ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

訳してみよう万葉集(48)石ばしる

2012年04月30日 | 訳してみよう万葉集
■訳してみよう万葉集■<その48>

●題材歌

いはばしる 垂水たるみの上の さわらびの 萌えづる春に なりにけるかも
 
                          ―志貴皇子しきのみこ―(巻八・一四一八)



●現代訳

①巌の面を音立てて流れおつる 滝のほとりには もう蕨が萌え出づる春になった 喜ばしい

②寒い冬も過ぎて (石ばしる)小滝のほとりに はや蕨の萌え出る春になったなあ 

③岩の上を奔流する滝のほとりの蕨が 萌え出てくるうれしい春になったことだ

④岩の上をほとばしる滝のほとりのさ蕨が萌え出る春に ああなったことだ

⑤岩にぶつかって水しぶきをあげる滝のほとりのさわらぴが、むくむくと芽を出す春になった、ああ。

⑥岩を叩き水しぶき散る清い瀧のほとりの蕨が 芽を出し始める春になったんだ

⑦ ―

①斎藤茂吉<万葉秀歌>
②森岡美子<萬葉集物語>
③山本健吉<万葉秀歌鑑賞>
④中西 進<万葉集・全訳注原文付>
⑤伊藤 博<万葉集・現代語訳付き>
⑥日めくり万葉集
⑦植田祐子<超訳万葉集>

これらを踏まえて 私はこう訳しました。

わらび 渓流ながれの水の 岩陰で 見たで見つけた 春や 春来た》

さあ あなたの訳は 如何ですか?
さて <その47><その48><その>を「万葉歌みじかものがたり」にすると・・・

いはばしる》

天智天皇 第七皇子 志貴皇子しきのみこ
天武 ・持統時代に 青年期
時代の子ゆえの 生き方を求められる

歌道うたみちへの 精進しょうじん
  これしか なかろう
 うたげも ほどほど つどい うた披露ひろうも避け
 独り歌 独り修行が 身守りかなめ
 したが 歌作り 中々の 至難しなんみち
葦辺あしへ行く 鴨のひに 霜りて 寒きゆふへは 大和やまとし思ほゆ
《鴨の背に 霜りてるで 寒むそうや しみじみ大和やまと 恋しいこっちゃ》
                           【慶雲三年難波行幸】 
                           ―志貴皇子しきのみこ―(巻一・六四)
大原の このいちしばの いつしかと が思ふ妹に 今夜こよひ逢へるかも
何時いつ来たら えるんやろか 待ってたが とうと逢えたで 今夜こんやのお前》
                           ―志貴皇子しきのみこ―(巻四・五一三)
かむの 石瀬いはせもりの 霍公鳥ほととぎす なしの岡に 何時か鳴かむ
いわもり 鳴くほととぎす 何時いつやねん なしの岡に 鳴きるのんは》
                           ―志貴皇子しきのみこ―(巻八・一四六六)

 は まだ浅い
 の残る 山道を
独り辿る 志貴皇子しきのみこ

皇子おうじは 早春が好きだ
 は 冷たく
空気も ぎ澄まされている
木々 を渡る風も キリとして 頬に心地よい

(いつしか 一人歩きが習いになって仕舞しもうた
 歌の道に いそしんできたが
  やっと 実を着けつつあるか
 気楽 がいい 官職はそこそこでよいのだ)
皇子 は 語りかける
 山はいい お前は 何も言わない
 川もいい さらさらと こだわり
 音が 心しか 高こうなったな
 雪解け が 始まったらしい
  は まだ少し先か・・・)

おや  
おお  見つけたぞ
渓流滝けいりゅうだきのそば
わらびだ! わらびの芽だ!
お前は ゆきかげに 隠れていたのか
まさしく  春の芽だ

いはばしる 垂水たるみの上の さわらびの 萌えづる春に なりにけるかも
わらび 渓流ながれの水の 岩陰で 見たで見つけた 春や 春来た》 
                          ―志貴皇子しきのみこ―(巻八・一四一八)

満足の うたり歓びを 微笑ほほえ
皇子は 春のを 胸奥深いっぱいに 吸い込む