ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

塚原ダム(古園ダム)

2021-10-29 08:23:35 | 宮崎県
2021年10月18日 塚原ダム(古園ダム)
 
塚原(つかばる)ダムは左岸が宮崎県東臼杵郡諸塚村七ツ山、右岸が同郡美郷町西郷三ヶの二級河川耳川上流部にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なことから戦前から活発な電源開発が進められてきました。
耳川水系では九州送電(株)による電源開発が進められ、1929年(昭和4年)の西郷ダム・田代発電所(現西郷発電所)、1931年(昭和6年)の山須原ダム・山須原発電所に次いで1938年(昭和13年)に完成したのが塚原ダムです。
ここで取水された水は塚原発電所に導水され最大6万7050キロワットのダム水路発電が稼働しました。
塚原ダムを始めとした耳川水系の発電施設は日本発送電の接収を経て、1951年(昭和26年)の電気事業再編成により九州電力が事業継承しました。
 
塚原ダムの施工は『ダムの間』と称された間組(現安藤ハザマ)が担い、可動クレーンなどを用いた当時の世界最先端レベルの機械化施工が行われるとともに、玉石モルタルに替えて日本で初めて硬練りコンクリートによる打設が行われました。
また堤高87メートルは戦前着工ダムとしては最高を誇り、塚原ダムの成果が戦後の佐久間ダムへとつながったとも言われています。
これらの点を評価して大ダムとしては小牧ダムに次いで登録有形文化財に指定されるとともに、経産省による近代化産業遺産、Aランクの近代土木遺産にも選定されています。
 
諸塚村中心部から国道327号を西へ3キロ超走ると左手に半身の塚原ダムが姿を見せます。
『早く全景を見てみたい』と心が急かされます。
 
次のコーナーを曲がると期待に違わぬ景色が目の前に現れます。
クレストにずらっと並ぶラジアルゲートと戦前のダムでは珍しい直線状の導流壁
何よりも87メートルの堤高がこれが戦前のダムであることを忘れさせます。
 
2005年(平成17年)の台風14号では下流で大規模な山体崩落が発生し天然のダム湖が出現、塚原ダムのゲート近くまで水位が上昇したそうです。
 
クレストに並ぶ8門のクレストゲート
2009年(平成11年)にかけてゲートの改修が行われました。
 
クレストゲートに並んで設置された取水ゲート
凹凸になった天端高欄は万里の長城を模したと言われていますが、ゲート脇の小塔はむしろ西洋の城壁にも見えます。
一方恐竜の手のような逆S字の二本の空気孔が、ダムの堅牢な表情をほぐしています。
 
宮崎あるあるのダム名のついたバス停がここにもあります。
古園は塚原ダムの別名、でも円堤じゃなくて堰堤でしょ?
 
ダムの敷地は立ち入り禁止
管理事務所の背後にあるのはバットレスのバッチャープラント跡。
 
門扉には近代化産業遺産と登録有形文化財のプレート。
 
水利使用標識
ダム便覧では有効貯水容量は1955万5000立米となっていますが、その後堆砂が増え現在は1763万3000立米まで減っています。
 
上流面
奥にゴミや流木を取り除く作業船、手前に巡視艇が繋留されています。
 
発電用ダムと言うことでほぼ満水。
ダム湖の総貯水容量は3432万6000立米。
 
こちらはダムの下流2キロちょっとにある塚原発電所
Bランクの近代土木遺産です。
 
閣下と呼ばれる上椎葉ダムの下流にあるため、どうしても前座的な目で見られがちな塚原ダムですが、このダムの成果が戦後の佐久間ダムや黒部ダムへと続いたことを鑑みれば大ダムで2基しかない登録有形文化財指定も納得です。

2808 塚原ダム(古園ダム)(1726)
近代化産業遺産
左岸 宮崎県東臼杵郡諸塚村七ツ山
右岸      同郡美郷町西郷三ヶ
耳川水系耳川
87メートル
215メートル
34326千㎥/17673千㎥
九州電力(株)
1938年


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