天若日子 天向け矢をば
天上世界 そこ坐す
天照大御神 申すには
「豊葦原の 水穂国
あれぞお前の 統治国」
聞いた天之忍穂 耳命
天地架かれる 浮き橋に
立ちて下界を 覗き見る
水穂国は 国つ神
治め居るやに 見て取れる
先に降りて 国譲らせる
約束取り付ける 神をとて
天菩比神 選ばれる
降る天菩比神 大国主神に
仕え三年も 戻り来ぬ
天若日子 然らばと
天之麻迦古弓 天之波波矢
授け受け取り また降る
したが天若日子 意を背き
大国主神娘 妻にする
下照比売命が その名なり
天若日子諭す 使者として
雉の鳴女が 選ばれる
降る鳴女に 小癪なと
天若日子rt>あめのわかひこ 放つ矢は
鳴女胸をば 突き抜けて
天上までと 跳ね上がる
飛び来たその矢 正しくに
与え授けた 矢なるぞよ
「悪神射にし 流矢にあれば
天若日子に 当たらずや
邪心抱きて 天上に
射た矢にあれば 当たるべし」
元へと下し 投げる矢は
誓約通りに 天若日子に
嘆く天若日子 父と妻
下界降り来て 殯する
そこの殯に 来たりしは
下照比売命兄の 高日子根神
似たも似たるや 天若日子に
天若日子の父妻 喜びて
やれ嬉しやな 生きてしか
縋る父妻 振り解き
死人同じに 我を成すと
怒り荒れたる 高日子根神
殯屋蹴飛ばし雲と去る
下照比売命は 執り成しに
我が兄なりと 謡う歌
若い機織り 胸飾る
項垂らした 玉二つ
足を飾れる 玉二つ
二つの谷を 統べられる
我が兄の名は 阿遅志貴の
高日子根神 なるぞかし
天なるや 若棚機の
項がせる 玉の装飾
装飾に 足玉はや
み谷 二渡らす
阿遅志貴高日子根神ぞ
―古事記歌謡(七)―
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