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かしこき相人
―高麗の観相首傾げ―
来たる高麗人 その中に
秀れ観相人 ある聞くも
宇多帝決めし 戒めの
異人宮中 禁じ故
お世話使いの 右大弁
子なりと擬して 密やかに
鴻臚館へと お連れ為に
【右大弁】
・太政官右弁官局の長
・従四位相当
※太政官=国政の最高機関
※右弁官=兵部、刑部、大蔵、宮内を管轄
【鴻臚館】
・外国使節を接待する館
・京都・太宰府に設けられた
観相人驚愕し 首傾げ
「国の治めの 親となり
帝王位 昇り為す
相持ちたるの 人と見る
斯く成るものと 占えば
民は苦しみ 国乱る
そうは成らずと 朝廷の
柱石となりて 天の下
政治の補佐人と 占うに
斯様な相は 見え来ずて
これも無きやに 思われる」
博識なりし 右大弁
肝胆互い 照らすにて
重なる通い 交わし言
興味深きの 多かりし
文の交わしの 重なるに
帰国日取りの 近付きて
高麗人若君へ 作りたる
「稀相御子なに 逢いたるの
嬉しに別れ 惜しかる」の
詩文渡すに 若宮は
床しき詩句を 作り為し
高麗人褒めて 贈り物
応えるかにや 朝廷より
賜り物の 数多数
帝経緯 漏らさねど
自ずと噂 広がりて
次春宮祖父の 右大臣
思惑ありや 疑念抱く
「さすが高麗人 観相人ぞ」
以前に我国 観相人が
同じき見立て 為すにより
若宮の親王 宣下の儀
控え居りしが 「やはりかや」
【親王宣下】
正式の皇族の一員たるべき「親王」を称することを許す宣旨を下すこと
「後見無しの 身にしての
無品親王 忍びない
朕の治世も 分からぬに
臣下と降して 朝廷補佐
為すが将来 守護る道」
決断為や帝 若宮に
多方面なる 学奨励
(才能の聡明 考じるに
臣下降すは 惜しかれど
親王たらば 次春宮と
為さん疑念の 招くにて
宿曜道の 秀人にも
(占星術)
占わせしに 高麗人と
同じき卦とに 出たからは)
思い決して 「源」の
姓授けを お決心為す