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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

黒人編(5)鶴鳴き渡る

2009年08月19日 | 黒人編
【掲載日:平成21年8月27日】

桜田さくらたへ たづ鳴き渡る 年魚市潟あゆちかた
           潮干しほひにけらし 鶴鳴き渡る


【高の槻群つきむら 高神社の登り口】


黒人は 放浪していた 
鶴女たづめから 音沙汰なしの 三月みつきが過ぎる
官の勤めも とどこおりがち

あの夜・・・ 
「なに 鶴女たづめが 国に帰ったというか」
国で とこに伏したままの やまいの父親 その看病の母も倒れたという 
行幸みゆき途上での知らせ 私的なこと故 お知らせを 見合せており 申し訳ありません」 
・・・家人かじんの声が 今も 耳にある

今日も 鶴女たづめとの 思い出の地に出向く 
難波潟の 島々を見やる 黒人 
四極しはつ山 うち越え見れば 笠縫かさぬひの 島漕ぎかくる たな小舟をぶね
四極しはつ山 越えたら見えた 笠縫かさぬひの 島に隠れた 棚なし小舟》 
                        ―高市黒人―〔巻三・二七二〕
住吉すみのえの 得名津えなつに立ちて 見渡せば 武庫むことまりゆ づる船人ふなびと
武庫むこどまり 船を漕ぎ出す 船頭ら よう見えてるで 住吉浜で》  
                         ―高市黒人―〔巻三・二八三〕

今日も 今日とて 足は 山城多賀へ 
とくても 見てましものを 山城やましろの 高の槻群つきむら 散りにけるかも
《もっと早よ 来たらかった 山城の 多賀のつきもり 黄葉はァ散ってもた》 
                         ―高市黒人―〔巻三・二七七〕

足は伸び 三河  
本海道 姫街道の分岐 追分に 黒人の姿 
いももわれも 一つなれかも 三河みかはなる 二見ふたみの道ゆ 別れかねつる
《二見道 男と女の 別れどこ 離れるもんか お前とわしは》  
                         ―高市黒人―〔巻三・二七六〕
鶴女たづめとの旅 わしが 一・二・三の戯れ歌を 詠いし折 鶴女が 返した歌が 思い出される 
 なんと 今を 暗に 示めしておったか〕 
三河の 二見の道ゆ 別れなば わが背もわれも 独りかも行かむ 
《三河国 ここの二見で 別れたら あんたもうちも 一人旅やで》 
                         ―高市黒人―〔巻三・二七六、一本云〕

〔ああ 鶴が 飛んで行く 鶴が 鶴が・・・〕 
桜田さくらたへ たづ鳴き渡る 年魚市潟あゆちかた 潮干しほひにけらし 鶴鳴き渡る
年魚市潟あゆちかた 潮引いたんや 桜田へ 鶴鳴きながら 飛んで行くがな》  
                         ―高市黒人―〔巻三・二七一〕

旅にして 物恋ものこほしきに 山下やましたの あけのそほ船 沖へぐ見ゆ
《なんとなく 物の恋しい 旅やのに あか塗り船が 沖通ってく》 
                         ―高市黒人―〔巻三・二七〇〕
〔官の船が 大和へ 帰って行く 
 わしも 戻らねば ならぬな 
 誰もらぬ 大和へ〕



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