令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

坂上郎女編(8)継ぎて相見む

2010年04月27日 | 坂上郎女編
【掲載日:平成22年4月13日】

そとて 恋ふれば苦し 吾妹子わぎもこ
             ぎて相見む ことはかりせよ



神亀じんき五年〈728〉夏 大宰府からの急使
旅人赴任同行の 妻大伴郎女おおとものいらつめ死去の知らせ
次いで 家持からの 要請ようせいぶみ
《父 旅人の  落ち込み 只事では ありませぬ
 叔母おば上の 下向 乞い願うばかり》
時に 家持十一歳 必死の願いぶみ
前年 宿奈麿を亡くし 寡婦かふの身の坂上郎女いらつめ
した 大嬢おおいらつめ 二嬢にのいらつめの 幼子おさなごを抱えていた
急遽きゅうきょのこと 田村大嬢たむらのおおいらつめの宿下がりを 願い出
二人を託し  筑紫へと急ぐ

留守宅を  預かる 田村大嬢
忠実忠実まめまめしい 世話のなか
同母妹とも見紛みまがう絆が この時生まれた

やがて 佐保邸家刀自いえとじとなった 郎女
大嬢おおいらつめ 二嬢にのいらつめは 引き取られる
田村邸に  一人残る 田村大嬢
大嬢への  募る思慕
そとて 恋ふれば苦し 吾妹子わぎもこを ぎて相見む ことはかりせよ
《別々の 暮らしはつらい ねえあんた 会える手だてを 考えてえな》
遠くあらば わびてもあらむを 里近く りと聞きつつ 見ぬがすべなさ
《遠いとこ るんやったら 仕様しょうないが 近く住んでて 会えんの淋し》
白雲の  たなびく山の 高々に 我が思ふ妹を 見むよしもがも
《首のばし  あんた会える日 待ってるが 会える手だては 無いもんやろか》
いかならむ 時にか妹を 葎生むぐらふの 汚なき屋戸やどに 入りいませてむ
《むさくるし このあばに あんたをば いつになったら 迎えられんや》
                         ―大伴田村大嬢―〈巻四・七五六~九〉 

係累けいるいの無いまま 生母実家 飛鳥奈良思ならし岡に 引き籠こもった田村大嬢
大嬢への  思慕は続く
茅花ちばな抜く 浅茅あさぢが原の つほすみれ 今盛りなり 我が恋ふらくは
《ツボスミレ  花がいっぱい 咲いとおる うちもいっぱい あんた会いたい》
                         ―大伴田村大嬢―〈巻八・一四四九〉 
故郷ふるさとの 奈良思ならしの岡の 霍公鳥ほととぎす ことりし いかに告げきや
奈良思ならし岡 さとホトトギス らしたが ちゃんとあんたに 伝えたやろか》 
                         ―大伴田村大嬢―〈巻八・一五〇六〉 

我が屋戸やどの 秋の萩咲く 夕影ゆふかげに 今も見てしか 妹が姿を
《夕暮れの  咲いた秋萩 見とったら あんたの姿 見とうなったわ》
我が屋戸やどに 黄変もみ鶏冠木かへるで 見るごとに 妹を懸けつつ 恋ひぬ日は無し
《庭先の 赤いかえでを 見るたんび あんたのことを いっつも思う》
                         ―大伴田村大嬢―〈巻八・一六二二~三〉 

老境  田村大嬢に なお大嬢への思慕は尽きない
沫雪あわゆきの ぬべきものを 今までに 流らへぬるは 妹に逢はむとぞ
《雪みたい 消えになって 生きてるは あんたに会おと 思うよってや》
                         ―大伴田村大嬢―〈巻八・一六六二〉 




最新の画像もっと見る

コメントを投稿