■怒る石之日売命 我れ帰らぬぞ
石之日売命 紀伊国へ
新嘗祭宴 準備にと
御綱柏を 調達に
戻り難波の 津も間近
船人夫の語るが 耳届く
「仁徳天皇は 気に入りの
八田若郎女 宮殿中に
夜昼無しの ご寵愛」
聞いた石之日売命 憤り
御綱柏海へと 投棄てて
堀江遡りて 山城へ
悔しみ慕い 謡う歌
山城川を 遡上り
やって来たなら 川の岸
繁る烏草樹の その下に
生える葉広の 椿花
照る花の様に 輝ける
葉広さながら 心持つ
天皇よ天皇 我が天皇よ
次峰経や 山城川を
川上り 我が上れば
川の辺に 生い立てる
烏草樹を 烏草樹の樹
其が下に 生い立てる
葉広 斎つ真椿
其が花の 照り座し
其が葉の 広り座すは
大君ろかも
―古事記歌謡(五十八)―
山城川辿り 木津川へ出て
進み奈良山 山麓
宮殿に寄らずて 山城川を
遡上り来たって 眺むるに
遥か奈良向こ 過ぎ行けば
更に大和を 過ぎ行けば
恋し懐かし 帰りたや
生まれ葛城 高宮の
我家辺りを 見て見たや
次峰経や 山城川を
宮上り 我が上れば
青丹よし 奈良を過ぎ
小楯 倭を過ぎ
我が見が欲し国は
葛城 高宮
我家のあたり
―古事記歌謡(五十九)―
石之日売命 高宮に
行くを諦め 引き戻り
筒木に住まう 奴理能美の
屋敷入りて 留まれる
石之日売命 紀伊国へ
新嘗祭宴 準備にと
御綱柏を 調達に
戻り難波の 津も間近
船人夫の語るが 耳届く
「仁徳天皇は 気に入りの
八田若郎女 宮殿中に
夜昼無しの ご寵愛」
聞いた石之日売命 憤り
御綱柏海へと 投棄てて
堀江遡りて 山城へ
悔しみ慕い 謡う歌
山城川を 遡上り
やって来たなら 川の岸
繁る烏草樹の その下に
生える葉広の 椿花
照る花の様に 輝ける
葉広さながら 心持つ
天皇よ天皇 我が天皇よ
次峰経や 山城川を
川上り 我が上れば
川の辺に 生い立てる
烏草樹を 烏草樹の樹
其が下に 生い立てる
葉広 斎つ真椿
其が花の 照り座し
其が葉の 広り座すは
大君ろかも
―古事記歌謡(五十八)―
山城川辿り 木津川へ出て
進み奈良山 山麓
宮殿に寄らずて 山城川を
遡上り来たって 眺むるに
遥か奈良向こ 過ぎ行けば
更に大和を 過ぎ行けば
恋し懐かし 帰りたや
生まれ葛城 高宮の
我家辺りを 見て見たや
次峰経や 山城川を
宮上り 我が上れば
青丹よし 奈良を過ぎ
小楯 倭を過ぎ
我が見が欲し国は
葛城 高宮
我家のあたり
―古事記歌謡(五十九)―
石之日売命 高宮に
行くを諦め 引き戻り
筒木に住まう 奴理能美の
屋敷入りて 留まれる