令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・青春編(二)(23)いと若みかも

2010年09月17日 | 家待・青春編(二)内舎人青雲
【掲載日:平成22年11月23日】

春の雨は いやしき降るに
        梅の花  いまだ咲かなく いと若みかも



〈まだ 年端としはも行かぬに いかにも策略めく〉
亡き妻おみなめの忘れ形見の女児 当年九才

家持は  ある尼を思い出していた
養育むすめに 懸想けそう男 尼への斟酌しんしゃく心での申出

手もすまに 植ゑし萩にや かへりては 見れども飽かず こころつくさむ
《手ぇ掛けて 育てた萩花はぎは でるより 散りはせんかと 気ィむだけか》
                         ―作者未詳さくしゃみしょう―〈巻八・一六三三〉
衣手ころもでに 水渋みしぶつくまで 植ゑし田を 引板ひきたわがへ まもれる苦し
ふくの袖 水垢みずあか付けて 植えた田を 鳴子なるこ縄張り 見張り辛いか》
                         ―作者未詳さくしゃみしょう―〈巻八・一六三四〉

困惑尼を察し  助け船の家持

〈尼〉佐保川の 水をき上げて 植ゑし田を
〈家持〉刈る早飯わさいひは 独りなるべし
《佐保川の 水き止めて 植えた田の
   一番めしを 食うのんひとり〈わしや〉》
                         ―尼・家持―〈巻八・一六三五〉 

〈今は 手塩てしお娘どころでない 大伴家の存亡
 時勢の移りを思えば 「とう」と結ぶも一策
 いやいや 安積皇子あさかのみこのこともある
 さりとて 「きつ諸兄もろえ様も 押され気味・・・〉
躊躇ちゅうちょ困惑家持 右へ左へ揺れ動く

春の雨は いやしき降るに 梅の花 いまだ咲かなく いと若みかも
春雨はるさめが 盛んに降るが 梅花うめはなは まだ咲かへんで 木ィ若いんや》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〈巻四・七八六〉
いめのごと 思ほゆるかも しきやし 君が使の 数多まねく通へば
《夢みたい 思うてまっせ 勿体もったない あんたの使い しょっちゅ来るのん》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〈巻四・七八七〉
うら若み 花咲きがたき 梅をゑて 人のことしげみ 思ひそわがする
《若木やで  まだ花咲かん 梅やのに まだかまだかは 気が気やないで》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〈巻四・七八八〉
こころぐく 思ほゆるかも 春がすみ たなびく時に ことの通へば
《春霞 棚引たなび季節じきに 誘い受け はっきりせんと すまんことです》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〈巻四・七八九〉
春風の おとにしなば ありさりて 今ならずとも 君がまにまに
《春風が ちゃんと吹いたら 時期を見て 気持ちに そのうちします》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〈巻四・七九〇〉

久須麻呂から  
確固の思いのたけと 拙速せっそくびの歌が届く

奥山おくやまの いはかげにふる すがの根の ねもころわれも 相思あひおもはずあれや
《奥山の 岩陰いわかげすがの 根ぇみたい わしの思いは しっかりしてる》
                         ―藤原久須麻呂ふじわらのくすまろ―〈巻四・七九一〉
春雨はるさめを 待つとにしあらし わが屋戸やどの 若木わかぎの梅も いまだふふめり
《若木梅 春雨待って 咲くみたい うちの梅かて まだ蕾やわ》
                         ―藤原久須麻呂ふじわらのくすまろ―〈巻四・七九二〉

返し歌を手に  家持 その場にへたり込む


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