新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

日米間のTPP交渉の行方は

2014-04-23 09:22:17 | コラム
アメリカ側だって結論を得ずにはいられまい:

甘利担当大臣は「TPPでは詰めに至るに未だ距離感を感じる」と語っていた。USTRにしたところで来日する大統領にむざむざと「纏めきれませんでした。悪いのは日本です」と報告できる立場にはないのではないだろうか。

報道からでは交渉の内容も進捗状況も知り得ないが、アメリカ側が私が常々指摘する"contingency plan"無しに交渉の場に臨んではいないかと推測する。そして、そのプランが譲歩なのか、妥協なのか、新たなる提案なのかも解る訳がない。だが、何らかの「腹案」くらいはあるだろう。

そこで、今まで"contingency plan"とは如何なるものかを細かく解説したことがないので、出来る限りのことを申し上げてみる。これを無理矢理に意訳すれば「玉砕を回避するための第二乃至は第三の矢」とでもなるだろうが、素直に言えば「安全弁」か「新提案の腹案」とでもなるだろうか。

これだけではハッキリとはしないだろうから、(アメリカン)フットボールの例を挙げて解説してみよう。フットボールは屡々「陣取りゲーム」に例えられるが、4回の攻撃権を与えられた側がその間に10ヤードボールの場所を前進させれば次の攻撃権を得られ続行できるのだ。この競技ではラグビーフットボールとは異なって「前方にパスを投げて良い」となっている。勿論、ボールを持って走るプレーもある。

このパスプレー(パス戦法)では司令塔と言われるクオーターバック(QB)がNo.1のレシーバー("intended receiver"等と言うようだ)に決めたターゲットを敵陣深くに走り込ませ、そこに向かって前にパスを投げるのである。勿論、守備側もそれに備えて1人ないしは2人にマークさせておく。そのマークが厳しい場合には、QBは予め決めてあったそれほど相手陣に深く入っていないNo.2のレシーバーに向かって投げようとする。

これが"contingency plan"である。フットボールではNo.2を"safety valve"=安全弁などと呼んでいるようだ。しかし、守備側も然る者で、ここもしっかりとマークしていることがある。そこで、QBが陣地をロスしない、言うなればそのための最後の手段が、QB自身がボールを持って少しでもヤードを獲得しようとして走る挙に出る。これは言うなれば第三の矢で"scramble"等と呼ばれている。

私はビジネスの世界での作戦というか"contingency"の文化をフットボールが採り入れているのだと思って見ている。即ち、アメリカのビジネスの世界では最初に打って出た作戦が失敗に終わって、そこでむざむざと玉砕することを避けるべく、代案乃至は安全弁的な作戦を準備して交渉の席に臨んで行くことが極めて多いと認識して置いて良いと思う。

私はそれ故にUSTRが"contingency plan"を持たず大統領の到着前に最終的会談の席につくものかなと思って眺めているのだが。

景気の先行きは

2014-04-23 08:31:47 | コラム
商社マンとの恒例の懇談会で:

彼は「消費税率引き上げ後の消費者支出の落ち込みは想定済みで目新しい悪材料でもないが、紙パルプ産業界の視点から見た景気の回復は未だしの感が深いと言わざるをえない」と先ず総論から入った。しかし、アメリカの紙パルプ業界の13年度の決算では大手メーカーを中心に増収・増益となっていたのは最低限の好材料であると指摘した。但し、この背景には長引く紙需要の低落傾向に対応してメーカーが設備能力を合理化、即ち削減したという厳しい現実があるのは確かだ。

YM氏が以前に「アメリカの経済学者の間で日本の製紙業界における設備の合理化と業界再編成の遅れを指摘されている」と語っていたが、彼のこの点には懸念を表明していた。だが、一致して意見は「合理化と再編成は必然的にリストラを意味するので、流通部門までに及ぼす影響が甚大だとメーカーも解っており、容易に踏み切れないのではないか」となった。

アメリカでは住宅産業に回復の兆しが見えるのは歓迎すべきことだが、既にYM氏が指摘したように中古住宅が売れだけでは紙パルプ業界には追い風とはならないのだ。即ち、住宅着工が漸く前年対比でプラスに転じたことはそれだけ製材品の需要が増加してことになって、W社などでは木材部門の好調が増収・増益をもたらしていたのだった。

輸入紙市場に関しては、彼は「ドル高・円安傾向が続く以上輸入紙の価格は高止まりどころか、現在のパルプ価格が値上がりした市況下では輸出価格を引き上げざるを得ず売れ行き不振で、一部の中国系メーカーの日本支社ではリストラすら始まっている模様だ」と述べていた。しかも「日本の国内価格もメーカーの努力にも拘わらず横ばいであり、東南アジア市場でも回復の兆しが見えていない」とのこと。

中国のMOの鉄鉱石輸送船の差し押さえの件についての彼の意見は、私の中国の我が国に対する野望を懸念するものとほぼ同様の見方をしていたのが印象的だった。この商社は早くから中国に注力していたので中国に関する情報量が豊富であり、何時も彼の中国についての情報を傾聴に値するものと思って聞いている。

為替レートの先行きについてはアメリカの景気が上向き傾向にあり、畏メル友・尾形氏も指摘されるようにシェールガス革命によりエネルギー源で優位にっているので、このままジリジリとドル高に向かって行くだろうと語っていた。これは我が国全体にとっては決して芳しいことではなく、原発再稼働をこれ以上引き延ばせばどうなっていくかは自明の理だ。「商社がエネルギー源の輸入で利益で増加するのを喜んでいる場合ではないだろう」という点で意見は一致した。

以上のように毎回変わり映えがしない悲観的というか弱気な議論になってしまうのだが、これが偽らざる現状だとしか思えないのが残念なところだ。

Sewol号の痛ましい事故

2014-04-22 07:32:31 | コラム
珍島沖の事故についてのコメントは避けたい:

目下この韓国全体を揺るがせつつある大事故について、私は何かコメントすることを避けたいと考えている。それは国を挙げて対処している最中にそれに関連する問題点を色々と論うことが適切とは考えていないからだ。

しかし、この件の報道に重きを置いているマスコミの中には「我が国だったら如何に対応したか」であるとか、我が国での先例を挙げて「我が国では同様な事故でも死者ゼロに終わらせた」というような比較論を採り上げて報じている局もある。私はこれでは、恐らく「韓国内でも国を挙げて痛みを感じている真っ最中に、如何にも優越感を示すかのようなことを言って、傷口に塩を塗り込むような所業になりはしないか」と危惧している。

私は韓国が犠牲者を懸命になって沈んだ船体から救出していることを報じるのはさしたる問題はないと思う。だが、事故処理の姿勢を我が国との比較にまで言及して報じることが適切とは思えない。現時点の韓国にはその報道に対して反応する余裕もないだろうから、余計自粛しているべき時期ではないか、如何に我が国と韓国の間に要らざる軋轢を生じさせている原因が我が方にはないと確信していても。

中国の意図は那辺にありや

2014-04-22 07:00:10 | コラム
商船三井(MO)の船を差し押さえの真の狙いは?:

私はこの中国の日中共同声明に反する行為の報道に接して憤慨するよりも何よりも、今後更なる中国の攻勢が続く危険性があることに不安を感じました。もとより、今回の中国やり方は乱暴だとは思います。だが、彼等の真意というか目的は別のもっと深いところにあるのではと危惧しております。

私は彼等は究極的には尖閣どころか沖縄を乗っ取って来るという見方どころか、我が国そのものを支配下に置こうとすら企図しているのではないかと深読みしたくなります。それは私独特の裏を(あるいは表の、かも知れません)勘ぐれば、このMOのケースのように今後戦時賠償訴訟を次々に起こして、結果的に我が国を窮地に追い込み、チベットや新疆ウイグル自治区に対して採った方式と同様に、多数の漢民族を我が国にも送り込んでくるところまでを考えているかも知れないのではと疑っています。

現に先頃何処かの報道機関が言っていた「日本に若者を送り込んで日本語を習得させているのは、彼等が帰国した後に反日と抗日の戦力として活用するため」を本気で受け止めれば、既に新宿区には多数の中国語を話す若者が至る所で我が物顔で闊歩しているのが、その先駆けではと思いたくなります。

これまでに私が中国を間接的に企業活動の面で見てきた限りでは「彼等は国際的な法律や慣習を遵守するよりも無視する傾向があり、一方的に自国の利益と都合とを優先させてその場その場で適当な法規制をでっち上げて進出してきた企業を痛めつけて退却に追い込んで、結果的に乗っ取っていく戦略があるのでは」とすら読めました。そこにあるのは露骨な「自国の利益と目的のためには手段を選ばず」というやり方でした。

今回のMOの船の差し押さえなどは、究極の対日戦略のほんの入り口ではないかと真剣に疑っています。即ち、これから先に戦時中は言うに及ばす戦前の事例まで持ち出して我が国の民間企業に対する民事訴訟を数限りなく起こし、有罪判決を下していけば、我が国は対抗手段があるまいと読んでいるのかなと危惧します。国際裁判所などに持ち込んでも彼等は怯まないかと怖れます。

かの国には13億を超える人口がありますが、中国の行動はその人口全体の意思などではなく、人民大会堂に集う数千人の、いやそれ以下の人数の上層部が決めればそれば国家の意思の表れになってしまう態勢の国かと疑っています。それを我が国の良識で計ってはいられる場合ではないと思うのですが。

以上は私の考え過ぎであって欲しいと思いつつ、MOの件の報道を聞いて憂いていました。

オバマ大統領の来日とその重要課題

2014-04-21 09:16:49 | コラム
オバマ大統領の重要課題にTPPがあるだろう:

私はオバマ大統領の今回の我が国を始めとするアジア訪問が、自らの手で混迷化させてしまった対世界全体の外交の状態を何とか自国に有利に導こうと懸命な努力をしようとしているので、先ずは日本で成果を挙げる気ではと思っている。私はこの大統領は未だに我が国はアメリカが右を向けといえば素直に従う国だと認識しているような気がしてならない。今日までにどれほど事前の折衝が出来たかを知る由もないが、何となく「来るために来る」ような気がしてならない。

私は大統領は恐らく「対日関係の悪化というか弱体化の大半の責任は日本側にある」と信じておられるのではないかと疑っている。しかし、自らの力不足も徐々に認識し始めておられて、そこには焦りもあるだろうとも疑っている。しかも、対ロシア関係は明らかに分が悪いのではないか。

オバマ大統領は以前から輸出振興を唱えておられ、それが為にもTPPに対しても積極的な姿勢を採られ、何としても我が国を加盟させようと努められたと考えている。だが、大統領は輸出国としてのアメリカの力量不足の原因が、自国の労働力の質とその製品の対外的競争力不足にあるという重大な点に関する認識がもしかして不十分なのではないのかとすら思って見ている。

だが、何としてもTPPで我が国に譲歩させようとしている姿勢には疑問を感ぜざるをえない。関税に関して言えば、牛肉や農産品などについては既にそれなりの地盤を確立しており、今更税率を引き下げたからと言って飛躍的に増えていくものかどうかは疑わしい。私が長年お世話になってきた紙パルプの分野に於いても、我が国にはない製品がアメリカの原料の優位性を活かして無税で十分に入っているし、現状以上の飛躍など考えられない。

しかも長引く全世界的な不況下にあっては先進工業国は言うなれば全て過剰な生産設備を抱えており、その活路を輸出に求めざるをえない状況にあって苦戦している最中だ。そこに参入した最新鋭の生産設備で競争力をつけた新興勢力との激しい競争に直面している。その攻勢を紙の分野では関税で閉め出していたのが保護政策を採っているアメリカだということを、まさか大統領はお忘れではないと思う。

ここで話題を変えるが、22年間アメリカの製品を我が国に輸出する仕事をしてきて痛感したことを挙げておきたい。先ずはアメリカの文化というかシステムには「何をやっても良いがあれとこれは例外として認めない」とでも言えば良い自由放任主義がある。一方の我が国では「自由にやることは認めないが、例外として認められる分野ある」という感覚で物事が動いている面がある。

即ち、アメリカでは「輸出でも輸入でも何でも、企業の裁量で自由に実行して良いが、例外として制限や禁止条項は設けておく」という感覚である。我が国はその対極にある文化で「輸出も輸入も禁止だが、例外としてこれとこれは許可する」という、言わば閉鎖的な形が採られていると感じていた。即ち、これだけの文化の違いがある市場に対して、自国の都合と理屈で押しかけていては容易に成功しないということだ。この点の認識が不十分で失敗した例は多いと思う。

これだけでは具体性に欠けると思うので、実際に経験した我が国の禁止的な文化の例を挙げてみよう。ご存じの方もあるかと思うが、牛乳パック用の紙はアメリカを主体として全て輸入紙で賄われていると言って誤りではない。そして、我が国では1960年代から牛乳瓶が徐々に紙パックに置き換えれ、今や懐かしき牛乳瓶は時々見かけるだけになっている。

ここには「乳及び乳製品の成分規格に関する省令」があって、W社が本格的に参加した1970年代にはこの乳等省令で「牛乳の容器はガラス瓶に定められ、例外として紙パックを認める」とされていた。紙パックに切り替えていく乳業会社は「例外容器使用申請」を厚生省(現在の厚労省)に提出して許可を得ていた。この省令は例外だった紙パックが、市場の過半数を超えても続き、乳業会社は申請に際してはパックに使用する輸入紙と表面にラミネートされているポリエチレンの見本の添付が義務づけられていた。なお、省令は既に改正されている由だ。

我田引水的だが、我が国の市場に進出しそこで確固たる地位を築き上げるためには、その市場を理解するだけではなく、関連する規制というか法律を認識していないことには、思いがけない難問に出会うことになってしまうものだ。既に市場に受け入れられ対抗馬もない製品でも、その申請のための乳等省令が求める企画の見本を常時用意しておかねばならなかった。

牛肉の分野では嘗て狂牛病の問題が発生した際に、我が国の業界では輸出者のアメリカの畜産業界に全頭検査を厳しく要求し、大きな論点になっていた。アメリカ側は我が国の要求を過剰として反対した。これも我が国の例外を認めない文化と厳しい衛生面における安全性の追求をアメリカ側が容易に理解できずに抵抗していたことが、今日オーストラリアの後塵を拝している原因になったと私は解釈している。

要するに、自国の利益の確保と都合を優先して強硬に押すことだけでは、相手国の市場における地位を確保できない危険性があるということだと、私は経験的にも考えている。私はアメリカの全産業の主力の企業がどれほど日本市場で最大乃至は有力なのシェアー・ホールダーになることを狙っているのかと問いたい。その際に問題となるだろう労働力の質と品質の問題は既に繰り返し指摘した。

仮に関税が撤廃されたといって、穀物や米などの農産品や自動車以外にも、ロッキー山脈の東側から、それでなくとも長引くデフレだけではなく供給過剰に悩む団業界が多い我が国に向けて、本格的に輸出に励む気があるのかと問いたい。我が安倍内閣はオバマ大統領の立場を理解しておられるだろうが、ただ単に局面の打開か最悪の場合の妥結を目指すのではなく、飽くまでも我が国の立場を貫く主張をして貰いたいと望むものだ。