新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

3月7日 その2 豊洲の安全性問題に思うこと

2017-03-07 13:42:19 | コラム
我が国の衛生観念と潔癖症に思う:

私はあの豊洲の9回目の検査の結果で、地下水のベンゼンが基準値の79倍で大騒ぎするマスコミの報道姿勢を見ると、これは容易ならざる事態だと思わずにはいられません。それは、1990年前後の未だ在職中に発生し経験したダイオキシン騒動を思い出させるからです。専門家にダイオキシンが発がん性物質だと指摘された為に、ダイオキシンは自然界には存在しないなどという説明は衛生観念が発達し、超超潔癖症な我が国の市場では大問題になりました。消費者にまで波及するとは思っていなかったのでしたが、スコミが煽りました。まして、食品製造業者にとっては深刻な問題になっていきました。

あの時は製紙産業がその過程で自然界には存在しないダイオキシンが発生し紙にも含有すると、(我が国の衛生観念を代表するような厳しい)環境論者様に非難されました。我々は「発生しないような対策の投資もしたし、もしも発生するとしても、全世界で年間に水飲みのグラス一杯程度だ」と説明しました。だが、そこで「もしも発生しても」と言った為に「そら見ろ発生するじゃないか」となりました。

我が事業部は液体容器用の原紙を全世界向けに輸出していたのでその処理は大変難しい問題になりました。そこで、もし発生したとしても、全世界でそれだけの分量しか発生しないダイオキシンの一部が当社の数多い工場の何処かで発生したとして、液体用原紙の内側にはポリエチレンのフィルムが障壁(barrier)としてラミネートされているので、先ず内容物のミルクやジュース等の液体に転移はしないと解説しました。

だが、ご納得頂けませんでした。即ち、理論上もまた実際にも、ポリエチレンのフィルムには極めて微細な、顕微鏡などでは見えないピンホールがあるので、そこをダイオキシンが通過する疑いがあると言う方が現れたのです。そして、遂に食品関係の団体の方々が他の目的で訪米された際に、我が社の工場を見学に訪れた時には、質疑応答の場面ではダイオキシン対策のみに質問が殺到しました。。

そこで、我が社が誇る中央研究所のPh.D.の主任研究員が詳細の説明をして、「原紙はこのような対策を講じた後で作られており、その紙からダイオキシンが漏れたとして、更にフィルムを通過する確率は3万年分の1秒に等しいので、全く心配ない」と説明しても半信半疑でした。そして、数百万円を投じた導入した最新鋭の検査機で実験をしてご覧に入れたところ、何度やっても“non-detect”、即ち「検知せず」と出て漸くご納得頂けました。

これが我が国の食品業界と業者と中間の流通業者の食品とその容器に対する潔癖さと清潔さを求める姿勢なのです。それ自体はあるべき姿なのですが、我々はやや度が過ぎているのではないかと対応に腐心しました。ここまでの完璧さを求めるのは我が国だけでしょう。しかも、我が国は世界に珍しい水道水を何の疑いもなく飲めるほど衛生状態が優れているのです。国民の姿勢も厳しいのです。

であるからには、豊洲で仮に地下にある水がコンクリート(なのでしょうか?)の床を通過したとしても、業者がその水で洗う魚を洗うはずがなくても、マスコミが「79倍」をあれほど頻繁に報道すれば、風評被害の基になってしまうでしょう。消費者も害になる可能性があると疑うのでしょう、実際に地下水で魚を洗う訳がなくても。仲卸業者も消費者も全部が化学者でも科学者でもないのですから、問題なしを納得させるのは容易ではないだろうと思うのです。


東京都議会の百条委員会

2017-03-07 08:01:06 | コラム
あれでは「石原憎し」集団による吊し上げの会にする気では:

6日夜のPrime Newsはさしたる興味無しに見ていた。あの程度のものならば、その前に緊急に採り上げられた北朝鮮の飛翔物体4発発射についての件の中谷元防衛大臣他の議論の方が余程意義があったと思う。とは言ったが、幹事たちの狙いと程度が解ったのは収穫だった。

そう言う訳は、都議会から登場した委員会の幹事という各会派の言うことが全てバラバラであったからだ。委員会の招集を決定し、呼びたい証人まで決めたというのであれば、余程各会派の論点が纏まっており、如何にして究極の狙いである石原元東京都知事を屈服させるだけの質問の材料が整っているものと、私は都議会議員を愚かにも過大評価していたと知った。

特に酷かったのは共産党で、頭から石原元知事こそが巨悪の根源と決めつけており、豊洲の問題を離れて石原君の政治手法まで批判を始め、司会の反町に窘められてしまった。これなどは言わば頭隠して何とやらで、石原憎しもさることながら、一種の選挙対策だろうとすら思わせてくれた。公明党もままで余り聞いたことが(出していなかったか?)東京ガス内部の資料を持ち出して攻撃の材料にするかのように見えたが、どう聞いても状況証拠以上のものとは聞こえなかった。

兎に角、各党がそれなりに石原攻撃の材料を持ってはいたが、ほとんどが「これから察するに」とか「この裏には」という類いのもので、あの3日の記者会見で彼が語った以上には進展しないのではないかと思わせた。聞いていて奇妙に感じたことは、司会の持って行き方もそう聞こえたが、あの百条委員会は購入価格と都が負担する多額の処理費が如何にしてあの金額になったかを炙り出すものだと思っていたが、あの幹事たちの狙いは「石原の誤った政治とその元知事を打ち落とす」にしか絞られていないかとすら思わせるほど偏っていたのは何故だろう。

尤も、公明党はあの交渉が進んでいる過程で、東京ガスの資料によれば都知事にはその都度交渉の進捗状況が報告されていたので「知らない」とか「聞いていない」は虚偽であると言いたいらしかった。これは、石原君の失言である「小さいことにかまっていられない」のかと反町に質問されて初めて肯定した程度で、費用の解明というよりも石原批判の一種と受け止めたくなった。

小池都知事はあの「百条委員会は都議会がお決めになったこと」とサラッと身をかわしていたが、最早「小池一強」と言っても良いかと思わせる節すらある都政では、都知事の胸中を忖度でもしたかと疑いたくさせてくれた。私は問題の焦点は何時築地と豊洲問題を解決して、移転の時期を決めるか、築地に残るか、第三者にでも転売するかを決めることにあるのであり、石原攻撃に時間をかけている場合ではないと思う。

安全と安心の混同があると石原君が指摘したが、屡々テレビに登場していた仲卸業者の一人は「テレビで基準値の79倍から入っていく報道の仕方は風評被害の元となっている以外の何物でもない」と指摘したのは重要な点だったし、専門家と言われている学者や大学教授は「79倍の水を毎日飲んでも大丈夫だし、第一その水は地下にあり、それで魚を洗う訳ではない」といったような要点が何処かに飛ばされていることは一向に取り上げられないのも不思議だ。尤も、偏りがちのマスコミは自分で騒ぎ立ててしまった以上、今更マッチポンプ式にここには戻れないのかな。