が地割れしている
「保険証」「携帯電話」「車の鍵」入ったバッグそれさえあれば
横ゆれの余震きたるにうずくまりパジャマのひざに汗がしたたる
認知症の父にも分かる危機がありダウンジャケット首つめて着る
いざ父を負ぶって逃げるに良き紐を母の形見の箪笥を開く
お酒でもぬるめて飲みたい葉桜のおぼろ月夜と思ったものを
遠くより音はかすかに近づきて余震は走る仮寝の下を
以上は「現代短歌新聞5月号」に掲載された10首から8首を抄出した。地震が発生したのは夜9時すぎ、浜名理香は離れて住んでいる父の所へ駆けつける。地割れしている歩道を走り認知症の父の許へ。彼女の母はすでに他界し父は一人暮らし。これは地震が発生した夜の作品であり、その後はどうなったか。浜名理香の無事を祈るしかない。
浜名理香は昭和38年熊本生。石田比呂志に師事。平成元年より23年の終刊まで「牙」編集委員。歌集『月兎』 『風の小走り』 『流流』。 「石流」代表。
5月3日の朝刊・熊本地震の被害状況は死者49人、避難者2万20人、住宅の被害は全壊、半壊、一部破損など4万6630棟。どうか雨が降らないように。風が吹かないように。
5月3日 松井多絵子
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