新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

今回も重たくない話題を

2024-06-18 07:57:06 | コラム
アメリカでの意外な経験談:

もしかして、重たくないと思っているのは私の思い違いかもしれない。重すぎたのならばお許しを。

今回はアメリカで経験した「こういう場合にはこんな事を言うのか、こういう表現になるのか」と興味深く聞いた、如何にもアメリカらしいというか、文化が違うのだなと実感させられた表現を取り上げてみよう。

“Sir. We don’t carry 38 extra short.”:
解説)これは1973年に2回目にニューヨークに入った時に経験した失礼な言い方。待ち合わせの時刻まで余裕があったので、折角だからと5th Avenueの店を冷やかしていた。その中の既製服屋に入ってぶら下がっているスーツに触れていた時のこと。店員がやってきて見出しのようなことを言ったのだった。この意味は「貴方に合うXSは置いてないのです」なのである。

そして、その店員はその回転するハンガーをかき回していると、何と洒落たチャコールグレーにピンストライプが入ったスーツが出てきてしまったのだ。彼は大慌てで「これは貴方様に良く合うので、是非お買い上げを」と辞を低くして売り込んできた。もともと暇つぶしだったし、失礼な態度も好ましくないので“No thank you .“と言って立ち去った。

ここでも「置いている」という意味で“carry“が使われている。ジーニアス英和には15番目に「“keep in stock“という意味で略式」とあり、Oxford English Dictionaryには17番目に出てくる。私はこれがアメリカ語だと思って使ってきた。

“5-1/2 does not deserve the name of a size.”:
解説)これは「ファイブ・アンド・ハーフはサイズの名に値しない」とでも訳せば良いか。5-1/2はアメリカ式の靴のサイズで、日本式では23半辺りになる。1976年6月にニュージャージー州のアトランティック・シテイーで開催されたFood & Dairy Expoに我が社が出展者として参加した時の、何とも不愉快な経験。

有名なボードウォーク(木製の遊歩道)沿いにあったJohnston & Murphieの靴の店に、「もしかして私の5-1/2の良い靴があるか」と入って見回していた。そこに現れた店主に尋ねてみれば、ジロリと私の足下を見た後の答えが見出しのような、にべもない言い方だった。非常に不愉快だったので物も言わずに出て行ってやった。

「早く買え」:
解説)これは1978年だったかにジョージア州アトランタの商店街での経験。アメリカの商店街では「冷やかしお断り」の所もあるので、買う予定がない時には“Let me take a look around first.”か“May I just look around?“とでも言って断っておくと良い。このアトランタの店では一寸気になった商品があったので歩き回って考えていた。すると、店主が立ち上がって「何時まで見ているのだ。もう好い加減買え」と詰め寄ってきた。買わなかった。

“Gotcha.”:
解説)正式には“(I’ve)got you.“である。「捕まえたぞ」であるとか「つかまえた」とでもすれば良い俗語で、余り上品ではない言い方。これは、何時だったか、我が事業部が出張者の定宿にしていたシアトル市内のFour Seasons Hotelのアーケード内にあったBallyの店舗でのこと。この時も私は当てもなくファイブ・アンド・ハーフの靴を探していた。それが何と、濃紺のスリップオンで5-1/2の靴が棚にあったのだ。

ただ、Ballyは高価なことでもあり逡巡していると、係員が寄ってきてサイズを尋ねるので5-1/2と答えるや否や、嬉しそうな顔をして私の腕を掴んで“Gotcha.“と叫んだのだった。彼は勿論と言うべきか「冗談です」と言って「このサイズは売れなくて困っていたのでセール価格にするから是非お買い上げを」と迫ってきた。濃紺は気に入らなかったし予算超過でもあったが高級ブランドも良いかと思って踏み切った。

すると、彼は「一寸お待ちを」と言って引っ込んだかと思えば、今度は濃い茶色の同じ型の5-1/2を持ってきて「是非、これもお買い上げを」と売り込んできた。「予算超過である」と言って辞退した。だが、後々になって「買っておけば良かった」と反省した。何しろ「サイズの名に値しないサイズを発見したのだから」と。

“I cannot”と言ったじゃありませんか:
解説)これは国内での出来事で番外編である。1993年の出来事だった。当時は未だ余り我が国には普及していなかったREIT(Real Estate Investment Trust=不動産投資信託)の市場を開発しようとアトランタからやってきた金融商品を扱う会社のお手伝いをすることになった。と言っても、何も知らない私は通訳だった。当時はバブルが弾けた後で、アメリカに不良資産というか値下がりした物件を抱えて苦しんでいる企業が多かった。

その中の1社に狙いを定めてアポイントを取って、担当される部門の課長さんにお目にかかって売り込んだ。課長さんは「英語は解るから通訳は不要」と言われた。主役の社長である弁護士がプリゼンテーションをした。だが、課長さんは不良資産を抱えていることは認められず、さらに「REITは時期尚早と判断するので、御社の提案を上司には上げられない」とやんわりと拒絶された。その時の言い方が問題の“cannot“だった。

すると、社長と補佐役のマネージャーが「出来ないのならば、どうすれば出来るようになるのかお聞かせ願いたい。その出来ないという事情次第で我々が出来るようお手伝いさせて頂く」と粘った。課長さんは不快な表情で“I said I cannot. Did you not hear me.”と切り返された。アメリカ側は「だから、我が方がどのようにお手伝いすれば上司に提案出来るのですか」と重ねて提案。課長さんは「だから、I cannotといったじゃありませんか」と堂々巡り。

ここまで沈黙していた通訳がまかり出て、課長さんに「お時間を頂戴」と願い出て、3人で一時退席して彼等に「時期尚早と判断されたので、彼は“I will not make a proposal to my superior,“と言っているので、ここでは諦めるしかない」と解説した。何とか納得して貰えた。念のために指摘しておくと、“cannot”では「やり方次第で出来る」と解釈されるのだ。

先日もあるところで“You cannot use cellphone in this room.”という掲示があるのを発見した。これの間違いは「ここはスマホの使用禁止」=Don’t use Cellphones here.とだけ簡単に表示すれば良いことを、お客様に遠慮して「使えません」したこと。スマホなどは何処でも操作出来るではないか。英語という言語では「イエスかノーか」、「良いか駄目か」、「白か黒か」を二択でハッキリ表現するのだと承知しておくと良いだろう。