ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

山ノ入ダム

2024-05-18 08:00:00 | 福島県
2016年4月10日 山ノ入ダム
2024年4月15日
 
山ノ入ダムは福島県二本松市渋川の阿武隈川水系山の入川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
阿武隈川左岸の旧安達町一帯は地域内を流れる中小河川を灌漑用水源としていましたが、渇水が多くその都度激しい水争いが勃発し安定した水源確保は地域農民の悲願となっていました。
1984年(昭和59年)に県営かんがい排水事業安達地区の灌漑用水源として山ノ入ダムが着工され、2004年(平成16年)に竣工しました。
併せて灌漑施設等の整備が進められ役550ヘクタールの農地への安定した用水供給が可能となりました。
ダムの管理は当初は安達町が、その後の市町村合併により現在は二本松市が受託しています。

山ノ入ダムはゾーン型アースフィルの主堤と均一型アースフィルの副堤で構成されますが、副堤は堤高14メートルのためダム便覧への掲載はありません。
またダム便覧では山ノ入ダムの集水はすべて直接流域と記されていますがこれは誤りで、豊水期にもともと水利権を有していた油井川の水をダムに導水貯留し、灌漑期に左右2系統の幹線水路で灌漑用水を供給します。
さらにダム便覧では『山の入ダム』と記載されていますが、『山ノ入ダム』が正しく、当ブログでもこちらを採用します。

山ノ入ダムには2016年(平成28年)4月に初訪、2024年4月に再訪しました。掲載写真はすべて再訪時のものです。
あだち湖と命名されたダム湖は湖岸の遊歩道が整備されるとともに、ソメイヨシノが各所に植えられ周辺有数の桜の名所となっています。
再訪時はそんな桜の真っ盛りに訪問することができました。
 
ダム下から
左岸を総延長275.7メートルの長大な洪水吐が流下します。
ダム直下へ通じる管理道路は立入り禁止。

 
洪水吐中段の放流設備
灌漑用水の大半は専用幹線水路を通じて受益農地に供給され、ここでは河川維持放流や水位低下放流が行われます。

 
堤高29.5メートル、堤頂長196メートルの主堤体
市が管理を受託するだけあり、下流面のほか周辺各所もきれいに草が刈られています。

 
天端は舗装されていますが車両は進入禁止。
徒歩のみ開放。

 
洪水吐導流部
目の前に見えるのは洪水吐の一端で、全長275.7メートルに及び導流部は右奥の道路まで続きます。

 
左岸の横越流式洪水吐。

 
事業着手がバブル直前だったこともあり管理事務所はモダンなデザイン
ただし、職員の常駐はありません。
右手は竣工記念碑。

 
管理事務所周辺には各種案内板等が立ち並びます。
こちらはダムの概要版。

 
かんがい排水事業の説明板。
絵が分かりやすい。


水利使用標識。

 
右岸の副堤を遠望。


天端から
左手は放流設備
1枚目、2枚目写真は洪水吐の一番先端から撮りました。

 
あだち湖と命名された貯水池は総貯水容量126万6000立米
集水はすべて油井川からの導水に依り間接流域となります。
湖岸の桜は満開、さらにダム湖越しに安達太良連邦が一望できる大絶景。
訪問したのが平日ということもあり、こんな絶景をほぼ貸し切り状態で堪能できました。

 
右岸から下流面。

 
上流面はロック材で護岸。
対岸には洪水吐と管理事務所。

 
管理事務所をズームアップ
事務所わきには斜樋があり取水設備機械室も兼ねています。

 
こちらは副堤の下流面
堤高は14メートルですが、堤頂長は160メートルあります。

 
副堤上流面はコンクリートで護岸。


初回訪問時も桜は見ごろでしたがあいにくの曇天。
そこで2度目の訪問は満開の桜に視界良好な晴天を選びました。
しかし、現地で広がる眺めは予想以上の大絶景。
当初の計画では山ノ入ダムの見学は1時間半程度でしたが、結局3時間以上居座ってしまいました。
その後の予定が大きく狂ったのは言うまでもありません。

(追記)
山ノ入ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0538 山ノ入ダム(0310)
福島県二本松市渋川
阿武隈川水系山ノ入川
29.5メートル
196メートル
1266千㎥/1259千㎥
二本松市
2004年
◎治水協定が締結されたダム