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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

歴史編(5)われこそ益さめ

2009年08月02日 | 歴史編
【掲載日:平成21年6月22日】

秋山の 樹の下隠こ  かくり く水の
           われこそさめ 御思みおもいよりは


「姉上 どうしたのですか」
額田王ぬかたのおおきみは 笑みのこぼれる鏡王女かがみのおおきみに声をかけた
「文が 来たのです」
「まあ 久しく なかった便りが・・・」 

中大兄皇子なかのおおえのおうじは 多忙であった
難波なにわの宮での政務は
天皇 孝徳の行うところではあるが 
重要な事柄は すべて皇子の意向が尊重された 
都が難波長柄豊崎なにわながらとよさきの宮に移される前 皇子に召された鏡王女かがみのおおきみ
都移りの後 飛鳥の地で ままならぬ逢瀬おうせを待つ身となっていた

妹が家も 継ぎて見ましを  大和なる 大島のに 家もあらましを
高安山たかやすに お前の家が あったらな お前おもうて ずっと見られる》
                           ―中大兄皇子―(巻一・九一)

「飛鳥の 私のもとに 来られないのを こうして 思いやってくださる 皇子おうじさまのお気持ち 大事にしなくてはと 思うのです
わたし かえし歌を作りました
歌の上手な お前に見てもらうのは すこし 恥ずかしいのだけれど」 

秋山の 樹の下隠こ  かくり く水の われこそさめ 御思みおもいよりは
《木の下を くぐって流れる 水みたい うちの思いが 深いであんた》
                              ―鏡王女―(巻一・九二)

【鏡王女墓への道脇・犬養孝揮毫歌碑】

額田王は 微笑ほほえましく思った
(姉は 年嵩としかさなのに 私より 可愛いわ
姉の思い 皇子に 伝わればいいが・・・) 

運命の悪戯いたずら
のち
額田王は 中大兄の寵愛ちょうあいを受け
鏡王女かがみのおおきみは 藤原鎌足の正妻に・・・



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