政府は昨日、2010年税制改革で、消費の落ち込みによる税減収を避けるために、厚生労働省が求めた大幅引き上げを見送り1本3円前後の引き上げ方向で調整に入ったとのことだ。
しかし、本当に値上げをすると税収が落ち込むのだろうか。少し検討してみよう。
価格値上げと消費量の減少の関係は、価格弾力性で表せる。ここで、消費量の変化率を⊿y、価格の変化率を⊿xとすれば、価格弾力性eは、次のように表せる。
e=-⊿y/⊿x
∴⊿y=-e⊿x
⊿y=(y-y0)/y0 、 ⊿x=(x-x0)/x0 (y0、x0は、y、xの現在の値)なので、これを代入して整理すると次式となる。
y=ey0(1-x/x0)+y0 ・・・ (1)
また、売り上げの増加分をzとすれば、
z=xy-x0y0 ・・・ (2)
である。
(1)式を(2)式に代入して整理すれば、次式となる。
z=-(ey0/x0)x^2+(1+e)y0x-x0y0 ・・・(3)
zは、xに関する二次関数なので、zが最大値をとるxの値は、中学校の数学でも解けるが、ここでは、zをxで微分してそれを0とおくと、
dz/dx=-2(ey0/x0)x+(1+e)y0=0
であるから、結局、
x=x0×(1+e)/(2e) ・・・(4)
となる。
(4)式を見ると
(1+e)/(2e)>1 ・・・ (5)
ならば、x0<xでzは最大値をとるため、値上げをすると売り上げが増え、今より税収は増えることとなる。e≧0であることに注意して、(5)式を書きかえれば、
1>e≧0 ・・・(6)
が、値上げをして、売り上げが増える条件である。
さて、ここで問題になるのは、価格弾力性の実際の値である。上の考察では、簡単のために、eは定数と仮定している。実際には、価格が上がるにつれ、消費量の落ち込みは、大きくなると考えるのが自然なのだが、ここでは大体の感じが分かればいいので定数としておく。
タバコのように、習慣性のあるものは、価格弾力性は小さいと考えらるが、ネットで調べるてみると0.2~0.7位までの幅がある。
e=0.2の場合(4)式は、
x=3x0
となり、タバコの価格が今の3倍、すなわち900円になれば、もっとも売り上げが増えることになる。
e=0.7の場合(4)式は、
x=1.21x0
となり、タバコ価格が今の1.21倍になったときに、売り上げが最大となる。この値だと、大体今考えられているように1本3円程度の値上げとなるのだが、e=0.7というのは、タバコの価格弾力性が結構大きい場合である。だが、タバコのように常習性のあるものは、値上げ幅が相当大きくないと、それだけの価格弾力性があるというのは考えにくいだろう。
注意すべきは、上記の議論は、どこで、売り上げが最大となるかについて述べているということである。単に今より売り上げを増やせばよいのなら、1>eが確保できれば良いので、少々増税しても、税収は今より増えることになる。
以上の考察を踏まえると、いずれにしても、3円前後という上げ幅はあまりにも小さいのではないだろうかと思う。まだまだ値上げしても売り上げの減少など起りそうにない。嫌煙家の立場からは、もっと大幅に増税することにより、世の中からタバコの煙を少しでも減らすとともに、タバコの吸い切りやシケモク拾いが一般的になることにより、街の美観が保たれるようになることを願っているのだが。
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○関連ブログ記事
・愛のある株式会社のブログ
・大西 宏のマーケティング・エッセンス
しかし、本当に値上げをすると税収が落ち込むのだろうか。少し検討してみよう。
価格値上げと消費量の減少の関係は、価格弾力性で表せる。ここで、消費量の変化率を⊿y、価格の変化率を⊿xとすれば、価格弾力性eは、次のように表せる。
e=-⊿y/⊿x
∴⊿y=-e⊿x
⊿y=(y-y0)/y0 、 ⊿x=(x-x0)/x0 (y0、x0は、y、xの現在の値)なので、これを代入して整理すると次式となる。
y=ey0(1-x/x0)+y0 ・・・ (1)
また、売り上げの増加分をzとすれば、
z=xy-x0y0 ・・・ (2)
である。
(1)式を(2)式に代入して整理すれば、次式となる。
z=-(ey0/x0)x^2+(1+e)y0x-x0y0 ・・・(3)
zは、xに関する二次関数なので、zが最大値をとるxの値は、中学校の数学でも解けるが、ここでは、zをxで微分してそれを0とおくと、
dz/dx=-2(ey0/x0)x+(1+e)y0=0
であるから、結局、
x=x0×(1+e)/(2e) ・・・(4)
となる。
(4)式を見ると
(1+e)/(2e)>1 ・・・ (5)
ならば、x0<xでzは最大値をとるため、値上げをすると売り上げが増え、今より税収は増えることとなる。e≧0であることに注意して、(5)式を書きかえれば、
1>e≧0 ・・・(6)
が、値上げをして、売り上げが増える条件である。
さて、ここで問題になるのは、価格弾力性の実際の値である。上の考察では、簡単のために、eは定数と仮定している。実際には、価格が上がるにつれ、消費量の落ち込みは、大きくなると考えるのが自然なのだが、ここでは大体の感じが分かればいいので定数としておく。
タバコのように、習慣性のあるものは、価格弾力性は小さいと考えらるが、ネットで調べるてみると0.2~0.7位までの幅がある。
e=0.2の場合(4)式は、
x=3x0
となり、タバコの価格が今の3倍、すなわち900円になれば、もっとも売り上げが増えることになる。
e=0.7の場合(4)式は、
x=1.21x0
となり、タバコ価格が今の1.21倍になったときに、売り上げが最大となる。この値だと、大体今考えられているように1本3円程度の値上げとなるのだが、e=0.7というのは、タバコの価格弾力性が結構大きい場合である。だが、タバコのように常習性のあるものは、値上げ幅が相当大きくないと、それだけの価格弾力性があるというのは考えにくいだろう。
注意すべきは、上記の議論は、どこで、売り上げが最大となるかについて述べているということである。単に今より売り上げを増やせばよいのなら、1>eが確保できれば良いので、少々増税しても、税収は今より増えることになる。
以上の考察を踏まえると、いずれにしても、3円前後という上げ幅はあまりにも小さいのではないだろうかと思う。まだまだ値上げしても売り上げの減少など起りそうにない。嫌煙家の立場からは、もっと大幅に増税することにより、世の中からタバコの煙を少しでも減らすとともに、タバコの吸い切りやシケモク拾いが一般的になることにより、街の美観が保たれるようになることを願っているのだが。
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残るのは、だんだんとニコチン依存度の高い人になってくるから、価格弾力性は低いと思うのだが。
もっとも、見込みが狂って大幅にタバコの煙が減れば、それはそれで、うれしいことなのだが。
税収を基準にしか考えないのもおかしい。医療費や清掃費用など、支出が減る事も重要でしょう。