犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(235)おもしろき

2014年01月22日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【三月五日】放映分
おもしろき 野をばな焼きそ 古草ふるくさに 新草にひくさまじり ひはふるがに
おもむきの ある冬の野を 焼かんとき 古草ふるくさ新芽しんめ 出るまましとき》
                          ―東 歌―(巻十四・三四五二)


【万葉歌みじかものがたり】乎那をな

恋歌 多い 東歌
        中に雑歌ぞうかも 幾許いくばく


歌は手児名てこなに 海人あまふね歌に
広がる原野 古草ふるくさ新芽しんめ
草深くさふか荒野あらの 鳴くほととぎす
笑顔大切だいじや 長命ながいき祈り

葛飾かづしかの 真間まま手児名てこなが ありしかば 真間の磯辺おすひに 波もとどろに
葛飾かつしかの 真間まま手児名てこなが 生きてたら 波騒ぐよに 男騒ぐで》
                          ―東 歌―(巻十四・三三八五)
白栲しろたへの ころもの袖を 麻久良我まくらがよ 海人あま漕ぎ見ゆ 波立つなゆめ
《袖くる 麻久良我あくらがあたり 海人あまの船 漕いでん見える 波立たんとき》
                          ―東 歌―(巻十四・三四四九)
葛飾かづしかの 真間まま浦廻うらまを 漕ぐ船の 船人ふなびとさわく 波立つらしも
《真間の浦 漕いどる船で 船頭が えろあわててる 波出たらしな》
                          ―東 歌―(巻十四・三三四九)
夏麻なつそ引く 海上潟うなかみがたの 沖つに 船はとどめむ さけにけり
海上うなかみの 潟の沖洲おきすに 船めよ 夜とっぷりと けたよってに》
                          ―東 歌―(巻十四・三三四八)
おもしろき 野をばな焼きそ 古草ふるくさに 新草にひくさまじり ひはふるがに
おもむきの ある冬の野を 焼かんとき 古草ふるくさ新芽しんめ 出るまましとき》
                          ―東 歌―(巻十四・三四五二)
草蔭くさかげの 安努あのな行かむと りし道 安努あのは行かずて 荒草あらくさ立ちぬ
《草深の 安努あの行くために 付けた道 つうじんままに 雑草くさえて仕舞た》
                          ―東 歌―(巻十四・三四四七)
信濃しなのなる 須我すが荒野あらのに 霍公鳥ほととぎす 鳴く声聞けば 時過ぎにけり
《ほととぎす 須我すが荒野あらので 鳴いとおる あれから何年 ったことやろ》
(埋葬の 荒野で鳴くよ ほととぎす ときすぎときすぎ 月日ったで)
                          ―東 歌―(巻十四・三三五二)
おのを おほになひそ 庭に立ち ますがからに 駒に逢ふものを
《その命 おろそかしなや 庭笑ろてたら あの人の馬 逢えるてうで》
                          ―東 歌―(巻十四・三五三五)
らふ このむかの 乎那をなの ひじにつくまで 君がもがも
《真向かいの 乎那おなちびり 泥洲なるまで あんた長生き されますように》
                          ―東 歌―(巻十四・三四四八)



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■日めくり万葉集Vol・2(234)世間を

2014年01月18日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
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【三月二日】放映分
世間よのなかを 常無きものと 今ぞ知る 平城ならみやこの 移ろふ見れば
《世の中は むなしいもんと 分かったで 平城ならみやこの さびれん見たら》
                         ―作者未詳―(巻六・一〇四五)


【万葉歌みじかものがたり】みやことなりぬ
時代移りの 悪戯いたずらなのか ていの思いの たわむれなのか
の都に 賑いあれど 旧都平城宮ならみや 夕日に沈む

くれなゐに 深くみにし こころかも 平城ならみやこに 年のぬべき
《こんなにも 心馴染なじんだ 平城みやこ 荒れたまんまで 日ィつのんか》
                         ―作者未詳―(巻六・一〇四四)
世間よのなかを 常無きものと 今ぞ知る 平城ならみやこの 移ろふ見れば
《世の中は むなしいもんと 分かったで 平城ならみやこの さびれん見たら》
                         ―作者未詳―(巻六・一〇四五)
いはつなの また変若ちかへり あをよし 平城ならの都を またも見むかも
つたの葉は またあおなるで 平城みやも またあおよし 成らんやろうか》
                         ―作者未詳―(巻六・一〇四六)
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甕原みかのはら宮 名前を替えて みやこと 位が上がる
又の元の名 布当ふたぎの原は 今や帝都と 花咲き誇る

我が大君おほきみ 神のみことの 高知らす 布当ふたぎの宮は 百樹ももきなし 山は木高こだかし 落ちたぎつ 瀬のも清し
天皇おおきみの お治めなさる 布当宮ふたぎみや 木々が茂って 山高い 激流ながれ瀬音せおと 清らかや》 
鴬の 来鳴く春へは いはほには 山下光り 錦なす 花咲きををり さ男鹿の 妻呼ぶ秋は あまらふ 時雨しぐれをいたみ さつらふ 黄葉もみち散りつつ 
《鶯鳥が 鳴く春は 山裾いわは 照り光り 錦きらめく 花が咲く 男鹿おじか連れ呼ぶ 秋来たら 空をおおって 時雨しぐれ降り 黄葉もみじほんのり 色くよ》 
八千年やちとせに れつがしつつ 天の下 知らしめさむと 百代ももよにも かはるましじき おほみやどころ
八千年はっせんねんの のちまでも 世ぎ次々 まれられ この国ずっと 治めはる 百代ひゃくだいまでも 変わらんと 続いて行くよ ここの大宮所みやどこ
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ歌集―(巻六・一〇五三)

泉川 ゆく瀬の水の 絶えばこそ 大宮所おほみやどころ 移ろひかめ
《大宮が さびれる時は 泉川 流れの水が 枯れる時やで(いでそんなん)》
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ歌集―(巻六・一〇五四)
布当ふたぎ山 山並やまなみ見れば 百代ももよにも かはるましじき 大宮所おほみやどころ
布当山ふたぎやま つらなっとるで 百代ひゃくだいも つらなり行くで ここの大宮所みやどこ
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ歌集―(巻六・一〇五五)
娘子をとめが うみくといふ 鹿背かせの山 時のければ みやことなりぬ
娘子おとめらが あさかせの 鹿背の山 時が来たんで みやこになった》
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ歌集―(巻六・一〇五六)
鹿背かせの山 樹立こだちしげみ 朝らず 来鳴きとよもす うぐひすの声
《鹿背山は 木ぃ繁茂いっぱいや 鶯が 毎朝来ては 声響かせる》
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ歌集―(巻六・一〇五七)
狛山こまやまに 鳴く霍公鳥ほととぎす 泉川 わたりを遠み 此処ここに通はず
狛山こまやまで 鳴く鶯は 泉川かわひろて よう渡れんで ここよらんわ》
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ歌集―(巻六・一〇五八)



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■日めくり万葉集Vol・2(233)娘子らが

2014年01月15日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
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【三月一日】放映分
娘子をとめらが 插頭かざしのために 風流士みやびをの かづらのためと 敷きませる 国のはたてに 咲きにける 桜の花の にほひはもあなに
娘子おとめこぞって 髪にす 伊達だてな男が かづらする このもとの 国中くになかに ち咲く花の さくらばな そのえの 見事みごとなことよ》 
                                                   ―作者未詳―(巻八・一四二九)

【万葉歌みじかものがたり】にほひはもあなに
寒さこらえて つつましに咲く
梅花うめに続いて 春いろどるは
ぱっと咲く花 爛漫らんまん
染まる 色香に 浮き立つ心

うちなびく 春きたるらし 山のの とほ木末こぬれの 咲きゆく見れば
《春さかり てるようやで 山間やまあいの 遠く咲く桜花はな 日々ひびえてくで》
                         ―尾張連おわりのむらじ―(巻八・一四二二)
春山の 咲きのををりに 春菜はるな摘む 妹がしらひも 見らくしよしも
春山はるやまの 桜花はなく下で む児 白紐ひも光ってる あぁはるなんや》 
                         ―尾張連おわりのむらじ―(巻八・一四二一)

若宮年魚麻呂わかみやのあゆまろ 口誦こうしょう歌】
娘子をとめらが 插頭かざしのために 風流士みやびをの かづらのためと 敷きませる 国のはたてに 咲きにける 桜の花の にほひはもあなに
娘子おとめこぞって 髪にす 伊達だてな男が かづらする このもとの 国中くになかに ち咲く花の さくらばな そのえの 見事みごとなことよ》 
                                                   ―作者未詳―(巻八・一四二九)
去年こぞの春 へりし君に ひにてし 桜の花は 迎へけらしも
去年きょねん春 うたあんたを 恋いしたい 迎え咲いたで 桜の花が》
                          ―作者未詳―(巻八・一四三〇)

春雨はるさめの しくしく降るに 高円たかまとの 山の桜は いかにかあるらむ
《春の雨 しきり降ってる 高円たかまどの 桜散らんと まだ有るやろか》
                         ―河辺東人かわべのあずまひと―(巻八・一四四〇)
沫雪あわゆきか はだれに降ると 見るまでに 流らへ散るは 何の花ぞも
沫雪あわゆきが はらはらると 見えるに 吹き散るのんは なんの花やろ》
                         ―駿河釆女するがのうねめ―(巻八・一四二〇)

ぬるむ川辺に 山吹やまぶき咲いて
 馬酔木あしび花房 たわわと垂れる)

かはづ鳴く 神奈備かむなび川に 影見えて 今か咲くらむ 山吹の花
《今頃は 河鹿かじか鳴く川 神奈備川かんなびに 山吹花やまぶきかげを うつしてるかな》
                         ―厚見王あつみのおおきみ―(巻八・一四三五)
押し照る 難波なにはを過ぎて うちなびく 草香くさかの山を ゆふれに 我が越えれば 山もに 咲ける馬酔木あしびの 悪しからぬ 君をいつしか きて早見む
難波なにわぃを 通り過ぎ 草香くさかの山を 夕暮ゆうぐれに わしが越えよと 来たときに 山道やまみちおおい 咲く馬酔木あしび かんとしたう あのかたに そのうちはよう 逢いたいもんや》
                          ―作者未詳―(巻八・一四二八)
                          (馬酔木=あしび→悪<あ>)



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■日めくり万葉集Vol・2(232)春の野に

2014年01月11日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【二月二十九日】放映分
春の野に すみれみにと し我れぞ 野をなつかしみ 一夜ひとよ寝にける
《春の野に すみれを摘みに 来たんやが 気分えんで 泊って仕舞しもた》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻八・一四二四)

【万葉歌みじかものがたり】すみれみにと

山部赤人やまべのあかひとは 人付き合いが 上手うまくなかった
人一倍の気づかい それが相手に伝わらない
気遣い の負担を させまいとする心
これ が 相手を遠ざける

 梅見 菜摘みに 誘いたいが 降った雪にホッとする自分がいる)
我が背子に 見せむとおもひし 梅の花 それとも見えず 雪の降れれば
《梅の花 雪降り積もり 見えんがな 友に見せよと おもうていたに》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻八・一四二六)
明日あすよりは 春菜はるなまむと めし野に 昨日きのふ今日けふも 雪は降りつつ
明日あしたから 若菜み行こ 決めたのに その野は雪や 昨日も今日も》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻八・一四二七)

 春の楽しみを味わえないものか それも あの児と)
春の野に すみれみにと し我れぞ 野をなつかしみ 一夜ひとよ寝にける
《春の野に すみれを摘みに 来たんやが 気分えんで 泊って仕舞しもた》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻八・一四二四)

(思うては 自らあきらめ こと成っての楽しい暮らし 仮想おもううての日々が過ぎいく)
あしひきの 山桜花 ならべて かく咲きたらば いと恋ひめやも
《桜花 ずうっとなごう 咲くんなら こんなに見とう 思いはせんに》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻八・一四二五)

ひそかに思う相手 相手をおもんばかり 恋心告げもせず 悶々もんもんと歌うしかない)
春日はるひを 春日かすがの山の 高座たかくらの 御笠みかさの山に 朝さらず 雲たなびき 貌鳥かほどりの なくしば鳴く 
春日かすがの峰の 御笠の山に 朝は常時いっつも 雲棚引いて 郭公鳥かっこうどりは 鳴き続けとる》
雲居くもゐなす 心いさよひ その鳥の 片恋かたこひのみに 昼はも 日のことごと よるはも のことごと 立ちてて 思ひぞ我がする 逢はぬゆゑ
 その雲みたい 心は揺れて 鳥の名みたい 片恋(カッコウ)しとる 夜昼なしに 立っても居ても 沈む思いや 逢われんよって》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻三・三七二)
高座たかくらの 御笠みかさの山に 鳴く鳥の めばがるる 恋もするかも
 次々に 恋し心が 湧いてくる 御笠の山で 鳴く鳥みたい》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻三・三七三)

(伝えぬが 分かって欲しい恋心 やがてのあきらめ 次なる相手を 探すしかない)
我がやどに 韓藍からあゐおほし 枯れぬれど りずてまたも かむとぞ思ふ
《庭先に 植えた鶏頭けいとう 枯れたけど えでそんなら また植えるから》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻三・三八四



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■日めくり万葉集Vol・2(231)巨椋の

2014年01月08日 | 日めくり万葉集
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【二月二十八日】放映分
巨椋おほくらの 入江とよむなり 射目人いめひとの 伏見ふしみに かり渡るらし
巨椋池おぐらいけ 入江鳴き声 響いてる 伏見の田ぁへ 雁渡るんや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻九・一六九九)


【万葉歌みじかものがたり】しげかり

秋の訪れ 雁呼びたり
聞くかりは せつう響く
萩連れ 鹿は 声響かせて
時雨しぐれ降るたび 萩花散らす

春草はるくさを 馬咋うまくひ山ゆ 越えなる かり使つかひは 宿やどぐなり
咋山くいやまを 越える雁の 家使つかいやに 此処飛び過ぎた 家どやろかな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻九・一七〇八)
巨椋おほくらの 入江とよむなり 射目人いめひとの 伏見ふしみに かり渡るらし
巨椋池おぐらいけ 入江鳴き声 響いてる 伏見の田ぁへ 雁渡るんや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻九・一六九九)
                          (射目人=狩りで獲物を射る人→伏せて待つ→伏見)
秋風に 山吹やまぶきの瀬の 鳴るなへに あまくもかける かりへるかも
 秋風で 山吹の瀬ぇ 騒ぐ時 空飛ぶ雁の 声聞こえたで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻九・一七〇〇)
                          (山吹=地名)
三諸みもろの 神奈備かむなび山に たち向ふ 御垣みかきの山に 秋萩の 妻をかむと あさ月夜づくよ 明けまくしみ あしひきの 山彦やまびことよめ 呼びたて鳴くも
神奈備かんなびの 山の向かいの かき山 あきはぎづまを さそおして 月夜けるん しいでと 声ひびかして 雄鹿しか鳴いとるよ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻九・一七六一)
明日あすよひ 逢はざらめやも あしひきの 山彦やまびことよめ 呼びたて鳴くも
今夜こんやにも 逢えるんやろに 山陰やまかげで 声ひびかして 必死ひっし鳴いとる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻九・一七六二)
                          (明日=一日は日没から始まると考えた)
鹿しかの 心あひおもふ 秋萩の 時雨しぐれの降るに 散らくししも
おす鹿しかの 心の妻の 秋萩が 時雨しぐれたび 散るんはしで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇九四)
ゆふされば 野辺のへの秋萩 うら若み つゆにぞ枯るる 秋待ちかてに
 夕方が 来たら秋萩 若い葉ぁ 露で枯れるで 秋来るまでに》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇九五)



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平成26年 新年ご挨拶

2014年01月01日 | メッセージ
あけまして おめでとう ございます

「万葉歌みじかものがたり」は 昨年末で第八巻の刊行に漕ぎ着けました。
第八巻が 書店店頭に並ぶのは 1月下旬頃でしょうか。
全十巻の余すところ二巻になりました。
原稿は私の手から離れ 構成・印刷・刊行を待つばかりです。

今年は『源氏物語』に取り組もうと思っています。

旧倍のご声援を賜われば光栄です。

ことしもよろしくお願いします。

年賀状を添えての ご挨拶とさせて頂きます。



■日めくり万葉集Vol・2(230)春の花

2013年12月28日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【二月二十七日】放映分
春の花 今は盛りに にほふらむ 折りて插頭かざさむ 手力たぢからもがも
《春花は 今を盛りと 咲いとるが 折ってかみす 力も出んわ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻十七・三九六五)


【万葉歌みじかものがたり】手力たぢからもがも

やまいの苦しみは 十日余り続き
ようやく 小康しょうこう得たものの
足腰え 身体からだはだるく
 は 家持をすっかり 気弱にしていた
こころだのみは おぬしばかりと 
大伴池主いけぬしへ 文を

春の花 今は盛りに にほふらむ 折りて插頭かざさむ 手力たぢからもがも
《春花は 今を盛りと 咲いとるが 折ってかみす 力も出んわ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻十七・三九六五)
うぐひすの 鳴き散らすらむ 春の花 何時しか君と 手折たを插頭かざさむ
《鶯が 鳴き散らしとる 春の花 池主あんた髪挿かざし 何時いつ出来るやろ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻十七・三九六六)

(困った 国守かみ殿じゃ
  これしきの病 吹き飛ばせぬか
 坊ちゃま育ち 致し方いか)

 主から 見舞いの文が届く
 お手紙拝見 見事な文章感じ入ります
  添えられし歌 これも素晴らしく
 口ずさむたび 心洗われます
  春 そう 今 春たけなわ
 春宵くれおもむき 桃の花 飛び交う蝶 
 緑なすやなぎ 葉隠はがくれにさえずる鶯
 これを たたえずして なんの人生でしょう
  二人しての 楽しみ
  これを 病が裂き 悔しくてなりません
  私の春は
 琴もし 酒も無し 友も無し で
 過ぎる のでしょうか》
(少し 嫌味かるが 良しとするか)
  
山峽やまがひに 咲ける桜を ただひと目 君に見せてば 何をか思はむ
山合やまあいに 咲いた桜を 一目でも 見せられたなら 言うこといで》
                         ―大伴池主おおとものいけぬし―(巻十七・三九六七)
うぐひすの 鳴く山吹 うたがたも 君が触れず 花散らめやも
《鶯の 鳴き来る山吹はなは あんたの手 れへんままで 散るもんかいな》
                         ―大伴池主おおとものいけぬし―(巻十七・三九六八)




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■日めくり万葉集Vol・2(229)焼き大刀の

2013年12月18日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
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【二月二十四日】放映分
やき大刀たちの かど打ちはなち 大夫ますらをの 寿とよ御酒みきに 我れひにけり
大刀たち振って しのぎ打ち付け いのりした 祝いの酒に わしうて仕舞た》
                         ―湯原王ゆはらのおおきみ―(巻六・九八九)


【万葉歌みじかものがたり】《》
今日けふ降る雨に
騒ぎふざける うたげがあれば
 深い 集いもあるぞ

安貴王あきおうの 誕生祝賀いわい
息子市原王いちはら 寿ことほぎ詠う
市原王いちはら叔父の 湯原王ゆはらのおう
大刀 舞踊り 賀の歌添える

春草は のちは移ろふ いはほなす 常磐ときはにいませ たふとが君
《春草は 若々しけど 枯れて仕舞う 岩でってや 父君ちちぎみ様よ》
                         ―市原王いちはらのおおきみ―(巻六・九八八)
やき大刀たちの かど打ちはなち 大夫ますらをの 寿とよ御酒みきに 我れひにけり
大刀たち振って しのぎ打ち付け いのりした 祝いの酒に わしうて仕舞た》
                         ―湯原王ゆはらのおおきみ―(巻六・九八九)

明日香豊浦よゆらの 尼寺集い
行く秋思い 萩花はぎはな偲ぶ

明日香川 行きる岡の 秋萩は 今日けふ降る雨に 散りか過ぎなむ
《明日香川 めぐ岡辺おかべの 秋萩は ってる雨で 散るのんやろか》
                         ―丹比国人たじひのくにひと―(巻八・一五五七)
うづら鳴く りにし里の 秋萩を おもふ人どち 相見あひみつるかも
《この古い 昔の里の 秋萩を 心の友と ながめたんやで》
                         ―沙弥尼さみに―(巻八・一五五八)
秋萩は さかり過ぐるを いたづらに 插頭かざしにさず 帰りなむとや
《秋萩は 盛り短い そやうに しもせんと 帰るて言うか》
                         ―沙弥尼さみに―(巻八・一五五九)

歌舞かぶ音曲おんぎょくを つかさどる おうや役人 集い来て
暮れのこの日を 楽しもと 葛井ふじい広成ひろなり 辞を述べる
近時きんじ思うに 古舞盛ん 年もふるなり 暮れんとす
そこでいにしえ 偲びつつ 古歌を皆して 唱うべし
ここに二つの古い歌 わしが披露に 及ぶゆえ
集う風雅ふうがの 皆々は 一念発起ほっき 唱うべし」

我がやどの 梅咲きたりと らば と言ふに似たり 散りぬともよし
うちの庭 梅咲いたでと たら やな 散ってもえか》
                          ―作者未詳―(巻六・一〇一一)
春されば ををりにををり うぐひすの 鳴く我が山斎しまぞ まずかよはせ
《春来たら 梅咲きほこり 鶯も 鳴く庭やから どうぞおしを》
                          ―作者未詳―(巻六・一〇一二)

天平十一年(739)十月 光明皇后宮にて維摩ゆいま
大唐・高麗こま音曲おんぎょくかなで この歌唱う 
琴弾き 市原王いちはらおう 忍坂王おさかおう
歌人うたびと 田口家守たぐちやかもり 河辺東人かわべあずまひと 置始長谷おきそめはつせら十数人

時雨しぐれの雨 なくな降りそ くれなゐに にほへる山の 散らまくしも
時雨しぐれ雨 そんなしっぽり 降りないな あか黄葉もみじの 散るのんしで》
                          ―作者未詳―(巻八・一五九四)



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■日めくり万葉集Vol・2(228)籠もよ

2013年12月04日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【二月二十三日】放映分
もよ みち くしもよ みくしち この岡に ます児 家聞かな 名らさね 
かごさげて 良えくし持って みしておる そこなる娘 何処どこじゃ 名はなんちゅうか》
そらみつ 大和やまとくに おしなべて 我れこそ しきなべて 我れこそませ 我れこそはらめ 家をも名をも
《ここのうるわし 大和の国を おさめおるんは このわしなるぞ  仕切っておるは わしこそなるぞ  わしも名告るぞ 名前も家も   (お前も名告れ 名前と家を)》

【万葉歌みじかものがたり】もよ み持ち

 は 春
芽吹きの時期とき
場所は 泊瀬はつせ小国おぐに
陽光ようこう降り注ぐ 野の原
若菜 が芽を出している

娘子おとめご 登場
若菜 摘みを 始める
楽しげ な 摘む手の動き
げのかごに 春風揺れる
手の掘り串に 春日はるひが光る

若者  登場
娘子おとめごに 語りかける
「むすめよ むすめ みのむすめ
 どこ に住むのじゃ そなたの家は 
 わし を 誰かと 問い尋ねるか
 この 国仕切る 王こそ わしじゃ
 わしも 教える と 名前」

春の催し 奉納ほうのう舞台
豊作祈る 歌謡うたいの劇は
笑い を誘う 求婚舞踊
伝え伝えて  民謡風に

もよ みち 
  くしもよ みくしち 
    この岡に ます児 
      家聞かな 名らさね 
かごさげて 良えくし持って
   みしておる そこなる娘 
     何処どこじゃ 
        名はなんちゅうか》
そらみつ 大和やまとくに
  おしなべて 我れこそ
    しきなべて 我れこそませ
      我れこそはらめ 家をも名をも
《ここのうるわし 大和の国を
  おさめおるんは このわしなるぞ
      仕切っておるは わしこそなるぞ
         わしも名告るぞ 名前も家も
         (お前も名告れ 名前と家を)》
                         ―雄略天皇ゆうりゃくてんのう―(巻一・一)

舞台に 繰り広げられる 滑稽こっけい仕草しぐさ
笑いに満ちる 茣蓙ござ桟敷さじき
豊作 祈願の 芝居は 続く



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■日めくり万葉集Vol・2(227)やくもさす

2013年11月30日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【二月二十二日】放映分
八雲やくもさす 出雲いづもの子らが 黒髪くろかみは 吉野の川の おきになづさふ
《出雲から 出て来た児ぉの 黒髪が 川底そこらめき 漂うとおる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・四三〇)


【万葉歌みじかものがたり】国忘れたる

人麻呂 は 夢を見ていた
みんな  礼を言ってくれる
手向たむけ歌への礼だ

(これは 狭岑さみね島の野伏のぶせ人
  ヨメナ また咲いてますかな)

(あれに 来るのは 香久山かぐやまのごじんではないか
 そなえの歌は たしか・・・)
草枕くさまくら 旅の宿やどりに つまか 国忘れたる 家待たまくに
 誰やろか こんなとこ来て 死んではる 国はどこやろ 家待つやろに》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・四二六)

(次なるは 出雲娘子いずものおとめ
 おぉ 土形娘子ひじかたのおとめと連れどうて 二人とも 火葬かそうに付されたので あったな あわれなことに)
隠口こもりくの 泊瀬はつせの山の 山のに いさよふ雲は 妹にかもあらむ
《泊瀬山 山の狭間はざまに ただようて たゆとう雲は あの児やろうか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・四二八)
八雲やくもさす 出雲いづもの子らが 黒髪くろかみは 吉野の川の おきになづさふ
《出雲から 出て来た児ぉの 黒髪が 川底そこらめき 漂うとおる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・四三〇)
山のゆ 出雲いづもらは きりなれや 吉野の山の みねにたなびく
 出雲の児 霧になったか 山の上 雲と一緒に 棚引いとおる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・四二九)

 次のお方・・・
  これは 人麻呂さまでは ありませぬか
  人麻呂さまは まだ ご存命のはず
 よって 手向けの歌は ご用意致しておりませぬ いのでございます 無いといったら 無い!)

 ご主人さま! ご主人さまぁ! しっかり なさいませ うなされておりますぞ」
ともに 揺り動かされ ぼんやりと 目を覚ます人麻呂

先日来の 高熱 流行はやりの熱病か
石見いわみへと向かう 国境くにざかいの山の奥

朦朧もうろうとした意識の中 人麻呂の口が かすかに動く
 もう い か ん お迎え じゃ
 山中さんちゅう亡骸なきがらは 見苦しい 引き取りは 石見国庁の 丹比笠麿たじひのかさまろ殿に・・・
依羅娘子よさみのをとめには 歌を託す 筆 筆を・・・」

当代きっての 歌人うたびと 柿本人麻呂
うつろろな目は 嶺の雲を 追っている




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■日めくり万葉集Vol・2(226)勝鹿の

2013年11月23日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【二月二十一日】放映分
勝鹿の 真間の手児名てこなが 麻衣あさぎぬに 青衿あをくびけ ひたを にはて 髪だにも きはけづらず くつをだに 穿かず行けども にしきあやの 中に包める 斎児いはひごも いもかめや 
《葛飾真間の 手児名てこなて云う児 色えりの 麻ふくかぶり 麻そのままの 粗末穿いて 髪もけずらん 裸足はだしの児やに にしき服着て 育った児にも 負けん位に 器量きりょうえ児》


【万葉歌みじかものがたり】手児名てこなし思ほゆ》
これほどの つたえ話があろうか
宇合うまかい様も さぞ満足されるであろう
下総しもふさ真間ままではあるが 常陸ひたち隣国りんごく 
番外 に収録することで 世に伝えられる

とりが鳴く あづまの国に いにしへに ありける事と 今までに 絶えず言ひる  
あずまの国に 伝わる話 昔を今に 伝える話》
勝鹿の 真間の手児名てこなが 麻衣あさぎぬに 青衿あをくびけ ひたを にはて 髪だにも きはけづらず くつをだに 穿かず行けども にしきあやの 中に包める 斎児いはひごも いもかめや 
《葛飾真間の 手児名てこなて云う児 色えりの 麻ふくかぶり 麻そのままの 粗末穿いて 髪もけずらん 裸足はだしの児やに にしき服着て 育った児にも 負けん位に 器量きりょうえ児》
望月もちづきの れるおもわに 花のごと みて立てれば 夏虫の 火にるが如 みなとりに 船漕ぐ如く 行きかぐれ 人のいふ時 
綺麗きれえ面差おもざし 笑顔で立つと 火に入る虫か 湊集あつまる船か 男押しかけ 嫁にと騒ぐ》
いくばくも けらじものを 何すとか 身をたな知りて 波のの さわみなとの おくに 妹がこやせる 
《なんぼ生きても 短い命 私ごときに このな騒ぎ そんな値打ちは うちには無いと 水底みなそこ深く 沈みてすよ》
とほき代に ありける事を 昨日きのふしも 見けむがごとも 思ほゆるかも
《昔のことと 伝えは言うが 昨日きのうのことに 思えてならん》
                         ―高橋蟲麻呂たかはしのむしまろ歌集―(巻九・一八〇七)

葛飾かつしかの 真間まま見れば 立ちならし 水ましけむ 手児名てこなし思ほゆ
真間ままの井を 見てると幻視える あの手児名てこな ここで水汲む 可愛かいらし姿》
                         ―高橋蟲麻呂たかはしのむしまろ歌集―(巻九・一八〇八)

それにしても 可哀想かわいそうなことをしたものだ
昔のおみなは こうも純情じゅんじょう可憐かれんであったか
 の女ときたら・・・
言う まい 言うまい

蟲麻呂の固い心に ひと時 みがこぼれる




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■日めくり万葉集Vol・2(225)風をだに

2013年11月20日 | 日めくり万葉集
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【二月二十日】放映分
風をだに 恋ふるはともし 風をだに むとし待たば 何かなげかむ
うらやまし 風と間違まちごて うちなんか 待つ人うて なげかれへんわ》
                         ―鏡王女かがみのおおきみ―(巻四・四八九、巻八・一六〇七)


【万葉歌みじかものがたり】 b>すだれ動かし

天智八年(669)中臣鎌足なかとみのかまたり 死去
中大兄皇子なかのおおえのおうじ 天皇おおきみ即位の 翌年であった

大化改新以来の盟友めいゆう
自分のきさき 鏡王女かがみのおおきみを 正妻として下げ渡し
采女うねめ 安見児やすみこを 与えて優遇した
その 死にあたって
最高冠位 大職冠たいしょくかんに任じ
大臣おおおみの位 藤原の姓をさずけた

信頼すべき 相談相手をくし
天皇おおきみは 近江大津宮での 政務に掛かりっきりであった

久しく  お越しはない
額田王ぬかたのおおきみは 張りのない日々を 送っていた
 空は澄み 山は 赤や黄にもみちしている
 みち狩りの お誘いでもあれば 気も晴れように
そう いえば 昔 前触れなしの突然のお越しがあった もしや そんなことも・・・)

君待つと が恋ひれば わがやどの すだれ動かし 秋の風吹く
《あっすだれ 揺れたおもたら 風やんか あんまりうちが 焦がれるよって》
                         ―額田王ぬかたのおおきみ―(巻四・四八八、巻八・一六〇六)

「えっ 風の所為せいと間違えたの 額田王おおきみ

風をだに 恋ふるはともし 風をだに むとし待たば 何かなげかむ
うらやまし 風と間違まちごて うちなんか 待つ人うて なげかれへんわ》
                         ―鏡王女かがみのおおきみ―(巻四・四八九、巻八・一六〇七)
 鎌足公は 亡くなられたもの」
鏡王女かがみのおおきみは 寂しく つぶやく 
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 鏡王女の歌】
神奈備かむなびの 石瀬いはせもりの 呼子鳥よぶこどり いたくな鳴きそ が恋まさる
石瀬いわせもり 呼子よぶこの鳥よ そう鳴きな せつい恋が 増々よけつのるがな》
                         ―鏡王女かがみのおおきみ―(巻八・一四一九)




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■日めくり万葉集Vol・2(224)ひさかたの

2013年11月13日 | 日めくり万葉集
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【二月十七日】放映分
ひさかたの あまの川瀬に 船けて 今夜こよひか君が わがまさむ
《天の川 舟浮かばして 今夜きょうんや うち待つ岸に あんたがんや》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五一九)


【万葉歌みじかものがたり】わがまさむ

七月 七日 今日 その日
年に 一度の 七夕あきよい

(おお あまの川の中ほど 星のゆらめき)
牽牛ひこぼしの つま迎へぶね 漕ぎらし あま川原かはらに 霧の立てるは
《彦星の 迎えの舟が 出たんやな あま川原かわらに 霧出てるがな》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五二七)

織姫おりひめさん さぞかし 胸躍ときめいて おられるじゃろう)
天の川 浮津ふつ波音なみおと 騒ぐなり わが待つ君し ふなすらしも
《天の川 波ざわざわと 騒いでる うち待つあんた 舟したんや》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五二九)

ひさかたの あまの川瀬に 船けて 今夜こよひか君が わがまさむ
《天の川 舟浮かばして 今夜きょうんや うち待つ岸に あんたがんや》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五一九)

かすみつ 天の川原に 君待つと い行きかへるに の裾濡れぬ
《霞んでる 川原かわらまで出て あんた待ち 行ったり来たり 裾まで濡らし》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五二八)

あまかは 相向き立ちて 我が恋ひし 君ますなり ひも解きけな
《天の川 隔て離され 焦がれ待つ あんた来る来る 早よ支度したくせな》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五一八)

秋風の 吹きにし日より いつしかと  わが待ち恋ひし 君ぞ来ませる
立秋あきの風 吹いた時から 待っとった うちのあの人 来たんや来たで》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五二三)

 ああ 雲が
 二人の逢瀬おうせ 雲が隠す
 雲のやつ 気遣きづかいか・・・
今宵こよい 過ぎれば 一年あと
 せつい 別れが 待っている
  その時の 思い・・・)
玉かぎる ほのかに見えて 別れなば もとなや恋ひむ 達ふ時までは
《喜びの 逢瀬おうせ束の間 夜明よあけたら また焦がれや 今度逢うまで》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻八・一五二六)

 の晴れ間
輝き増す 牽牛けんぎゅうぼし と 織姫おりひめぼし 



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■日めくり万葉集Vol・2(223)心をし

2013年11月06日 | 日めくり万葉集
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【二月十六日】放映分
心をし 無何有むがうさとに 置きてあらば 藐孤射ばこやの山を 見まく近けむ
こだわりの 心捨てたら 不老ふろ不死ふしの 仙人せんにん世界 ぐそこちゃうか》
                          ―作者未詳―(巻十六・三八五一)

【万葉歌みじかものがたり】《海や死にする》

生と死 この無情むじょうなる物
宗教的背景つ これらの歌
この時代 極楽ごくらく往生おうじょう思想 民衆みんしゅうひろがり未だし
作者は 僧侶教養人なりや

心をし 無何有むがうさとに 置きてあらば 藐孤射ばこやの山を 見まく近けむ
こだわりの 心捨てたら 不老ふろ不死ふしの 仙人せんにん世界 ぐそこちゃうか》
                          ―作者未詳―(巻十六・三八五一)
               (無何有むがうさと=「荘子」に云う自然のままで、何の作為もない理想郷)
               (藐孤射ばこやの山=「壮士」に云う不老不死の仙人が住む安楽卿)

鯨魚いさな取り 海や死にする 山や死にする
死ぬれこそ 海はしほて 山は枯れすれ
《あるやろか 海死ぬうん 山死ぬうん
あぁ死ぬで 海干上ひあがるし 山枯れるがな》
                          ―作者未詳―(巻十六・三八五二)

 は生まれて 何れは死ぬる
死ねば魂 行くのは何処いずこ
天の霊界 如何いかなるところ
如何いかに思うや 万葉人まんようびとは 

あめなるや 神楽良ささら小野をのに 茅草ちがや刈り かや刈りばかに うづらを立つも
たまつどう 神楽良ささらの小野で 茅草かや刈るに にわ飛び立つ 人魂ひとだまうずら
                          ―作者未詳―(巻十六・三八八七)
                       (ささらの小野=死者の魂が集まる恐ろしい月世界)
                       (うづら=霊魂そのものが具現化したもの)
  
おきつ国 うしはく君の 屋形やかた 丹塗にぬりの屋形やかた 神の渡る
霊界れいかいの 支配のぬしの 丹塗にぬり舟 死霊しりょうを乗せて あの世へ渡る》
                          ―作者未詳―(巻十六・三八八八)
  
人魂ひとだまの さなる君が ただひとり へりし雨夜あまよの 葉非左さむけ思ほゆ
人魂ひとだまの あんたに独り 出くわした あめ寒気さむけ いまだ消えんわ》
                          ―作者未詳―(巻十六・三八八九)



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■日めくり万葉集Vol・2(222)酒坏に

2013年10月19日 | 日めくり万葉集
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【二月十五日】放映分
酒杯さかづきに 梅の花け 思ふどち 飲みてののちは 散りぬともよし
梅花うめはなを 酒杯さかづき浮かべ 友同士どうし 飲んで仕舞しもたら 散ってもえわ》
                         ―大伴坂上郎女おおとものさかのうえのいらつめ―(巻八・一六五六)


【万葉歌みじかものがたり】飲みてののち

坂上郎女いらつめは 厳しい説諭せつゆを受けていた
一同集められての訓戒くんかいあと
 大伴家本流は 今や 佐保大納言家 
 跡取りは家持やかもちじゃ
 しかるに いまだ若年 後ろだてとて思うに任せず
 老いけたわしでは 如何いかんとも し難い
  頼むは そなたじゃ
 今後の 家刀自いえとじの役目 そなたに託す
 しかるべき人物とのよしみ築き
 一族をたばねることが肝要ぞ」
石川内命婦いしかわのうちみょうぶの言葉に 身を固くする郎女

 先ず 一族融和を図らねば)
佐保 大納言邸 
連日の 一族結束はかりのうたげ
仕切るは 家刀自坂上郎女いらつめ

「さあ 皆の者 うたげじゃ えんじゃ 
 一族縁者えんじゃの 固めのえんじゃ」
軽口を 飛ばして 郎女がうた

かくしつつ  遊び飲みこそ 草木すら 春は咲きつつ 秋は散りゆく
《草木かて 春に花咲き 秋は散る 飲んで遊んで たのしに暮らそ》
                         ―大伴坂上郎女おおとものさかのうえのいらつめ―(巻六・九九五)

(そうそう 大宰府での 梅花うめはなうたげにあったぞ
 『酒杯さかづき梅』に 『散りぬともよし』)

酒杯さかづきに 梅の花け 思ふどち 飲みてののちは 散りぬともよし
梅花うめはなを 酒杯さかづき浮かべ 友同士どうし 飲んで仕舞しもたら 散ってもえわ》
                         ―大伴坂上郎女おおとものさかのうえのいらつめ―(巻八・一六五六)
つかさにも 許したまへり 今夜こよひのみ 飲まむ酒かも 散りこすなゆめ
《おかみかて かめへんてる 宴会や 酒のみ明かそ 散りなや梅花うめよ》
                         ―こたふる人―(巻八・一六五七)
(よしよし 風紀紊乱びんらんにより 宴酒うたげざけは禁じられておるが 身内酒は 許されておる)

 駿河麻呂殿
 そなた 家持やかもちと同じ年ごろ
 友に 見込みある人物もの 誰ぞあるか
  後ろ盾無き家持のため 友を選んでおきたい」
「それならば 似つかわしい御仁ごじんが 
 葛城王かつらぎおう(後の橘諸兄たちばなのもろえ)の御子息 奈良麻呂殿
 若年ながら 才気さいき煥発かんぱつ人物ひと
 おお 橘三千代様のお孫か 高みじゃのう」
「何を 小母おば様なら
  虎穴に入らずんばですよ」

山守やまもりの ありける知らに その山に しめひ立てて ひのはぢしつ
《山番が るの知らんと 山はいり しるしして仕舞て 恥じかいたがな》
                         ―大伴坂上郎女おおとものさかのうえのいらつめ―(巻三・四〇一)
山主やまもりは けだしありとも 我妹子わぎもこが ひけむしめを 人かめやも
《山番が ってもえで あんた来て 付けたしるしや 誰ほどくかい》
                         ―大伴駿河麻呂おおとものするがまろ―(巻三・四〇二)



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