【掲載日:平成21年8月12日】
留火の 明石大門に 入らむ日や
漕ぎ別れなむ 家のあたり見ず
【明石海峡の落日、須磨浦展望台より】

石見の国
(岩を見る国か・・・)
荒涼たる 景色が 目に浮かぶ
(歌読みの わしが 何故
宮仕えの 辛いところか)
赴任の船は 難波の津を離れ 天離る 夷へと
人麻呂は 船縁に立っている
虚ろな目 岸辺の風景が 過ぎていく
(侘しさ 募る 旅か)
珠藻刈る 敏馬を過ぎて 夏草の 野島の崎に 舟近づきぬ
《にぎやかな 藻を刈る敏馬 後にして 草ぼうぼうや 野島の岬》
―柿本人麻呂―(巻三・二五〇)
(おお いい日だ 格好の歌情景 なのに・・・)
留火の 明石大門に 入らむ日や 漕ぎ別れなむ 家のあたり見ず
《日ィ沈む 明石の大門 目を返しゃ 大和遠なる 家も見えへん》
―柿本人麻呂―(巻三・二五四)
(妻が 思い出される)
淡路の 野島の崎の 浜風に 妹が結びし 紐吹きかへす
《無事でねと お前結んで くれた紐 野島の風が 吹き返しよる》
―柿本人麻呂―(巻三・二五一)
(思いの外 小ぶりな 赴任船であった)
荒拷の 藤江の浦に 鱸釣る 白水郎とか見らむ 旅行くわれを
《藤江浜 鱸釣ってる 漁師やと 見られん違うか わし旅やのに》
―柿本人麻呂―(巻三・二五二)
(旅ごころ 湧く 伝説の印南国原か
波も高い もう かなり来たな)
名くはしき 稲見の海の 沖つ波 千重に隠りぬ 大和島根は
《稲見海 次から次と 来る波に 隠れてしもた 大和の山々は》
―柿本人麻呂―(巻三・三〇三)
(内海の島々 擡げる 歌ごころ)
大君の 遠の朝廷と あり通ふ 島門を見れば 神代し思ほゆ
《にぎやかに 筑紫行き来の 船通る 瀬戸島見たら 神秘的やな》
―柿本人麻呂―(巻三・三〇四)
過ぎゆく波頭 景観の展開
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