ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

吉ヶ平ダム

2024-05-09 08:00:00 | 福島県
2017年5月28日 吉ヶ平ダム
2024年4月13日
 
吉ヶ平(よしがだいら)ダムは福島県会津若松市湊町共和の阿賀野川水系原川左支流大清沢川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
会津若松市湊町は猪苗代湖西側の南北に延びる谷筋に位置しますが、猪苗代湖との間は山で隔てられ揚水技術のない時代は水利に乏しく、安定した水源確保は地域農家の宿願となっていました。
1964年(昭和39年)に大清水沢川源流にある陣馬湖という自然湖をダム化し灌漑用水源とする県営かんがい排水事業が着手、現地竣工記念碑では1969年(昭和44年)、ダム便覧では1972年(昭和47年)に吉ヶ平ダムが竣工し約600ヘクタールの水田への灌漑設備が整備されました。
ダムの管理は会津若松市湊土地改良区が受託し、ここで貯留された水はダム直下の頭首工で取水され吉ヶ平用水路を経由して受益農地に供給されます。
吉ヶ平ダムには2017年(平成29年)に初訪、2024年(令和6年)4月に再訪しました。
掲載写真はすべて再訪時のものです。
 
国道294号線から県道374号線に入ると吉ヶ平ダムを示す標識が現れます。これに従って左折すると右岸ダムサイトに到着します。
ダムサイトに建つ立入り規制板。


天端はダートですが車両の通行ができます。
かつては上流に数軒の集落があったようですが今は廃村。
下流面はきれいに草が刈られ今も貴重な水源であることが伺えます。

 
上流面は石積み護岸。

 
総貯水容量は125万3000立米と本州の農業用アースフィルダムとしては結構なサイズ。
向かって左側、ダム湖右岸沿いに別荘が並んでいます。
バブル期に別荘地として開発されたようですがデベロッパーはすでに破綻。
私有地のため立入り制限となっていますが、居住者がいるのかどうかは不明。

 
右岸の斜樋。

 
右岸の竣工記
一見監査廊入り口のような形状。

 
記念碑をズームアップ
裏面には諸元等の記載がありますが字が薄れて読み取り困難。

 
左岸の円形越流式余水吐
いわゆる『パイ生地型』。

 
余水吐の擁壁にはめ込まれた定礎石
こんなところに鎮座するのはちょっと珍しいかも?


ダム下に降りてみます。
堤体は犬走を挟んで2段、基部は石積みの擁壁。
手前側にわずかに雪が残ります。
左手のコンクリート構造物はドレーン施設。

余水吐導流部
一応ジャンプ台。


減勢工からそのまま大清水沢川となります。


右岸ダム下の底樋門
まだ灌漑期ではなく河川維持放流分だけ放流中。


すぐ先に頭首工の吞口が見えます。
取水された水は吉ヶ平用水路を経て約600ヘクタールの水田に灌漑用水を供給します。


ダムに至る道路が吉ヶ平用水路と交差しています。
非灌漑期なので水は流れていません。


0512 吉ヶ平ダム(1013)
福島県会津若松市湊町共和
阿賀野川水系大清水沢川
22.5メートル
190メートル
1253千㎥/1222千㎥
会津若松市湊土地改良区
1969年竣工(現地記念碑)
1972年竣工(ダム便覧)