令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

憶良編(4)子に及(し)かめやも

2009年09月25日 | 憶良編
【掲載日:平成21年9月16日】

しろかねも くがねも玉も 何せむに まされる宝 子にかめやも

【山梨県増穂町増穂小学校 犬養孝揮毫歌碑】


憶良は 説教をしていた
「そなたは 自分を偉いと お思いか 
 世に名を成すことが そんなに 大事か 
 なに? 老いた父母ちちははが 邪魔じゃと 
 そなたのせいは 父母が たからではないのか
 なに? まといつく妻や子が うとましいじゃと
 いやされ 慰めを得たことは なかったのか 
 なになに 自分が出世したらば 
 親孝行も思いのまま 
 妻子つまこにも贅沢させられると 申すか
 なんと 愚かな 身の程を 知りなされ」 
憶良の前には 膝まづき こうべを垂れる もう一人の憶良がいる 

父母を 見ればたふとし 妻子めこ見れば めぐしうつく
世の中は かくぞ道理ことわり もちとりの かからはしもよ 行方ゆくへ知らねば
 
父母ちちはは尊べ 妻や子を 可愛かわいがるのは 当たり前 鬱陶うっとしけども 世の定め》
穿沓うげぐつを る如く きて 行くちふ人は 
石木いはきより し人か が名らさね

《ボロぐつるよに 世を捨てる 人のすること 違うやろ 何処どこ何奴どいつや こらお前》
あめへ行かば がまにまに つちならば 大君おほきみいます 
この照らす 日月のしたは あまくもの むかきはみ 谷蟆たにぐくの さ渡るきはみ 
きこす 国のまほらぞ かにかくに しきまにまに しかにはあらじか

《一人よがりの ひじりみち 行きたいんなら 勝手にせ この世の中で 住み続け  
天道てんとさんに 気に入られ 人の踏む道 望むなら 気まま勝手に するやない》 
                         ―山上憶良―〔巻五・八〇〇〕 
ひきかたの あまは遠し なほなほに 家に帰りて なりまさに
ひじり道 遥かに遠い あきらめて さっさと帰って 仕事に励め》
                         ―山上憶良―〔巻五・八〇一〕 

憶良は 改めて 子を思う 
うりめば 子ども思ほゆ くりめば ましてしのはゆ 何処いづくより きたりしものそ 
眼交まなかひに もとなかかりて 安眠やすいさぬ

《瓜を食うたら 思い出す 栗を食うても なおそうや  どこから来たんか この子供 
目ぇつぶっても 顔浮かぶ 
 ゆっくり寝られん 気になって》
                         ―山上憶良―〔巻五・八〇二〕 
しろかねも くがねも玉も 何せむに まされる宝 子にかめやも
《金銀も 宝の玉も そんなもん なんぼのもんじゃ 子に勝てるかい》 
                         ―山上憶良―〔巻五・八〇三〕 

うなれる憶良の肩を いま一人の憶良が叩く
                     〔嘉摩三部作の一、二〕 


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