ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

緑川ダム

2023-01-27 17:20:25 | 熊本県
2022年11月21日 緑川ダム
 
緑川ダムは左岸が熊本県下益城郡美里町洞岳、右岸が同町畝野の一級河川緑川にある多目的重力式コンクリートダムです。
熊本県中央部を東西に横断する緑川は古くから熊本平野を中心に流域の灌漑用水源として利用される一方、洪水や干ばつも多く特に1953年(昭和28年)6月豪雨は県下で300名近い死者が出る大惨事となり、抜本的な治水・利水対策が求められました。
1964年(昭和39年)に建設省(現国交省)の直轄事業による緑川への多目的ダム建設が採択され1970年(昭和45年)に緑川ダムが竣工しました。
緑川ダムは国交省九州地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、緑川の洪水調節(最大800立米/秒)、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、流域水田への新規灌漑用水の供給、熊本県企業局緑川第1~第3発電所での合計最大3万5140キロワットの発電を目的としています。
また、本堤の北側は鞍部になっておりダムの満水時には水が溢れてしまうため、副堤としてロックフィルの緑川補助ダムが建設されました。

緑川ダム周辺はレジャースポットとして各種施設が充実しており町営の『美里の森キャンプ場ガーデンプレイス』では多様なキャンプを楽しめるほか、日本初のダム湖を横断するジップトリップなどアウトドア施設が設置されています。
また補助ダム上流側はイベント広場となっており、県内有数規模のどんどん焼きもここで行われます。
ダム湖の肥後みどりかわ湖はダム湖百選に申請すれば間違いなく選ばれると思うんですが…

緑川ダムでは事前予約によりダムの堤体内を含む施設見学を実施しています。
今回、管理所のご厚意により飛び込みにもかかわらず施設見学の対応をしていただくことができました。
施設見学の詳細については別項
緑川ダム施設見学をご覧ください。

ダム下から
クレストラジアルゲート2門、その間にオリフィス高圧ラジアルゲート3門
右手は熊本県企業局緑川第1発電所(最大出力3万1700キロワット) 。


特徴的なゲート配置。
向かって右下の小さな穴は非常用放水管。


堤体は珍しい『Z』
よく似た堤体は富山の有峰ダムですが、あちらは『S』。


ズームアップ。


左岸管理所下の擁壁にはくまモンが描かれていますが・・・
描かれて10年以上経過し薄くなってしまいました。


右岸の繋留施設。


右岸上流から
こちらからも堤体がZ字になっているのがわかります。


天端から
右岸のこの細い管は灌漑用水路管とのこと。
既得灌漑用水になるのかな?


減勢工と緑川第1発電所
利水放流設備や低水放流設備は見当たらないので、発電放流で対応するのでしょう。


発電所の屋上にはくまモンの絵
市房など他の県企業局の発電所の屋上にも描かれています。


天端越しに管理所とダム湖の『肥後みどりかわ湖』
総貯水容量4600万立米、有効貯水容量3520万立米
総貯水容量は運用中のは熊本県のダムでは最大。
天端は車両の通行ができます。


左岸の屈曲点
下流に折れているので『カド』認定
カドの先にはエレベーター棟があります。

ちょっと見づらいですが、選択取水設備。


上流面
取水設備、ゲートが一望できる場所を探しましたが見つかりませんでした。
湖岸の木をちょびっとだけ切っていただければありがたいのですが…。


これは右岸フーチングから見た下流面
見学の際に撮ったもので、猛禽が羽を広げたようでかっこいい。


ダム直下から
これも見学の際に撮ったものです。
堤体から突き出た水圧鉄管を間近で見れる機会はなかなかありません。
しかもこの鉄管は直径5メートルと日本の水圧鉄管でも最大クラス。


上でも書きましたが、飛び込みにもかかわらず見学対応していただき感謝に耐えません。 

(追記)
緑川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2665 緑川ダム(1954)
左岸 熊本県下益城郡美里町洞岳 
右岸         同町畝野 
緑川水系緑川 
FNAP 
 
76.5メートル 
295.3メートル 
46000千㎥/35200千㎥ 
国交省九州地方整備局 
1970年 
◎治水協定が締結されたダム 


コメントを投稿