新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

トヨタ他4社が事もあろうに認証不正とは

2024-06-05 07:54:38 | コラム
何故、豊田章男会長の謝罪会見に微妙な違和感があったのかな:

この度公になったトヨタ、ホンダ、マツダ、スズキ、ヤマハ各社の認証不正については、マスコミ各社は一斉に批判し、既に海外でも日本製の車に不信感が生じているとの報道すらある状態。

自動車の運転免許を取ろうともしなかった私は、この分野には殊の外疎いのだが、この件での豊田章男会長、ホンダの三部社長、マツダの毛籠社長の謝罪会見を聞いていて、「何となく心を込めて謝ってはおられないような感じがするのは何故なのか」と受け止めていた。「トヨタの会長ともあろう方が何故」という印象だった。斎藤国交相は下俯いて「怪しからん」という意味の声明を読みながら発表された。

一方では「当該車種の販売を停止する」と言いながら、報道では「既に販売された車には問題はない」となっていたと聞こえていた。東海大学の末延吉正教授は「我が国の法の定める手続きの煩雑さに問題が・・・」という意味のことを言われたし、サントリー社長にして経済同友会代表・新浪剛史氏は「改めた方が良い規制」を云々された。ここまで聞けば、私にすら事の裏と表が何となく見えて来る気もした。

これまでに何度も聞いた話に「我が国の車検制度は世界にも希な制度で、少なくとも自動車の本家本元のアメリカにはそういう制度はない。(確かに今にもバラバラになりそうなボロ車が堂々と走っているのを何度も見た)この制度は戦後間もなくの未熟な技術で作られた国産車の安全を確保する為に決められたのであって、世界最大の製造技術を誇る時代に相応しくないので、改正すべき」というのがある。

車検制度を残すべきという意見の根拠は「それを廃止すると、車検を柱にしてきた全国の多くの業者に経営の危機が生じる」との声があることも聞いた。私は今回の事案を「アメリカのビッグスリーを今日の状態にまで追い込み、トランプ前大統領に事態を誤認識させるまでの優れた車を作っている我が国のメーカーが、自信を持って認証不正に走ったからかな」と受け止めた。もしかして、そこには慢心か気の緩みがあったのかとも考えた。

国交省がそういう裏と表の事情というか実態を知らずにいるとしたら片手落ちだろうが、さりとて事がここまで公になっては立ち入り検査はせねばなるまい。だが、各社が証拠となる社内の資料を保存してあるのかな。何れにせよ、我が国の自動車産業界の実態と、時の流れと、時代の変化を勘案すれば「関連する規定(法律か?)の改正が必要な時期」は来ていたのかも知れないのかも。

少し話が外れるが、わが国の諸官庁(公共機関)が定めている何かを申請する場合等々の際に提出すべき書類の記入の難しさ(煩雑さと面倒なこと)は経験してみないと解るまい。現に岸田総理肝いりの4万円減税の給与明細作成に煩雑さに事務方が悲鳴を上げているとの報道があった。

私にはA型が最多であると言われているこの型独特几帳面さがさせるのか、我が国では公式の書類には事細かに詳細を記入しないと却下される危険性が高いと認識している。だが、コインの裏側は「求められた通りに書式が整い、添付書類が完璧ならば受理される」とも言っても誤りではないようだ。

事務手続きに疎い私でさえ、1972年には乙仲業者の手けがあって、指定された通りの申請書が整い、前例がないと言われた難しい輸入手続きが、当局から許可を取れた経験があった。末延吉正教授はこの点を指摘されたのだろうと聞いていた。私はアメリカの何事に付けても見かける寛容さ(大雑把さとも言える)と比較すれば「我が国も特性というか特徴は何事でも細かい点までゆるがせにしないこと」だと理解している。

ではあっても「決められたことを蔑ろにしてはならない」のである。だが、時代にそぐわなくなった規制や細則の改正は必要なのだと、あの5社の会長や社長さんたちが言外に述べておられたかったかのようにも聞こえた謝罪会見だった。