ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

古事記ものがたり・下つ巻(15)八十年待つに お召しは無くて

2013年07月11日 | 古事記ものがたり
八十年やそとせ待つに おしはくて■

雄略ゆうりゃく天皇おおきみ 遊行おでまし
行きて美和川みわがわに 至るとき
きぬ洗う 眉目みめ乙女

なれ誰なるや 名を申せ」
「我が名引田部ひきたべ 赤猪子あかいこぞ」
われ召すにより とつな」








たよりに 待つ月日
早や八十年やそとせが 過ぎ去りき

 待ちも待ったり 長々と
 身は痩せしぼみ かんばせ
 見る影無しの しわ老女おうな

  待ちにし思い 述べざれば
 うれい悔しは 晴れやらぬ」








輿こし入れ支度じたく 進物しんもつ
たずさ宮殿みやを 訪問おとなうに

いずおうなぞ そこなるは」

「昔々に お目留めとまり
 雄略天皇きみの申すを 頼みとて
 おし今かと 待ちるに
 八十年やそとせ過ぐも 言葉なし

  身は衰えて 老い果てて
  頼む心は 捨てたれど
 一途いちず思いを 伝えにと」

聞いた雄略天皇おおきみ 仰天ぎょうてん
 済まぬぞ昔 覚え無し
  したが一念 守り来て
 娘ざかりを 甲斐かいなしに
 過ごししやな 哀れにも」

とこを用意と 思えども
老いたるしみ 謡う歌

三輪山みわ白樫しらかし 神宿る
白樫もとに 立つ乙女
神聖ゆゆしの乙女 近寄りかた

  御諸みもろの いつ白樫かしがもと
  白樫かしがもと 神聖ゆゆしきかも
  白樫原かしはら娘子おとめ
                ―古事記歌謡(九十二)―








引田ひけた栗栖くるすの 若栗を
共寝ともねすべしに 若実わかみどき
我れもおいいしや 甲斐かい無きまでも

  引田ひけたの わか栗栖くるすはら
  若くえに 率寝いねてましもの 
  いにけるかも
                ―古事記歌謡(九十三)―






天皇おおきみ老いの ゆえなりと
聞いて赤猪子あかいこ 泣く涙
あふり赤 染めふく
袖かき 濡らし 謡う歌

三輪山みわきずける 玉垣に
つかえ続けて 年を
寄るも無しの 巫女みこかや我れは

  御諸みもろに くや玉垣たまかき
  あまし にかもらん
  神の宮人みやひと
                ―古事記歌謡(九十四)―






日下くさか入江の はすの花
咲きのさかりの 乙女児おとめご
うらやましやな 老いしの我が身

  日下江くさかえの 入り江のはちす
  花蓮はなはちす 身の盛りびと
  ともしきろかも
                ―古事記歌謡(九十五)―








下賜物くだされ多く さずけ為し
美和みわへと老女おうな 送らせる



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