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十握の剣(とつかのつるぎ)は鉄剣か銅剣か?

2020-08-26 07:19:35 | 古代と中世

出雲市駅通りには、出雲神話を題材に青銅のオブジェが設置されている。韓国では慰安婦像が幅をきかせるが、そんなものより歴史上の逸話・伝承をオブジェにして並べたらどうだ。

素戔嗚尊(すさのおのみこと)が大蛇(おろち)を斬った十握剣(とつかのつるぎ)は、別名で天羽々斬(あめのははきり)とか蛇麁正(おろちあらまさ)と呼ぶ。大蛇の尻尾から天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ 別名・草薙剣)を取り出す際に十握剣の刃先が欠けたという。その十握剣は鉄剣だったのか、それとも銅剣だったのか?・・・どうでもよいような噺が気になる。

出雲市駅通りのオブジェは原寸大にすれば、刃渡り40-50cm程度であろう。そして両刃の剣である。これであれば青銅剣の可能性が高いが、大蛇退治の舞台は奥出雲。奥出雲は古来砂鉄生産地で鉧(けら)は良質の鋼で鉄剣の材料である。そこで造られたであろう十握剣は鉄剣以外の何物であろうか。

『石上神宮旧記』によれば、天羽々斬は仁徳天皇の五十六年十月二十六日、物部首市川臣が勅を奉じて、布都斯御魂神社(ふつしみたまじんじゃ:天羽々斬剣の神気を布都斯御魂神という)を石上振神宮(いそのかみふるじんぐう)の高庭の地底の石窟のうちに収めた・・・とある。

世は明治にいたり、石上神宮・大宮司の菅政友は、その禁足地に踏み入り伝承の可否を発掘により調査した。出てきたのは素環頭太刀であった。先に示した刃先の刃こぼれもあったという。それは全長二尺八寸で約85cmである。

いわゆる十握剣は、握ったこぶしの幅で一握は8-10cm。従って十握剣は80-100cmとなる。青銅剣で1mもの長さは用をなさい、直ぐにおれてしまう。してみれば鉄剣であったのか? 八岐大蛇伝承をいつの時代と見るのか? 弥生期とみれば青銅剣、古墳時代であれば鉄剣であろう。

いずれにしても津田左右吉流の記紀神話は後世の作り話で、史実は何もないと全否定すれば、上述の噺は絵空事で終わりだが・・・。

<了>

 


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