「EVACUATE!TSUNANI」
昨30日の朝8時過ぎだった。テレビの羽鳥の時間で「カムチャツカ半島で震度8の地震が起きて津波が襲ってくる危険性が」と報じていた。それが我が国にまで、どれほどの危険をもたらすかなどを考える暇もなく、前日から暑くなる前に行こうと予定していた、徒歩にして10分ほどのクリニックに、9時過ぎに出かけた。帰宅したのは10時頃だっただろうか、地震も津波も殆ど脳裏に無かった。
だが、気が付けば全ての地上波のチャンネルは津波の報道で、「EVACUATE!TSUNAMI」と何故か英語が出ていた。テレビの報道から私が受けた印象は「14年前の東日本大震災の経験からだろうが、警報が発令された地域ではさしたる混乱も生じておらず、住民の方々は整然と待避されていたようだったのは非常に良かったし、安心して見ていられた。流石に我が国だ」と思わせられていた。
インターネットのリテラシーなど皆無に近い当方も「何かあるのかな」と気が付いて、スマートフォンなるものを見たが、何も知らされてきてはいなかった。でも、テレビ各局が一斉に津波報道に切り替わったのは「あるべき姿かな」と評価していた。あの14年前の津波で何もかも流されていく凄まじい様子の画面の記憶があるので、物理的な被害が少なかった様子だったのも安心材料だった。
それでも、少し懸念したことがあった。それは、「今回は異常としか言えない猛暑に襲われている最中であり、その真っ最中に取るものも取りあえず何も持てずに、避難所や体育館なら兎も角、何の覆いもない高いところに非難された方々、特に高齢者に熱中症等が発生するのではないか」と懸念したことだった。その熱中症で亡くならた方がおられたのは誠にお気の毒で、ご冥福を祈りたい。
次に本州の太平洋岸には鉄道網も高速道路も張り巡らされているので、何時なんどき交通網が遮断されるのかは予測しようがない事だ。案の定、多くの鉄道会社は止めた。会社側も鉄道側も難しい判断だっただろうが、結果として帰宅難民が大船駅と藤沢駅でタクシー待ちの長蛇の列となった。この点は経営者も交通事業者も「万一」に備えた体制を研究しておく必要がありはしないか。
驚かされたのは「JRの京浜東北線と京浜急行と横浜の地下鉄」しか交通手段が思い付かない横浜スタジアムで、ヤクルト対DeNAの試合が6時からだったに行われていたことだった。と言うのは、全ての地上の鉄道は止まっていたはずで、帰宅の手段がなくなっていたと思っていたから。スタジアムはほぼ満員御礼に近いとみた。DeNAのファンは偉いなと感心した。失礼、ヤクルトのファンも、だ。あの球場には狭い駐車場しかなかったはずだ。
少し余計かなと思う話もしよう。東北地方で避難された男性が「東日本大震災の経験がフラッシュバックして、体が動かなくなって、何とかして歩いてきた」と語っておられたのには、その「フラッシュバック」を使われたことに驚かされた。私は恥ずかしながら「フラッシュバックとは」を良く知らないので「怖かった記憶が蘇った」という意味かと受け止めて、今朝ほど調べてみた。すると、
>フラッシュバックフラッシュバックは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や急性ストレス障害(ASD)の症状の一つです。過去のつらい出来事が、視覚、聴覚、体感などの五感を通してリアルに蘇り、強い恐怖やパニック、動悸、発汗などを引き起こします。
ということだとやっと解った。あの方はPTSDに悩まされているとは見えなかったが、あの東日本大震災が地域の方々に与えた心的打撃がどれほど苛酷で酷いものだったのかを、14年を経た今になって改めて知らされたのだと理解した。「フラッシュバック」の一言を聞いて、その苛烈さは現場経験された方々にしか解らないことだったと充分に認識できたのだった。