【掲載日:平成23年7月19日】
・・・菖蒲草 玉貫くまでに 鳴き響め
安眠寝しめず 君を悩ませ
【三月末】まだ鳴かんのか なあ霍公鳥
霍公鳥 鳴き渡りぬと 告ぐれども 我れ聞き継がず 花は過ぎつつ
《ほととぎす 鳴いて飛んだと 皆言うが わし聞いとらん 花過ぎてくで》
―大伴家持―(巻十九・四一九四)
我が幾許だ 偲はく知らに 霍公鳥 何方の山を 鳴きか越ゆらむ
《ほととぎす わしがこんなに 慕てるに 知らんと何処へ 飛んでったんや》
―大伴家持―(巻十九・四一九五)
月立ちし 日より招きつつ うち偲ひ 待てど来鳴かぬ 霍公鳥かも
《月変わり 始めの日から 恋焦がれ 待つのに鳴かん あのほととぎす》
―大伴家持―(巻十九・四一九六)
【四月始】嬉し 嬉しい 初鳴き聞いて
霍公鳥 今来鳴き始む 菖蒲草 蘰くまでに 離るる日あらめや
《ほととぎす やっと鳴いたで 菖蒲草 蘰するまで 鳴き続けてや》
―大伴家持―(巻十九・四一七五)
我が門ゆ 鳴き過ぎ渡る 霍公鳥 いや懐しく 聞けど飽き足らず
《家の前 鳴き飛んでいく ほととぎす 床しゅ聞いたが まだ足らへんで》
―大伴家持―(巻十九・四一七六)
【四月三日】一緒聞きたい 池主に届け
我が背子と 手携はりて 明け来れば 出で立ち向ひ 夕されば 振り放け見つ 思ひ延べ 見和ぎし山に
《懐かしい 池主と手取り 眺めたな 朝来た時に 向き仰ぎ 夕べが来たら 振り返り 心晴らしに 見た山は》
八峰には 霞たなびき 谷辺には 椿花咲き うら悲し 春し過ぐれば 霍公鳥 いや重き鳴きぬ 独りのみ 聞けば寂しも
《峰々霞 棚引いて 谷には椿 花咲かす 春が過ぎたら ほととぎす 今を頻りに 鳴いとるが 独り聞くのん 寂しいで》
君と我れ 隔りて恋ふる 砺波山 飛び越え行きて 明け立たば 松のさ枝に 夕さらば 月に向ひて
《池主とわしを 隔てとる 砺波の山を 飛び越して 朝来た時は 松の枝 夕方来たら 月向こて》
菖蒲草 玉貫くまでに 鳴き響め 安眠寝しめず 君を悩ませ
《菖蒲の草を 薬玉にする 端午の日まで 鳴き続け 寝ささんといて 悩ましたって》
―大伴家持―(巻十九・四一七七)
我れのみし 聞けば寂しも 霍公鳥 丹生の山辺に い行き鳴かにも
《わし独り 聞いてるのんは 寂しいな 丹生の山行き 鳴けほととぎす》
―大伴家持―(巻十九・四一七八)
霍公鳥 夜鳴きをしつつ 我が背子を 安眠な寝しめ ゆめ心あれ
《ほととぎす わしの気持を 察したら 池主寝さすな 夜中中鳴いて》
―大伴家持―(巻十九・四一七九)
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