令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

坂上郎女編(9)誰とか寝らむ

2010年04月23日 | 坂上郎女編
【掲載日:平成22年4月16日】

山菅やますげの 実成らぬことを 我れに
             言はれし君は たれとからむ


【大坂峠の道 右手が名児山の山裾】



ここ筑紫 
都の洗練才女の坂上郎女いらつめ
次々届く  相聞歌

旅人配下百代ももよも 声かける
事も無く 生きしものを おいなみに かかる恋にも 我れはへるかも
《平凡に  生きてきたのに 年取って こんなせつない 恋するかワシ》
恋ひ死なむ のちは何せむ ける日の ためこそ妹を 見まくりすれ
《恋狂い  して死んだかて 意味ないで 生きてるうちに 逢いたいもんや》
おもはぬを 思ふと言はば 大野おほのなる 三笠のもりの 神し知らさむ
《嘘ついて 愛してるやて 言うたなら 三笠の神さん ばち当てはるで》
〈嘘やないから 罰当たらんで〉
いとま無く 人の眉根まよねを いたづらに かしめつつも 逢はぬ妹かも
《人のまゆ しょっちゅかせて その気させ うてくれんと 悪いひとやで》
                         ―大伴百代おおとものももよ―〈巻四・五五九~六二〉

三十路みそじに乗った郎女 それとは無しの拒み
黒髪に 白髪しらかみまじり ゆるまで かかる恋には いまだ逢はなくに
《黒髪に 白髪しらがじる 年なって こんな恋した ことあれへんわ》
山菅やますげの 実成らぬことを 我れにせ 言はれし君は たれとからむ
《うちのこと  思てるなんて 嘘言いな あんた誰かと 寝てるくせして》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・五六三~四〉 

天平二年〈730〉そちの任解かれし旅人
前もっての  帰京の道を辿る郎女
宗像郡むなかたのこおり 名児山なごやま その名に誘われ 思わず詠う 恋の歌
大汝おほなむち 少彦名すくなひこなの 神こそば 名付けめけめ 
名のみを 名児山なごやまひて 我が恋の 千重ちへ一重ひとへも 慰めなくに

大汝おおなむち 少彦名すくなひこなの 神さんが 名前を付けた 名児山は
 名前倒れや うちの恋 万に一つも なごめへんがな》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻六・九六三〉 
我が背子に 恋ふれば苦し いとまあらば ひりひて行かむ 恋忘貝こひわすれがひ
《貝拾ろお  あんた思たら 胸苦し 恋を忘れる 片貝拾ろお》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻六・九六四〉 

帰京ののちも 筑紫が 偲ばれる
今もかも 大城おほきの山に 霍公鳥ほととぎす 鳴きとよむらむ 我れ無けれども
《ホトトギス 今も大城山おおきで 鳴いてるか うち平城こっちきて らへんけども》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一四七四〉 
何しかも  ここだく恋ふる 霍公鳥 鳴く声聞けば 恋こそまされ
《ホトトギス 鳴く声なんで 待つんやろ 聞いたら余計よけい 恋しなるのに》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一四七五〉 





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