■八十年待つに お召しは無くて■
雄略天皇 遊行に
行きて美和川に 至るとき
川衣洗う 眉目乙女
「汝誰なるや 名を申せ」
「我が名引田部 赤猪子ぞ」
「朕召すにより 嫁ぎ為な」
お召し頼りに 待つ月日
早や八十年が 過ぎ去りき
「待ちも待ったり 長々と
身は痩せ萎み 顔も
見る影無しの 皺老女
待ちにし思い 述べざれば
憂い悔しは 晴れやらぬ」
輿入れ支度 進物を
携え宮殿を 訪問うに
「何れ婆ぞ そこなるは」
「昔々に お目留まり
雄略天皇の申すを 頼みとて
お召し今かと 待ち居るに
八十年過ぐも 言葉なし
身は衰えて 老い果てて
頼む心は 捨てたれど
一途思いを 伝えにと」
聞いた雄略天皇 仰天し
「済まぬぞ昔 覚え無し
したが一念 守り来て
娘盛りを 甲斐なしに
過ごし来しやな 哀れにも」
床を用意と 思えども
老いたる惜しみ 謡う歌
三輪山の白樫 神宿る
白樫下に 立つ乙女
神聖しの乙女 近寄り難し
御諸の 厳白樫がもと
白樫がもと 神聖しきかも
白樫原娘子
―古事記歌謡(九十二)―
引田栗栖の 若栗を
共寝すべしに 若実時
我れも老いしや 甲斐無きまでも
引田の 若栗栖原
若くえに 率寝てましもの
老いにけるかも
―古事記歌謡(九十三)―
天皇老いの 故なりと
聞いて赤猪子 泣く涙
溢れ摺り赤 染め衣の
袖かき濡らし 謡う歌
三輪山に築ける 玉垣に
仕え続けて 年を経て
寄る辺も無しの 巫女かや我れは
御諸に 築くや玉垣
斎き余し 誰にかも依らん
神の宮人
―古事記歌謡(九十四)―
日下入江の 蓮の花
咲きの盛りの 乙女児は
羨ましやな 老いしの我が身
日下江の 入り江の蓮
花蓮 身の盛り人
羨しきろかも
―古事記歌謡(九十五)―
下賜物れ多く 授け為し
美和へと老女 送らせる
雄略天皇 遊行に
行きて美和川に 至るとき
川衣洗う 眉目乙女
「汝誰なるや 名を申せ」
「我が名引田部 赤猪子ぞ」
「朕召すにより 嫁ぎ為な」
お召し頼りに 待つ月日
早や八十年が 過ぎ去りき
「待ちも待ったり 長々と
身は痩せ萎み 顔も
見る影無しの 皺老女
待ちにし思い 述べざれば
憂い悔しは 晴れやらぬ」
輿入れ支度 進物を
携え宮殿を 訪問うに
「何れ婆ぞ そこなるは」
「昔々に お目留まり
雄略天皇の申すを 頼みとて
お召し今かと 待ち居るに
八十年過ぐも 言葉なし
身は衰えて 老い果てて
頼む心は 捨てたれど
一途思いを 伝えにと」
聞いた雄略天皇 仰天し
「済まぬぞ昔 覚え無し
したが一念 守り来て
娘盛りを 甲斐なしに
過ごし来しやな 哀れにも」
床を用意と 思えども
老いたる惜しみ 謡う歌
三輪山の白樫 神宿る
白樫下に 立つ乙女
神聖しの乙女 近寄り難し
御諸の 厳白樫がもと
白樫がもと 神聖しきかも
白樫原娘子
―古事記歌謡(九十二)―
引田栗栖の 若栗を
共寝すべしに 若実時
我れも老いしや 甲斐無きまでも
引田の 若栗栖原
若くえに 率寝てましもの
老いにけるかも
―古事記歌謡(九十三)―
天皇老いの 故なりと
聞いて赤猪子 泣く涙
溢れ摺り赤 染め衣の
袖かき濡らし 謡う歌
三輪山に築ける 玉垣に
仕え続けて 年を経て
寄る辺も無しの 巫女かや我れは
御諸に 築くや玉垣
斎き余し 誰にかも依らん
神の宮人
―古事記歌謡(九十四)―
日下入江の 蓮の花
咲きの盛りの 乙女児は
羨ましやな 老いしの我が身
日下江の 入り江の蓮
花蓮 身の盛り人
羨しきろかも
―古事記歌謡(九十五)―
下賜物れ多く 授け為し
美和へと老女 送らせる
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