犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(221)一世には

2013年10月16日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【二月十四日】放映分
一世ひとよには 二遍ふたたび見えぬ 父母ちちははを 置きてや長く が別れなむ
《この世では もう会われへん ととかか 残してくか あの世へひとり》
                    ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八九一)
【万葉歌みじかものがたり】みやこを見むと

肥後国ひごのくに益城郡ましきのこおりの国司の使い 
筑前国府へ突然のおとな
相撲使すもうづかいとして 都のぼりの途上 
若い従者 大伴君熊凝おおとものきみくまこり急死
親元 への 急ぎ使いに 馬をとの要請
一部始終を聞き 熊凝くまこりの心を 思いる 憶良

うち日さす 宮へのぼると 垂乳たらちしや 母が手はなれ つね知らぬ 国の奥処おくかを 百重山ももへやま 越えて過ぎ行き 何時いつしかも みやこを見むと 思ひつつ 語らひれど 
《花の都へ 行くんやと 恋しおんと 別れ来て 知らへん国の 奥深う 山を多数なんぼも 越えて来て その内みやこ 見られると うてみんなと 来たけども》
おのが身し いたはしければ 玉桙たまほこの 道の隈廻くまみに 草手折たをり 柴取り敷きて とこじもの うちして 思ひつつ 嘆きせらく 
《折り悪る病気 なって仕舞て 道端そばで 草や柴 敷いて作った 仮のとこ 倒れ伏し寝て あぁあ言て 横なったまま 思うんは》
国に在らば 父取り見まし 家に在らば 母取り見まし 世間よのなかは かくのみならし いぬじもの 道にしてや いのちぎなむ
故郷くにったら おっあん 家ったなら おっさん 枕そば来て 看取みとるのに ままにならんと 道のはた ここで死ぬんか 犬みたい》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八八六)

たらちしの 母が目見ずて おほほしく 何方いづち向きてか が別るらむ
かあちゃんに 会わんとくか 鬱々うつうつと 何処どこどないして 行ったらんや》
常知らぬ 道の長手ながてを くれくれと 如何いかにか行かむ かりては無しに
《行ったこと い道続く あの世旅 食糧めしも持たんと どないに行くか》
家に在りて 母が取りば 慰むる 心はあらまし 死なば死ぬとも
《家って お看取みとって くれるなら 例え死んでも くやまへんのに》
出でて行きし 日を数へつつ 今日けふ今日けふと を待たすらむ 父母ちちははらはも
《出てからも 今か今かと 指折って 待ってるやろな おとうとおかあ
一世ひとよには 二遍ふたたび見えぬ 父母ちちははを 置きてや長く が別れなむ
《この世では もう会われへん ととかか 残してくか あの世へひとり》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八八七~八九一)

子煩悩こぼんのう憶良に 他人ひとの身とも思えぬ 痛みが走る
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大伴君熊凝おおとものきみくまこりの歌二首】
くに遠き 道の長手ながてを おほほしく 今日けふや過ぎなむ ことどひもなく
故郷くにとおに 来た道中どうちゅうで 心細さみしいに 今日死ぬのんか 親声こえ聞かんまま》
                         ―麻田陽春あさだのやす―(巻五・八八四)
朝露あさつゆの やすきが身 他国ひとくにに 過ぎかてぬかも 親の目を
朝露つゆみたい 消えて仕舞うんか たびぞらで 死ぬに死ねんが 親いとうて》
                         ―麻田陽春あさだのやす―(巻五・八八五)




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【古事記ものがたり】への誘い
古事記編纂1300年を期し 一大叙事詩を作ってみました
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■日めくり万葉集Vol・2(220)夕闇は

2013年10月05日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
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【二月十三日】放映分
夕闇ゆふやみは 道たづたづし 月待ちて ませ我が背子 そのにも見む
夕闇ゆうやみは 道あぶないで 月のを 待ったらやん それまでって》
                         ―豊前國娘子ぶぜんのくにのおとめ大宅女おおやけめ―(巻四・七〇九)


【万葉歌みじかものがたり】道たづたづし

日暮れ 来たなら あの人恋し
されど 闇夜は 逢うことできん
今宵 月夜は せめても機会
 よ明こ照れ 雲隠すなよ

 夜目に遠目に 傘の内かな)
み空行く 月の光に ただいち 相見あひみし人の いめにし見ゆる
月明つきあかり したでちらっと 見た人が 夢て来たわ なんでやろうか》
                         ―安都扉娘子あとのとびらおとめ―(巻四・七一〇)

 お前訪ねる 夜道は暗い
 月よ照らせよ この足もとを)

倉橋くらはしの 山を高みか ごもりに る月の かたかた
倉橋くらはしの 山高いんで 月るん おそて待っても 待ち切れんがな》
                         ―沙弥女王さみのおおきみ―(巻九・一七六三)
倉橋の 山を高みか ごもりに る月の 光ともしき
倉橋くらはしの 山高いんで 月出るん おそてなんやら 薄暗うすぐらいがな》
                         ―間人大浦はしひとのおおうら―(巻三・二九〇)
あまの原 け見れば 白真弓しらまゆみ 張りてけたり 夜道よみちけむ
あおいだら 弓張ったな 月出てる 夜道歩くに 大助かりや》
                         ―間人大浦はしひとのおおうら―(巻三・二八九)
らが家道いへぢ ややどほきを ぬばたまの 渡る月に きほひあへむかも
《あの児いえ ちょっと遠いが この月が 照ってるぁに 着けるやろうか》
                         ―阿倍広庭あべのひろにわ―(巻三・三〇二)
しきやし ちかき里の 君むと おほのびにかも 月の照りたる
ちこに住む あんたるのん わかるんか くまう月が 照っとおるがな》(女歌?男友?)
                         ―湯原王ゆはらのおおきみ―(巻六・九八六)

(待つは長いが 逢瀬おうせは早い
 せめても少し うちそば居って)

夕闇ゆふやみは 道たづたづし 月待ちて ませ我が背子 そのにも見む
夕闇ゆうやみは 道あぶないで 月のを 待ったらやん それまでって》
                         ―豊前國娘子ぶぜんのくにのおとめ大宅女おおやけめ―(巻四・七〇九)
雲隠くもがくり 行方ゆくえみと が乞ふる 月をや君が 見まくりする
雲隠くもかくれ そのまま居って 思う月 あんた出て欲し 思とんのんか》
                         ―豊前国娘子ぶぜんのくにのおとめ―(巻六・九八四)

(鳴いてくれるな 夜明けのかけよ)
あます 月読つくよみ壮士をとこ まひむ 今夜こよひの長さ 五百いほ継ぎこそ
てんで照る おっ月さんよ 礼するで 五百ごひゃくばいして 今夜こんやの長さ》
                         ―湯原王ゆはらのおおきみ―(巻六・九八五)



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■日めくり万葉集Vol・2(219)住吉の

2013年10月02日 | 日めくり万葉集
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平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【二月十日】放映分
住吉すみのえの 粉浜のしじみ 開けも見ず こもりてのみや 恋ひ渡りなむ
からめた 粉浜シジミの 貝みたい わしめ恋を し続けるんか》
                          ―作者未詳―(巻六・九九七)

【万葉歌みじかものがたり】清き浜廻はまび
天平 六年(734)春三月
難波宮行幸みゆき
歌の みなもと訪ねの旅から戻った 赤人
久方ぶり の 従賀であった
この 行幸では
みかどからの 儀礼歌の お召しはなかった
従賀人じゅうがひとそれぞれの 楽しみ 
それ が 新しい行幸の姿となりつつある

大夫ますらをは 御狩みかりに立たし 娘子をとめらは 赤裳あかもすそ引く 清き浜廻はまび
廷臣おとこらは 狩りに行ったで 女官おとめらは 赤い裳裾すそ引き 浜辺遊びや》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻六・一〇〇一)

住吉すみのえの 粉浜のしじみ 開けも見ず こもりてのみや 恋ひ渡りなむ
からめた 粉浜シジミの 貝みたい わしめ恋を し続けるんか》
                          ―作者未詳―(巻六・九九七)

まよごと 雲居くもゐに見ゆる 阿波あはの山 けて漕ぐ舟 とまり知らずも
《眉のな 雲の向こうの 阿波山あわやまを 目指し漕ぐ舟 何処どこ泊まるやろ》
                         ―ふなのおおきみ―(巻六・九九八)

茅渟廻ちぬみより 雨ぞ降りる 四極しはつ海人あま 網手あみてしたり 濡れにあへむかも
茅渟浦ちぬらから 雨降ってきた 干したある 四極しはつ漁師の 網大丈夫ええやろか》
                         ―守部王もりべのおおきみ―(巻六・九九九)

子らしあらば 二人聞かむを 沖つに 鳴くなるたづの あかときの声
ったなら おまえと二人 聞けるのに 沖鳴く鶴の 夜明けの声を》
                         ―守部王もりべのおおきみ―(巻六・一〇〇〇)

馬のあゆみ おさとどめよ  住吉すみのえの 岸の埴生はにふに にほひて行かむ
手綱たづな引き 馬止めてんか 住吉の 岸の埴生はにゅうを ふく付けてくに》
                         ―安倍豊継あべのとよつぐ―(巻六・一〇〇二)

しんへの近づきが
ていへの うやまいを深める
今日の行幸に 春の長閑のどかさが加わり
従駕人じゅうがひとの歌に 伸びやかな 明るさが宿る





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■日めくり万葉集Vol・2(218)防人に

2013年09月11日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
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【二月九日】放映分
防人さきむりに たむ騒きに 家のいむが るべき事を 言はずぬかも
《防人に 出るバタバタで お前する 農作業しごと言わんと 来て仕舞しもうたで》
                         ―若舎人部廣足わかとねりべのひろたり―(巻二十・四三六四)

【万葉歌みじかものがたり】かごさへ見えて》

いとこいしの 妻との別れ
沈む 心を 励まし来たが
思い残した  心は重い
思い託す は 流れる雲か 

立薦たちこもの ちの騒きに あひてし いもが心は 忘れせぬかも
出発しゅっぱつの あわただし時 見たお前 うつろな心 忘れられるか》
                         ―丈部与呂麻呂はせべのよろまろ―(巻二十・四三五四)
防人さきむりに たむ騒きに 家のいむが るべき事を 言はずぬかも
《防人に 出るバタバタで お前する 農作業しごと言わんと 来て仕舞しもうたで》
                         ―若舎人部廣足わかとねりべのひろたり―(巻二十・四三六四)
我が妻は いたく恋ひらし 飲む水に かごさへ見えて 世に忘られず
《妻のやつ 案じとるんや 飲む水に 顔写りよる 辛抱しんぼ出来んが》
                         ―若倭部身麻呂わかやまとべのみまろ―(巻二十・四三二二)
ろ旅は 旅とおめほど いひにして 子持こめすらむ 我がかなしも
《旅に出た わし仕様しょうないが 子供連れ せる思いの 妻可哀想かわいそや》
                         ―玉作部廣目たまつくりべのひろめ―(巻二十・四三四三)
もての 忘れもしだは 筑波つくはを 振りけ見つつ 妹はしぬはね
《わしの顔 忘れかけたら 筑波山つくばやま 見上げてわしを しのんどってや》
                         ―占部子龍うらべのおたつ―(巻二十・四三六七)
ひな曇り 碓氷うすひの坂を 越えしだに いもが恋しく 忘らえぬかも
碓氷坂うすいざか 越えした時 かあちゃんを 恋し思たん 忘れられんで》
                         ―他田部子磐前をさたべのこいわさき―(巻二十・四四〇七)
我がきの 息衝いきつくしかば 足柄あしがらの 峰延みねはほ雲を 見ととしのはね
《わし思て せつなったら 足柄の 峯かる雲 見てしのんでや》
                         ―服部於由はとりべのおゆ―(巻二十・四四二一)
足柄あしがらの 御坂みさかして 袖振らば いはなる妹は さやに見もかも
 足柄の 峠で袖を 振ったなら お前にちゃんと 見えるやろうか》
                         ―藤原部等母麻呂ふじわらべのともまろ―(巻二十・四四二三)



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■日めくり万葉集Vol・2(217)道の辺の

2013年09月04日 | 日めくり万葉集
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【二月八日】放映分
道のの いちしの花の いちしろく 人皆知りぬ 恋妻こひづま
《恋しとて わし隠してた あの児やに はっきり皆に 知られて仕舞しもた》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四八〇)

【万葉歌みじかものがたり】恋忘れ 草》

生える 草花 身近の仲間
たくす心は 普段着ままよ
 の玉藻に あの児を重ね
黒髪 偲び 独り寝思う

我が背子に が恋ひれば 我がやどの 草さへ思ひ うらぶれにけり
《恋焦がれ うちがしょんぼり してたなら 草もしおれて しょんぼりしてる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四六五)
道のの 草深くさふか百合ゆりの ゆりもと言ふ 妹が命を 我れ知らめやも
百合ゆりはなの あとあとでと うお前 お前の寿命じゅみょう わし分らんが》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四六七)
                         (百合→ゆりも)
みなとあしに じれる草の しりくさの 人皆知りぬ 下思したもひは
あしじり えるしりくさ 知られたで まわみんなに 心おもいを》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四六八)
                          (知草→知りぬ)
我がやどの のきのしだ草 ひたれど こひわすぐさ 見れどいまだ生ひず
《うちのいえ 軒のしだ草 えとるが 恋忘れ草 えとらんがな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四七五)
つ田には ひえ数多あまたに ありといへど えらえし我れぞ を一人
田圃たんぼには ひえ仰山ぎょうさん えとるが 間引まびかれたわし るん独りや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四七六)
あきかしは 潤和うるわ川辺かはへの 小竹しのの芽の 他人ひとには忍び 君にへなくに
《うちの恋 他人ひとに知れん 出来るけど あんたを見たら もうたまらんわ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四七八)
                          (小竹→忍び)
道のの いちしの花の いちしろく 人皆知りぬ 恋妻こひづま
《恋しとて わし隠してた あの児やに はっきり皆に 知られて仕舞しもた》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四八〇)
                         (いちし→いちしろく)
山ぢさの 白露重み うらぶれて 心も深く が恋まず
《山ぢさが 露がおもうて しおれてる わしもしおれて 焦がれがまん》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四六九)
水底みなそこに ふる玉藻の うちなびき 心は寄りて 恋ふるこのころ
玉藻なびく みたいあんたに 心寄り 恋し思うで この頃うちは》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四八二)
敷栲しきたへの 衣手ころもでれて 玉藻なす 靡きからむ を待ちかてに
《袖わし 出けんで黒髪かみを なびかせて 独り寝てるか わし待ち兼ねて》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四八三)



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■日めくり万葉集Vol・2(216)降る雪は

2013年08月28日 | 日めくり万葉集
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【二月七日】放映分
降る雪は あはには降りそ 吉隠よなばりの 猪養ゐかひの岡の 寒からまくに
《雪そない 降ったりないな 猪養いかいおか あの人お墓 寒がるよって》
                         ―穂積皇子ほづみのみこ―(巻二・二〇三)

【万葉歌みじかものがたり】かりたぐひて》

和銅 元年(708)の秋近い日
但馬皇女たぢまのひめみこ訃報ふほうが届く
 の火を燃やした日から 十三年が過ぎていた

(いまさら 弔問ちょうもんにも 行けぬか
  それにしても あの情熱は すごかった
 わしが 皇女ひめみこを避けたのは あながち 高市たけちの皇子みこを はばかっただけでは なかったのだ
  監視をくぐり 忍んでくる 
寄越よこす文は 日ごと夜ごと
情念の文字がおどっていた
が途絶え 安堵あんどしたのを 覚えている
あれから 幾としつきか・・・)

その 冬は 例年に無い冷え込み
平城ならの都は 猛然たる吹雪に見舞われた
横なぐりの 雪を眺める 穂積皇子ほづみのみこ 
皇子みこの胸に 今更の思慕おもいが・・・

降る雪は あはには降りそ 吉隠よなばりの 猪養ゐかひの岡の 寒からまくに
《雪そない 降ったりないな 猪養いかいおか あの人お墓 寒がるよって》
                         ―穂積皇子ほづみのみこ―(巻二・二〇三)

皇子に 人には言えぬ 懐古かいこが よみがえ
但馬 皇女の 命日を迎えた日
昔来た 皇女ひめみこからの 最期さいごの文を 開いていた
 今朝聞いた 雁の声が この文を 思い出させたのだ
 情熱が静まり どこか あきらめの見える歌・・・)
ことしげき 里に住まずは 今朝けさ鳴きし かりたぐひて なましものを
《口さがな 里にらんと 今朝けさ鳴いた 雁と一緒に 仕舞しまいたい》
                         ―但馬皇女たじまのひめみこ―(巻八・一五一五)
 返し歌を 手向けてやらねば)
今朝けさ朝明あさけ かり聞きつ 春日山かすがやま 黄葉もみちにけらし が心いた
《雁の声 明け方聞いた 春日山 黄葉いろづいたんや 胸締めつける》
                         ―穂積皇子ほづみのみこ―(巻八・一五一三)

 あの人は もう居ないのだ
 雁と一緒にってしまったのか
浅茅あさじの花と一緒に散ってしまったのか) 
秋萩は 咲くべくあるらし 我がやどの 浅茅あさぢが花の 散りぬる見れば
《秋萩の 咲くん近いで 庭先の 浅茅あさじの花の 散るのん見たら》
                         ―穂積皇子ほづみのみこ―(巻八・一五一四)
 どうして あの時・・・)
皇子の胸に 甲斐かいなき悔悟かいごの念




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■日めくり万葉集Vol・2(215)ももしきの

2013年08月21日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【二月六日】放映分
ももしきの 大宮人おほみやひとは いとまあれや 梅をかざして ここにつどへる
《おつかえの 大宮おおみやびとは 休みかな うめかみし 集まっとるで》
                           ―作者未詳―(巻十・一八八三)


【万葉歌みじかものがたり】春野 のうはぎ》

 の陽気に 野山が誘う
くさ摘む乙女 野遊び男
日暮れしんで 出る月待てば
おぼろ月影 春先情緒じょうちょ

春日かすがに けぶり立つ見ゆ 娘子をとめらし 春野のうはぎ みてらしも
春日野かすがのに けむり立っとる 乙女おとめらが 春野はるのでヨメナ るか》
                           ―作者未詳―(巻十・一八七九)
  
ももしきの 大宮人おほみやひとは いとまあれや 梅をかざして ここにつどへる
《おつかえの 大宮おおみやびとは 休みかな うめかみし 集まっとるで》
                           ―作者未詳―(巻十・一八八三)
  
春の野に 心べむと 思ふどち 今日けふの日は 暮れずもあらぬか
《春の野に らしがてら 友同士どうし 来た今日きょうの日は 暮れるんしで》
                           ―作者未詳―(巻十・一八八二)
  
はるかすみ 立つ春日野かすがのを 行き返り 我れは相見あひみむ いや年のはに
かすみ立つ 春の春日野かすがの して ながめ遊ぼや 来る年ごとに》
                           ―作者未詳―(巻十・一八八一)
  
春日野かすがのの 浅茅あさぢが上に 思ふどち 遊ぶ今日けふの日 忘らえめやも
《友同士どうし 春日かすが茅原かやはら 出かけた 今日きょうの野遊び 満足したで》
                           ―作者未詳―(巻十・一八八〇)

はるかすみ たなびく今日けふの 夕月夜ゆふづくよ 清く照るらむ 高松の野に
春霞はるがすみ なび月影つきかげ かすんでる 高松たかまつでは きよらかやろな》
                           ―作者未詳―(巻十・一八七四)
  
春されば くれ多み 夕月夜ゆふづくよ おほつかなしも 山蔭やまかげにして
《春来たら 木陰こかげ繁って ほのぐらい ほのぐらづきや ここ山陰やまかげで》
                           ―作者未詳―(巻十・一八七五)
  
あさかすみ 春日はるひくれは より うつろふ月を いつとか待たむ
《穏やかな 春の日れる このあとは 出る月 待つと仕様しょうかい》
                           ―作者未詳―(巻十・一八七六)



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■日めくり万葉集Vol・2(214)大船に

2013年07月27日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【二月三日】放映分

大船おほぶねに かじしじき この我子あこを 唐国からくにる いはへ神たち
《大船に かじ多数よけ付けて この子をば 唐へつかわす 守らせ給え》
                         ―光明皇后こうみょうこうごう―(巻十九・四二四〇)


【万葉歌みじかものがたり】唐国からくにる》

天平 勝宝三年(751)九月
家持  帰京
 は 遣唐使送りの話題に 湧いていた
  二年九月任命
大使 藤原北家房前ふささきの子 藤原清河ふじわらのきよかわ

春日野かすがので行われた 入唐祈願祭礼】
大船おほぶねに かじしじき この我子あこを 唐国からくにる いはへ神たち
《大船に かじ多数よけ付けて この子をば 唐へつかわす 守らせ給え》
                         ―光明皇后こうみょうこうごう―(巻十九・四二四〇)
春日野かすがのに いつ三諸みもろの 梅の花 きてあり待て かへるまで
春日野かすがので 祭る三諸みむろの 梅花うめはなよ 咲きさかえ待て わし帰るまで》
                         ―藤原清河ふじわらのきよかわ―(巻十九・四二四一)

【藤原仲麻呂邸 入唐使はなむけうたげ
天雲あまくもの かへりなむ ものゆゑに 思ひぞがする 別れ悲しみ
く雲も また湧き戻る そやうに 別れ悲して わししずんどる》
                         ―藤原仲麻呂ふじわらのなかまろ―(巻十九・四二四二)
住吉すみのえに いつはふりが 神言かむごとと 行くともとも 船は早けむ
住吉すみのえの 神のお告げが うてるで きも帰りも 船足軽い》
                         ―丹比土作たじひのはにし―(巻十九・四二四三)
あらたまの 年の長く 我がへる 児らに恋ふべき 月近づきぬ
年月としつきの なごうにわしが いとしんだ 妻との別れ こなって来た》
                         ―藤原清河ふじわらのきよかわ―(巻十九・四二四四)
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 天平五年(733)第九次遣唐使 派遣時の歌】
そらみつ 大和やまとの国 青丹あおによし 平城ならの都ゆ 押し照る 難波なにはくだり 住吉すみのえの 御津みつに船乗り ただ渡り 日の入る国に つかはさゆ 我が背の君を 
大和やまと国 平城ならみや離れ 難波なにわ来て 住吉すみのえ浜で 船に乗り 海を進んで 日ぃ沈む 国へのつかい あんたをば》
けまくの ゆゆしかしこき 住吉すみのえの 我がおほ御神みかみ ふなに うしはいまし 船艫ふなどもに みたちいまして さし寄らむ 磯の崎々 てむ とまりとまりに 荒き風 波にはせず たひらけく て帰りませ もとの国家みかど
霊験れいけんまこと あらたかな 住吉すみのえ神よ 頼みます 船のさきに すわられて 船のともさき お立ちなり 寄る崎々さきざきの いそみなと 荒い波風 わさんと 無事戻してや もとの国まで》
                          ―作者未詳―(巻十九・四二四五)
おきつ波 なみな越しそ 君が船 ぎ帰り来て 津につるまで
おききし どっちの波も 立たんとき 船ぎ帰り 港着くまで》
                          ―作者未詳―(巻十九・四二四六)

天雲あまくもの 退きへのきはみ 我がへる 君に別れむ 日近くなりぬ
《雲の果て 限りしたう 母上に お別れする日 こなりました》
                         ―阿倍老人あべのおきな―(巻十九・四二四七)

これらの歌 越中さかん高安種麻呂たかやすのたねまろの手で 家持に


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■日めくり万葉集Vol・2(213)百済野の

2013年07月24日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【二月二日】放映分

百済野くだらのの 萩の古枝ふるえに 春待つと りしうぐひす 鳴きにけむかも
《百済野の 萩の古枝 止まってた 春待ちどりは もう鳴いたかな》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻八・一四三一)

【万葉歌みじかものがたり】《萩の古枝ふるえに》

春まだ浅い野 梅が蕾膨ほころびを待つ
かすかに 鶯の声
赤人は 思いっていた
(あれは 野枯れた原を 辿たどっていた折であった
  季節はずれの 鶯 
萩の古枝ふるえだに 寒げに 止まってった
あの 枯野のおもむき
なぜか 心にかるものがあった)

百済野くだらのの 萩の古枝ふるえに 春待つと りしうぐひす 鳴きにけむかも
《百済野の 萩の古枝 止まってた 春待ちどりは もう鳴いたかな》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻八・一四三一)

あしひきの 山谷越えて  野づかさに 今は鳴くらむ 鶯の声
 山谷を 越えて野に来て 今頃は 鳴いとるやろか あの鶯は》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻十七・三九一五)

恋しけば 形見にせむと  我がやどに 植ゑし藤波 今咲きにけり
《ほととぎす 偲ぶよすがに 植えといた 庭の藤花 今咲いとるで》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻八・一四七一)

そこ には 
自然 の中に身を置き 
あるがまま を楽しむ 
枯れた 赤人が いた



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■日めくり万葉集Vol・2(212)三諸は

2013年07月20日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
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【二月一日】放映分

みもろは 人のる山 もとは 馬酔木あしび花咲き すゑは 椿花咲く うらぐはし山ぞ 泣く子る山
三諸みもろやま みんな大切だいじと まもる山 ふもと一面 咲き 峰一面に 椿咲く うるわし山や この山は 泣く児あやす みなして守る》
                          ―作者未詳―(巻十三・三二二二)

【万葉歌みじかものがたり】《春さりれば》

 十三に 集めしは
 に大和の 長歌群
中身雑歌ぞうかに 相聞歌そうもんか
問答 挽歌ばんかに 比喩ひゆの歌
 の順序は 種類ごと
並べられてる  国別に

雑歌ぞうかうたうは 山や川 国や湖 海景色けしき
めてあがめて 加護かご祈る 国の栄えは 永久とこしえ
地霊ちれいこのわし 守れよと 旅行く空の 無事祈る
配流ながされ旅は なおつらい 戻り出来るや 地の神よ


先ずの登場 春秋はるあきめで
 は鶯 花咲き誇る
   
冬こもり 春さり来れば あしたには しらつゆ置き ゆふへには かすみ棚引く 風の吹く ぬれしたに 鴬鳴くも
《春たら 朝に白露しらつゆ 草に置き 夕べかすみが 棚引たなびくよ 春風吹いて こずえした 鶯しきり 鳴いとおる》
                          ―作者未詳―(巻十三・三二二一)
   
みもろは 人のる山 もとは 馬酔木あしび花咲き すゑは 椿花咲く うらぐはし山ぞ 泣く子る山
三諸みもろやま みんな大切だいじと まもる山 ふもと一面 咲き 峰一面に 椿咲く うるわし山や この山は 泣く児あやす みなして守る》
                          ―作者未詳―(巻十三・三二二二)
   
秋は黄葉もみじが 山飾り立て
插頭かざしにとて 手折たおりて帰る

かむとけの かをる空の 九月ながつきの 時雨しぐれの降れば 雁がねも いまだ来鳴かぬ 
稲妻いなずまの 鳴るそら雲が 立ちめて 九月の時雨しぐれ 降る時分じぶん 雁はまだ来て 鳴かんけど》
神奈備かむなびの 清き御田屋みたやの かきの 池の堤の ももらず 斎槻いつきの枝に 瑞枝みずえさす 秋の黄葉もみちば
神奈備かんなびやまの ぁ守る 小屋のまわりの 池堤 そこに生えてる つきの木の 伸びた枝々 色づいた》
まき持てる 小鈴もゆらに 手弱女たわやめに 我れはあれども 引きぢて みねもとををに ふさ手折たをり 我は持ちて行く 君がかざしに
《手にした小鈴 揺り鳴らし か弱いうでを 差し伸ばし 枝を引き寄せ 仰山ぎょうさんの 黄葉もみじ折り取り 持ち帰る あの人飾る 插頭かざしにとて》
                          ―作者未詳―(巻十三・三二二三)
 百足らず=百に足らない→五十<い>)
ひとりのみ 見れば恋しみ 神奈備かむなびの 山の黄葉もみちば 手折たをつ君
《なぁあんた 神奈備かんなび黄葉もみじ 独り見て 見せとなったで 手折たおって来たで》
                          ―作者未詳―(巻十三・三二二四)



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■日めくり万葉集Vol・2(211)梅花の

2013年07月17日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
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【一月三十一日】放映分

梅の花 いめに語らく 風流みやびたる 花とあれふ 酒に浮べこそ
《梅の花 夢でうたで 酒坏さかづきに 浮かばしてんか わし風流人すきもんや》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻五・八五二)

【万葉歌みじかものがたり】 にまじれる》

梅花うめはなうたげ
果てたあとの 心地よい虚脱きょだつ
旅人たびとは みやこを 思いっていた
みやこでも 梅のうたげを 催したことがあった
あの時の友 都での名の知れた医者 吉田宜よしだのよろし
文のり取り うて久しいが
いい 機会じゃ
先日のうたげでの歌 まとめて送ってやろう
わしの歌が 一首だけでは さみしかろう
取り急ぎ 追い歌を さねばなるまい)

残りたる 雪にじれる 梅の花 早くな散りそ 雪はぬとも
《消え残る 雪と一緒に 咲く梅花うめよ 雪消えたかて 散らんとりや》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻五・八四九)
雪の色を うばひて咲ける 梅の花 今盛りなり 見む人もがも
《白雪に 負けんと咲いた 梅花を 一緒見る人 らへんやろか》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻五・八五〇)
我がやどに 盛りに咲ける  梅の花 散るべくなりぬ 見む人もがも
《庭先に 咲いてる梅は 散りやで 一緒見る人 らへんもんか》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻五・八五一)
梅の花 いめに語らく 風流みやびたる 花とあれふ 酒に浮べこそ
《梅の花 夢でうたで 酒坏さかづきに 浮かばしてんか わし風流人すきもんや》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻五・八五二)

吉田宜よしだのよろしの返書は ただちのものであった
おくれ居て ながひせずは 御園生みそのふの 梅の花にも ならましものを
うらやんで 梅のうたげを 思うより 旅人あんたの庭の 梅花はななりたいで》
                         ―吉田宜よしだのよろし―(巻五・八六四)
(おうおう うらやましがらせて 仕舞しもうたわい
 それにしても うちの庭の梅になりたいとは これはまた 風流ふうりゅうな)

よろしの文が 旅人に みやこ思いを 深くさせる




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■日めくり万葉集Vol・2(210)年長く

2013年07月13日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【一月三十日】放映分
・・・昼はも 嘆かひ暮し よるはも 息衝いきづき明かし 年長く 病みし渡れば つきかさね うれさまよひ 
《夜は溜息 昼嘆き 長患ながわずらいの 続くうち》
ことことは 死ななと思へど 五月蝿さばへなす さわどもを てては しには知らず 見つつあれば 心はえぬ 
《いっそ死のかと おもたけど 餓鬼がきどもって 死なれへん 子供見てると 胸痛む》
かにかくに 思ひわづらひ のみし泣かゆ
《あれこれ思い わずろうて 考えあぐね 泣くばかり》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八九七)


【万葉歌みじかものがたり】うちかぎりは》
天平 五年(733)
老身ろうしん憶良は やまいとこにあった 数えて七十四

たまきはる うちかぎりは たひらけく 安くもあらむを 事も無く くあらむを よのなかの けくつらけく
《生きてる内は 病気せず 楽に死にたい おもうても 世の中つろて 苦しいわ》
いとのきて 痛ききずには 辛塩からしほそそくちふが如く ますますも 重き馬荷うまにに 表荷うはに打つと いふことのごと 老いにてある が身の上に 病をと 加へてあれば
《塩を生傷なまきず 塗るみたい 追い荷重荷おもにに 積むみたい 老い身に病気やまい 重なって》
昼はも 嘆かひ暮し よるはも 息衝いきづき明かし 年長く 病みし渡れば つきかさね うれさまよひ 
《夜は溜息 昼嘆き 長患ながわずらいの 続くうち》
ことことは 死ななと思へど 五月蝿さばへなす さわどもを てては しには知らず 見つつあれば 心はえぬ 
《いっそ死のかと おもたけど 餓鬼がきどもって 死なれへん 子供見てると 胸痛む》
かにかくに 思ひわづらひ のみし泣かゆ
《あれこれ思い わずろうて 考えあぐね 泣くばかり》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八九七)
慰むる 心はなしに 雲がくり 鳴き行く鳥の のみし泣かゆ
 安らかな 気持ちなれんで ピイピイと 鳥鳴くみたい 泣き続けとる》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八九八)
すべも無く 苦しくあれば で走り ななと思へど 児らにさやりぬ
《苦しいて あの世こかと おもうても 子供邪魔して 死ぬこと出来でけん》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八九九)
富人とみひとの 家の児どもの み くたつらむ きぬ綿わたらはも
《金持ちの 家の子供は ふくを んとか 絹や綿入れ》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・九〇〇)
荒栲あらたへの 布衣ぬのきぬをだに 着せかてに くや嘆かむ むすべを無み
《捨てるよな ボロふくさえも ささんと 嘆いてみても どもならんのや》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・九〇一)
水沫みなわなす もろき命も 栲縄たくなはの 千尋ちひろにもがと 願ひ暮しつ
《泡みたい すぐ消えるよな 命でも 長ごとねごうて 暮らしてるんや》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・九〇二)
倭文手しつたまき 数にもらぬ 身にはれど 千年ちとせにもがと 思ほゆるかも
安物やすもんの 飾りみたいな このわしも せめて長生き おもとるのんや》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・九〇三)
かた すえ 心休まらぬ 憶良がいる



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■日めくり万葉集Vol・2(209)天橋も

2013年06月22日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【一月二十七日】放映分

あまはしも 長くもがも 高山たかやまも 高くもがも 月夜見つくよみの 持てる変若をちみず い取り来て 君にまつりて 変若をちしけんはも
てんける橋 なごうあれ てん登る山 たこうあれ 月の世界の 若水わかみずを って帰って きみに 差し上げわこに 戻らせたいに》
                          ―作者未詳―(巻十三・三二四五)


【万葉歌みじかものがたり】阿胡あごの海の》

お前恋しの 旅寝たびねの空に
ふと見る海人娘子おとめ お前にてる
  
娘子をとめらが 麻笥をけに垂れたる 続麻うみをなす 長門ながとの浦に 朝凪に 満ちる潮の 夕凪に 寄せる波の その潮の いやますますに その波の いやしくしくに 我妹子わぎもこに 恋ひつつれば
長門ながとうら 朝凪どきに 満ちる潮 夕凪時分じぶん 寄せる波 益々ますます満ちる 潮みたい 次々寄せる 波みたい お前がれて やって来た》
阿胡あごの海の 荒磯ありその上に はま摘む 海人あま娘子をとめらが うながせる 領巾ひれも照るがに 手に巻ける 玉もゆららに 白栲しろたへの 袖振る見えつ あひ思ふらしも
《(なんの気なしに ふと見ると)阿胡あご荒磯ありその 岩の上 浜菜はまなんでる 海人あま娘子おとめ くび領巾ひれを 輝照きらつかせ 手に巻く玉を ゆらめかせ こっちこうて 白い袖 振ってん見える 気ぃあるんやな(ようよう見たら 良う似てる わしのあの児に 良う似とる)》
                          ―作者未詳―(巻十三・三二四三)
                          (娘子らが~績麻なす=麻糸は長い→長門)
阿胡あごの海の 荒磯ありその上の さざれ波 が恋ふらくは やむ時もなし
阿胡あご荒磯ありそ 寄せて来る波 絶え間ない わしのがれも 絶える間ないで》
                          ―作者未詳―(巻十三・三二四四)
   
あがめる君の けゆくくや
月の変若おちみず 取るすべないか 

あまはしも 長くもがも 高山たかやまも 高くもがも 月夜見つくよみの 持てる変若をちみず い取り来て 君にまつりて 変若をちしけんはも
てんける橋 なごうあれ てん登る山 たこうあれ 月の世界の 若水わかみずを って帰って きみに 差し上げわこに 戻らせたいに》
                          ―作者未詳―(巻十三・三二四五)
あめなるや つきの如く が思へる 君がに ゆらくしも
《日や月と 思いあがめる きみが 日に日けるん 見るんくやしで》
                          ―作者未詳―(巻十三・三二四六)
   
がはの 底なる玉 求めて し玉かも ひりひて し玉かも あたらしき君が ゆらくしも
名川ながわ底の 玉なんや もぐり求めた 玉なんや もぐひろうた 玉なんや (大切だいじ大切だいじの 玉みたい) えなしの きみが けんの見るん くやしいで》
                          ―作者未詳―(巻十三・三二四七)



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■日めくり万葉集Vol・2(208)うち霧らし

2013年06月19日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
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【一月二十六日】放映分

うちらし 雪は降りつつ しかすがに 我家わぎへの園に うぐひす鳴くも
《空おおい 雪降るのんに 鶯が もう来てからに 庭で鳴いとる》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一四四一)

【万葉歌みじかものがたり】《あさるきぎしの》

旅人たびとが明けた
佐保さほ大納言家の当主となった 家持やかもち
時に まだよわい十六
旅人の資人しじん 余明軍よのみょうぐんは 
一年の明けと共に その任がかれる

まつりて いまだ時だに かはらねば 年月のごと 思ほゆる君
《お仕えし 日ィ浅いのに 長いこと つかえた思う 家持あなた様です》
                         ―余明軍よのみょうぐん―(巻四・五七九)
あしひきの 山にひたる すがの根の ねもころ見まく しき君かも
《出来るなら すがの根みたい 長々と お仕えしたい 家持あなた様です》
                         ―余明軍よのみょうぐん―(巻四・五八〇)

別れに際し 余明軍よのみょうぐん
かねての 旅人から預かった 書状を差し出す
「大殿さま 身罷みまかりの折 お預かりのものです」

さとしのこと―
一、 大伴家 伴造とものみやつことしてのいさおし忘れず 
天皇おおきみへの仕え一途いちずに励むこと
一、政治まつりごとがこと 関わり浅きが 上策 
扇動やからに付き従うは げんに避くるべきこと
一、 人付き合い 世渡りが為 うたつくりがかなめ
切磋琢磨せっさたくまし 一廉ひとかど歌人うたびと目指すべきこと
一、 歌修錬は 我が遺稿いこう 並びに筆録ひつろく先人せんじん 人麻呂殿 赤人殿 憶良殿らの筆にまねぶこと

 かねがね 父上が 仰せのこと
大伴家いえ守り 盛運せいうん得るに 心せねばなるまい
それ にしても
父上 我が歌の稚拙ちせつを ようくご存知
励まねばならぬが 今ひとつしょうに合わぬわ)

家持 は 
作り置いた 真似ごと歌を 思いしていた

うちらし 雪は降りつつ しかすがに 我家わぎへの園に うぐひす鳴くも
《空おおい 雪降るのんに 鶯が もう来てからに 庭で鳴いとる》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一四四一)
春の野に あさるきぎしの つまごひに おのがあたりを 人に知れつつ
《春の野で えさきじは 連れ呼んで 居場所猟師りょうしに 教えとるがな》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一四四六)
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余明軍よのみょうぐんの歌】
しめひて 我がさだめてし 住吉すみのえの 浜の小松こまつは のちも我が松
しめ張って わしのと決めた 住吉すみのえの 浜の小松こまつは わしのやずっと》(小松=若い娘子)
                         ―余明軍よのみょうぐん―(巻三・三九四)




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■日めくり万葉集Vol・2(207)楽浪の

2013年06月15日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【一月二十五日】放映分

楽浪ささなみの 志賀津しがつの子らが まかの 川瀬かはせの道を 見ればさぶしも
楽浪さざなみの 滋賀しがのあの児が 水死んだ云う 川の瀬の道 見てたらさみし》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻二・二一八)

【万葉歌みじかものがたり】志賀津しがつの子らが》

(あの日の湖畔こはん さざ波が光っていた
 出仕しゅっしして まだ日も浅い 近江おうみの宮
 何知らぬ 若僧わかぞうに 絢爛きらきらしい宮であった
 それにも増して 遠くにちらと見た 采女うねめ
 あぁ吉備津きびつの采女
 美麗きらきらしい限りであった)

秋山の したへるいも なよ竹の とをよる子らは いかさまに 思ひれか たくなはの 長きいのちを 
《秋の黄葉もみじが 照るようで しなやか竹の ような児が 何を思たか 分からんが はかのうなって たんや》 
露こそば あしたに置きて ゆふへは ゆといへ 霧こそば ゆふへに立ちて あしたは すといへ
《露うのんは 朝結び 夕方なると 消えるう 霧言うもんは 夕方ばん立って 朝来た時に 消えて仕舞う》 
あづさゆみ おと聞くわれも おほに見し ことくやしきを 敷栲しきたへの 手枕たまくらまきて つるぎ大刀たち 身にけむ 若草の そのつまの子は 
《あの児評判うわさは 聞いてたが 気に留めせんと ったんや 手枕てまくらて 仲うに 並んで寝てた 連れ合いは》 
さぶしみか 思ひてらむ くやしみか 思ひ恋ふらむ 時ならず 過ぎにし子らが 朝露あさつゆのごと 夕霧ゆふきりのごと
さみしゅう思て 寝てんかな くやしゅう思て 偲ぶんか 寿命じゅみょう待たんと 死んだ児は まるで朝露 夕霧や》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻二・二一七)
楽浪ささなみの 志賀津しがつの子らが まかの 川瀬かはせの道を 見ればさぶしも
楽浪さざなみの 滋賀しがのあの児が 水死んだ云う 川の瀬の道 見てたらさみし》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻二・二一八)
そらかぞふ 大津おほつの子が 逢ひし日に おほに見しかば 今ぞくやしき
《大津の児 気にもめんと 見てた日が 今となったら 悔しでしきり》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻二・二一九)

いにしえ思う人麻呂
ぎるは キラキラしい 宮 采女うねめ

楽浪ささなみの 比良ひら山風の 海吹けば りする海人あまの そで返る見ゆ
比良山ひらやまの 吹き下ろし風 うみに吹き 漁師りょうしの袖が ひるがえっとる》【槐本つきもとの歌一首】
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻九・一七一五)
もののふの 八十やそがはの 網代あじろに いさよふ波の ゆくへ知らずも
《宇治川の 網代あじろの木ぃに 寄る波は よどみたゆたい 何処どこ行くんやろ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二六四)
いもらがり 今木いまきみねに 茂り立つ つま松の木は ふるひと見けむ
今木いまきみね 枝葉えだはしげらし 立つ松を むかしの人も 見たんやろうか》
                           ―作者未詳(人麻呂作?)―(巻九・一七九五)
                         (宇治若郎子うじのわかいらつこ-仁徳異母弟-の宮処〈宇治〉にて)

懐古かいこ感懐かんかい胸底むなそこに秘め 人麻呂は 帰路きろを辿る 



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